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GRist

GRist 8 小澤太一さん

GRistの第8回目は、プロカメラマンの小澤太一さんにお話をうかがいました。
Caplio Life フォトグラファーズギャラリー、第1回GR DIGITAL撮影会講師
と、以前からリコーカメラとのつながりが深い小澤さんですが、さらに11/22発売の「GR SNAPS」に写真を提供していただいたり、GR DIGITAL 2周年イベント「photoGRaph100」のワークショップで講師をしていただくなど、いまやGR DIGITAL関連のイベントには欠かせない存在となりつつあります。

秋晴れの空と渋谷の街を見渡す、ビル上階でのインタビューとなりました。
みにゅう は初インタビューなので緊張しまくりなんですが、小澤さんは「GRistってみなさんすごい人ばっかりで… 僕なんかでいいんでしょうか?」
と明るい調子で会話が始まりました。

GRist 8 小澤太一さん

■GRistについて1_R0013417.jpg

小澤さん(以下、小): インタビューを受けることになったんで、改めてGRistの ブログエントリを読み直したんだけど、ここにはじつにいいこと書いてありますねぇ。
とってもためになります。みんな読むべきですよ。それぞれの個性もよく出てるし。


みにゅう(以下、み):ありがとうございます。今日はよろしくお願いします。

小: こちらこそ、よろしくお願いします。

 
■GR DIGITALワークショップについて

み:「photoGRaph100」のワークショップではどんなことを話されたんですか?

小:GR DIGITALでうまく撮るためのちょっとしたコツをアドバイスしたつもりです。
スナップ写真はスタジオでの撮影と違って、時間や場所の制約があるのでいつもベストなものが撮れるとは限らないけど、よりベストな写真に近づけるためのコツや、チャンスが増えるためのヒントになればと。

例えば、いつもは1枚撮ってカメラをしまうところを、5枚は撮りましょう、とかね。
簡単なことなんですけど、意外にみんなやってないんです。
1枚で納得しないで、アングルを変えたり、露出を変えたり、白黒やセピアにして
みたり、カメラの機能を使っていろいろ試すといいですよ。
そして、まずは対象をよく見ることです。

み:なるほどー。 

小:いい写真のためには、「撮る力」と「選ぶ力」の両方が必要なんです。
撮ることはデジタルカメラの登場で簡単になったんだけれども、
「選ぶ力」は撮ることとは別の能力で、それは訓練することでしか身に付いてこない。

み:同じような写真をたくさん撮っちゃって、後で困るんですけど。

小:複数の「眼」を持って、切り口を変えてみるといいですよ。僕が仕事で撮る時も、撮影の設定を変えるということもありますが、もっと大きな視点の変化で「カメラマンの眼」のほかに「編集者の眼」や「読者の眼」を持つとかしています。
そうすることで写真の組み立て方が変わってくるんです。

対象に対して、正面から直球で撮るのか、ユーモアを効かせるのか、人物の内面/外面どちらを出したいのか、とかいろいろ考える。
僕の場合は、雑誌の仕事が多いから、それを読んでくれた読者がどういうふうに感じるかな、なんてことも考えてるんです。どこをアピールしたいのかをまずしっかりさせておけば、それを表現するための誌面構成のイメージにつながっていくんです。

撮影者以外の視点まで広げて考えるとは思いつきませんでした。わかりやすいです。そういう眼を持つにはどうしたらいいでしょうか?

小:自分が対象を前にして感動したのはどこなのか、どう感じたのか
敏感に認識することですね。
その感覚を育てるためには、

(1)いろんな人の写真を良く見ること、
(2)自分の写真を省みること、が勉強になりますよ。

人の写真を見るときは、そこに優劣を感じなくてもいいんです。
みんながみんなプロみたいな写真を撮るようになれればいいってことじゃないんで。自分らしい作品が撮れればいい。その方が面白いでしょ。人の写真を見て、自分の感じるいい写真の感覚を育てる「肥やし」になればいいんです。

でもみなさん写真がうまい方ばかりでしたね。
ワークショップでは短い間に写真を撮っていただくのですが、参加者の中に僕も感心するくらい上手な方が何人もいらっしゃいました。こちらこそ勉強になりましたよ。

いい写真を撮るために、そのほかには何かありますか?

