GRist 31 大和田 良さん
こんにちは、えみっふぃーです。
気がついたら前回のGRistは年明け早々に田中長徳さんにご登場いただいてから、はや半年近く経ってしまいました…。
そんな久々のGRist第31回目は、PhotoStyleのPhotographers Galleryにて作品「縁」を掲載させていただいた、大和田 良さんの登場です!
■写真とアート
えみっふぃー(以下 え):Photo StyleのPhotographers Gallery用の作品、拝見させていただきました!
どの作品も光の感じや被写体の捉え方等、大和田さんの美意識が強く伝わってきて、とてもいいですね。
大和田良さん(以下 大):ありがとうございます。
え:いつも、作品創りはどんな機材でされているのですか?
大:ハッセルに中判のデジタルバックをつける、もしくはフィルムを使っています。
え:フィルムとデジタルの使い分けのポイントはなんでしょう?
大:被写体によって使い分けています。細かいものを描写したいときはデジタル、その場の空気感を撮りたいときはフィルム、といった具合です。
え:今回のPhotographers Galleryに提供いただいたのは、GR DIGITAL IIで撮影したものですよね。
作品創りにGRを使われることもあるんですか?
大:使ってますよ。その場の雰囲気を押さえておく、とか、ロケハン的にも使いますけど、GRはハッセルと比べたら手軽だし、GRでしか見れない・撮れないものもあるので。
ファインダーを見なくても撮れるので、新たな気づき、というか…新たな視点が生まれるんです。
え:GRはデジタルから、ですか?
大:いえ、大学時代にGR1vとGR21を使っていました。
大学の授業で、森山大道さんがいつも胸ポケットに入れてたんですよ。
大道さんが持っているカメラで撮ったら、大道さんみたいな写真が撮れるんじゃないかって(笑)、他の学生も結構持ってましたよ。
だからGR DIGITALが出てきて、そのまま自然に移行した感じです。
でも、最初は作品創り、というより普通に使っていて…。
GR SNAPSに参加したんですけど、そのときに初めてGR DIGITALで「作品を撮る」という意識で撮影し始めて、それからですね。
作品として、GRでしか撮れないものを撮る、という使い方をするようになったのは。
え:話がちょっと逸れますが、写真をはじめられたきっかけについて教えていただけますか?
大:僕は仙台出身なんですけど、東京に出たくて。でも、普通の大学じゃなくて、美大に行きたかったんですよ。
どこでも良かったんですけど、なるべくラクしたくて。
(東京)工芸大は学科試験しかなかったので受けてみることにしたら、たまたま写真科だったんです。
え:えぇ~!(笑)
大:なので、大学に入って初めて写真を撮るようになったんですけど、最初のうちは課題提出の時くらいしか写真を撮らなかったんですよ。
え:都会の生活を満喫していたんですね(笑)。
それが、どういう経緯でプロを志すことになったんですか?
大:大学3年位のときに、Mac G4とPhotoshopが出てきて、写真のデジタル処理ができることを知って、これは面白いと。
でも、デジタル処理について、なんて大学では誰も教えてくれないので、デザイン会社でバイトしながら、勉強していったんです。
大学では芸術学とか美学の授業が好きで、哲学的に"美"について考えるようになりました。
写真で表現する"美"について論文を書いたりしていたんですけど、文章を書くだけではなく、実際に撮影して表現するようになって、それから作品創りをするようになっていきました。
え:じゃあ、"プロになるぞ!"的な、野心的な感じではなかったわけですね。
大:そうですね。気がついたらなっていた、ような感じです。
作品を創ったら、誰かに評価して欲しいと思うようになって。
コンテストに作品を出してたんですけど、なかなか評価されなくて、国内とか海外とか特に関係なくいろいろなところに出していたら、写真家50人(スイス・エリゼ美術館主管の「明日の有望写真家50人」)に選出されたんです。
え:いきなり海外で評価を受けて、そこからプロとしてスタートしたわけですね。
大:別に狙っていたわけではなくて、自分の作品を評価してくれるところを探していたら、たまたま海外だった、というだけです。
え:日本では、なかなか写真がアート(芸術)として捉えられていないですよね。
大:海外でも、写真がファインアートとして認められてきたのは近代に入ってからですからね。
50人に選ばれた50人が集められて、合宿があったんですよ。
そのときに、アーティストとしての身の立て方について、たとえば社会やギャラリーとのかかわり方とかについて講義があって。
ヨーロッパではきちんと確立されていて、みんな知っていることなんですけど、少なくともアジア圏ではそんなこと大学はもちろん誰も教えてくれないので、僕を含めアジアからの受賞者は、みんな目から鱗って感じで聞いてましたね。
え:もう、素地がまったく違いますよね。
日本でも少しづつ、"写真=アート"として認知を取るための動きがあるように感じますが。
たとえば、大和田さんが審査員をされていて、前回リコーもコラボ企画で参加させていただいたPhotographers Summitも、今年1月に開催された6回目は非常に盛況だったと聞いてます。
大:そうですね。
僕は山田(敦士)さんから声をかけられて、初回からメンバーとして参加しているんですけど、最初はごく小規模でした。
その後、回を重ねるごとに若手中心にどんどん盛り上がってきています。
え:次回は、8月ですよね。
大:はい、8月に。
ファインアートがテーマで、僕はセミナーもやる予定です。
え:こういった活動がどんどん広がって、日本でも写真がアートとして広く認められるようになって欲しいですよね。
■GR DIGITALについて
え:では話を戻しまして、Photo Styleに提供いただいた作品について少しお聞かせください。
GR DIGITAL IIは、どんなセッティングで使っていますか?