小:自由な発想で常に新しい撮影にチャレンジする姿勢も大事です。
これまで自分がやったことのない撮影方法でも、思いついたらどんどん試してみる。アングルなどを模索しているうちに、何かによじ昇ったり、逆に地面に寝転がったりすることもありますが、いい写真のためならば何だってしますね。(笑)

経験談で言うと、僕がインドを旅していたある日、花火が夜中じゅうずっと打ち上げられてました。何かのお祭りだったらしいんだけど。
これはぜひ撮りたいと思った。
普段GR DIGITALはPモードにしているんですけど、花火はPモードでは綺麗に撮れないんです。それでどうしたらいいかと、初めてマニュアルモードにして、長時間露光とか、ホワイトパランスとかいろいろ設定を変えて組み合わせて試しましたね。楽しかったですよ。

そういうチャレンジを繰り返しているうちに、あの時はこうやってうまく行ったという
経験が蓄積されて、撮影の「引き出し」が増えるんですね。
その引き出しをたくさん持っていると、対象を前にした時にこうしてみよう、ああしてみようというアイデアがより湧いてくるんです。

 
■ワークショップ後の盛り上がり

ワ:ワークショップで印象的な出来事があったそうですね。

小:初日最初のワークショップでのことなんですけど、終了時間後にも質問などある方は話を聞きますよと言ったところ、半数以上の方が残られて、会場の横の方で1時間以上、リコーのスタッフも交えて立ち話で交流が続きました。
お昼ご飯を食べる暇もないくらい。(笑)

それぞれの方の使い方や撮影設定を教えあったり、自分のブログのURLを交換したり。言いたい放題の「オフ会」みたいになってましたね。
なんか、みんな可愛い我が子やペットを自慢しあってるみたいなんですよ。
札幌から来られたという方もいらっしゃいましたし、GR DIGITALユーザーならではの熱気が感じられました。
他のカメラのイベントにはこんなことないですね。

ワ:それは参加したかったなぁ。残念。
また、ユーザーが集えるようなイベントが企画されるといいですね。


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■普段はどんな機材を持って出かけるんですか?

小:スナップ撮影の時は、レンジファインダーのミノルタCLE(M-ROKKOR f=40mm, 1:2)、GR DIGITAL(一周年記念モデル)、Caplio GX100が多いですね。
GR DIGITALとCaplio GX100のどちらかは、どんなときでも常に携帯しています。
小さなカバンに入るので持ち歩きやすくていいですね。

み:その2台は、どのように使い分けているのですか?

小:どちらにするかはほぼ「気分」なんです。

み:設定はどのようにされていますか?

小:Caplio GX100は白黒で1:1フォーマットに設定しています。ズームはあまり使わないで24mmで撮ることが多いですね。GR DIGITALは、ほとんどノーマル設定で、オートかPモード。画像はJPEGの最大サイズ。露出補正のデフォルトは±0ですが、撮影しながら頻繁に細かく調整します。上下ボタンで簡単に調整できるので操作しやすいですね。

白黒もよく使います。カラーで撮っておいてパソコンで後から白黒に変換することも
できますが、撮る時にモニターで白黒に見えていることが大事なんです。
天候やシーンで白黒にするかどうか判断して使い分けています。

み:旅行に行かれる時はどうですか?

小:スナップ撮影の旅行に行くときの機材は少ないです。メモリーカードは入れっぱなしだし、PCもストレージも持ちません。本体以外だと充電器くらいですね。

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■人物写真のコツ

み:小澤さんの写真には、旅行先での人物を生き生きととらえたスナップ写真が多いのですが、人物写真を撮るコツについて教えていただけますか?

小:被写体とその場で一緒になって楽しむと、いい写真につながりやすいですね。
子供は、写真を撮ってあげるとすぐカメラに興味を持ってモニターを覗き込んできます。カメラそのものに興味のある子も多いので、そう感じたらカメラを渡して、撮らせちゃう。喜んで撮影してますよ。僕が撮るよりも、たくさん撮ってしまうくらいなんですから。
カメラを持ったままどこかに行っちゃうって可能性もある訳だけど、楽しいのがいい。結果的にその時はいい写真が撮れなかったとしても、楽しかったことは心に残るじゃないですか。

み:人物写真がお好きなんですね。

小:人物とかスナップとか、自分が撮る写真のジャンルを分けて考えてはいないんだけど、結果として人物が写っているのが多いですね。7~8割は人物だと思う。人物写真、好きです。

み:撮影するときは、相手に声をかけてから撮影しますか?

小:状況的に声をかけてから撮ることが難しいこともあります。必ずしも声をかけなくてもいいと思いますが、堂々としていることは大事だと思っています。
撮影してるってことが認識されていれば、なにしてる!って言われたときも謝れば済む話だし。こそこそ撮影して挙動不審なほうがトラブルが起こりやすいし、かえって格好悪いと思います。

み:国によってはカメラを人前で見せないようにした方がいい、盗難の危険がある、とガイドブックに書かれていたりしますが、そのような所ではカメラはしまわれますか?

小:常に出しっ放しですね。一瞬の撮影チャンスが目の前にあるのに、カバンからカメラを出してて撮れなかった、となったらその方が残念なんで。極端に言うと、僕の場合はいい写真が撮れたフィルム(デジタルカメラはメモリーカード等)を持って帰れればいい、というくらいの気持ちでいます。大事なのはカメラ本体ではなく、撮った写真。

実は昨年モロッコで撮影した時、見事にやられまして。GR DIGITAL一周年記念モデルが盗難に遭ってしまいました。現地で盗難届も出していますから、もしモロッコで僕のGR DIGITAL一周年記念モデルを発見された方はご連絡ください。(笑)

み:それは災難でしたね。
海外では言葉が通じないこともありますが、どうコミュニケーションをとられますか?

小:日本で普段やってることと変わらないんですが、まず会釈などをして、相手の目をしっかり見る。これだけで僕の存在もわかってもらえるし、相手が怪しいやつかどうかも、おおよそはわかります。後はその場の雰囲気に自分もとけ込むようにします。
写真を撮って、一息ついて、片言で話しかけて、写真を見せて、また撮って…
撮影したらハイさよならではなくて、一緒に過ごす時間を共有するように心がけてます。

子供は体を使って一緒に遊んでいるうちに仲良くなります。サッカーなどをしたりして走りながら撮影することが多いので、軽いGR DIGITALは便利なんです。
モニターで撮った写真を見せても喜ぶし、日本のアニメキャラクターも知られているので、絵を描いて見せたりすると盛り上がることもあります。何か行動することが大事なんですよ。

 
■お気に入りの1ショット!

み:GR DIGITALで撮ったお気に入りの1ショットを見せていただけますか?

小:タイのパンガン島での撮影。
夕方、日が沈むかどうかぎりぎりの時間帯。浜で出会った犬が遠浅の海をずんずん歩いていった。導かれるように小澤もずんずんついていきました。
 

■取材を終えて

先生と呼ばれるよりは、誰とでも写真を一緒に楽しみたい。というオープンな心をもつ気さくな方でした。生き生きとした人物写真を撮影できるのもなるほどと思えます。

また、いい写真を撮ることが一番で、そのためには努力・工夫を惜しまないという写真にかける情熱が言葉の端々から伝わってきました。

今度は、小澤さんのワークショップにぜひ参加して、写真を楽しむマインドと技術を教わりたいと思います。ありがとうございました!


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小澤太一:Taichi Kozawa

1975年生まれ。名古屋出身。
日本大学芸術学部写真学科卒業後、写真家・河野英喜氏のアシスタントを経て独立。現在、フリーランスの写真家。テレビ雑誌、ファッション雑誌、アイドル雑誌など、雑誌メインに活動のほか、DVD、カレンダーなどの撮影も多数。
また、カメラ雑誌では撮影以外に執筆もしたり、撮影会の講師や講演など、活動の範囲は多岐にわたっている。
世界中を旅しながらスナップ撮影をするのが趣味。

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