大:写真にはハイライトを重視するんですが、GR DIGITALはコンパクトデジカメなのにハイライトが結構粘ってくれて、急に飛んだりしないのが気に入っているところです。
中判(カメラ)での感覚をそのまま生かせます。
横木(安良夫)さんは、「大和田くん、こんなセッティングするといいんだよ」っていろいろ教えてくれるんですけど(笑)、僕はニュートラルな状態で撮ったものを加工していくので、特に設定は変えず、そのまま撮っています。
え:RAWで撮って現像することはないんですか?
大:GRから出てくる画がナチュラル、ニュートラルなので、普段はJPEGで十分ですよ。
どうしてもこれは押さえておいたほうがいいかな、と思ったらRAWで撮ることもありますけどね。
え:今回の作品はグアムでの撮りおろしですか?
大:はい。最近忙しくてあまり家にいなかったので、家族みんなで出かけようということになって。
グアムは子供が好きな場所なので。
え:写真に出てくる子供が、娘さんですね。意気揚々と海に向かってる写真が好きです。
南国の光、影、空気感みたいなものと、子供のウキウキした気持ちがすごく伝わってきます。
大:このときは期待に溢れていたんですけど、いざ波打ち際まで行くと怖がっちゃうんですよね(笑)
え:そうか、怖いんですね。かわいいなぁ~。
■GR DIGITALユーザーへ一言
え:さて、最後に、GR DIGITALユーザーにひとこといただけますでしょうか。
大:GR DIGITALはアートの作品制作にも使えるところが一番の魅力です。
現に渡部伸次さんはGR DIGITALだけで撮影されたものをSEIBUのアートギャラリーで展示されていました。
非常に可能性のあるカメラなので、是非使い込んで欲しいです。
え:本日は、どうもありがとうございました。
では、お気に入りの1枚を見せてください。
4月の雪が降った日に、四つ木から建築中のスカイツリーを眺める
■取材を終えて
取材前にネット上でいろいろと作品を拝見していたのですが、非常に芸術性の高い、写真の可能性を感じさせる作品を創る方だなぁという印象を持っていました。
大和田さん自身は、自然体で気取ったところがなくて、やわらかい空気をまとった方なのですが、しっかりとした"美意識"の信念がお話の中から伝わってきて、"フォトグラファー"というよりも"アーティスト"でいらっしゃるんだな、と強く感じました。
ここ数ヶ月、精力的に写真展も行われており、新たな試みとして &BOOKという、写真集のようなノートのような「新たなコンセプトのノートブック」を限定1000部制作されたとのこと。
より身近に、アート作品に触れることができる形態として、非常に面白いなと思いました。
7月にはフォトエッセイ「ノーツ・オン・フォトグラフィー」の出版と、出版記念個展を開催するそうです。
そちらも、楽しみにしたいと思います!
■「ノーツ・オン・フォトグラフィ Notes on Photography」
写真を始めた頃から最近までを綴った、全15章のモノクロームフォトエッセイ
2010年7月18日発売
発行リブロアルテ
定価950円(税抜)
■出版記念個展「ノーツ・オン・フォトグラフィ」
BEAMS JAPAN(新宿)6F B GALLERY
http://www.beams.co.jp/b-gallery/
会期: 2010年7月7日~8月10日
トークショー: 7月10日(土) 16:00~
大和田良(Ryo OHWADA) プロフィール http://www.ryoohwada.com 1978年仙台市生まれ。東京工芸大学大学院芸術学研究科メディアアート専攻修了。2005年にスイス、エリゼ美術館による「明日の有望写 |
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