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流れてゆく日常を切り取る。なんでもないことを、美しく残すことができる。それは、どれだけ素晴らしいことだろう。

代わり映えのない毎日を過ごしている。どこに住んでいても、何をしていても、劇的で素晴らしい出来事なんてなかなかない。毎日通る道も、見慣れてしまった川も。全てが日常に溶け込んで、視界から遠ざかってしまったかのようだ。
だから、カメラを持つと良い。それも特別だと思えるようなカメラを。K-1 Mark IIをはじめとしたPENTAXのカメラは、とても鮮明で美しいシャッター音を響かせる。その音と、光学ファインダー越しに視る世界は、日常の中に埋もれてしまった光を切り取ることの楽しさを教えてくれる。
人は、意識しなければ日常の変化にも気がつくことがなかなかできない。これは、日常が記憶化して固定されてしまうからだ。撮る度に心が踊るようなカメラがあれば、ありふれた日常を自分のものとして意識することができるようになるはずだ。
私は三年半前に初めてのカメラとしてK-3を手に入れ、毎日この音を聴き続けた。そうしている内に世界が拓け、人生自体が変わっていったように思う。日常に彩りと発見を与えてくれる特別なカメラ、それが私にとってのPENTAXなのだろう。

日常の中に溶け込んでしまった光景にあらためて目を向けてみる。すると、今まで気がつくことのなかった発見や、意識することのなかったような場所でも数多くの現象を見つけることができる。

ある特定の気象条件、もしくは特別な場所でなければ写真を撮れないなんてことはなく、自分の身近な場所でも美しい光は落ちているものだ。

今まで入ったことのなかった路地に足を踏み入れてみるだけでも、好奇心と冒険心をくすぐられる。それはある意味で、小さな旅のようなものなのだろう。少年時代を思い出すと、眼に映る世界が何もかも特別で、物語の主人公になったような気持ちで家の周りを冒険していた。

写真1:横構図でも、光の階段を意識すれば奥行きを出すことができる。上の写真の場合、中心を際立たせるために上下を影で囲んでいる。囲まれた光の中にもなるべく明暗が階段になるように立ち位置を調整。構図の中に光の繰り返しを取り入れることができるかどうかが、私の作品づくりの大切な要素になっている。美しいものをただ切り取るのではなく、普通と言われるものの中にある、心を動かすような何かを切り取れたらと思っている。

そんな特別な体験すらも繰り返しているうちに当たり前となっていき、いつの間にか空を見上げることすらもしなくなっていた。そもそも、そうなってしまっていたこと自体に自分では気がついていなかったのだろう。

車に乗って旅をして、森の中を歩き回っている時間はとても大切で、大人になった自分に非日常的な多くの経験を与えてくれる。

しかし、非日常だけに何かを求めるというのは間違っていると最近になってやっと気がつくことができた。だから、一度ここに書き起こしておきたいと思った。

写真2:普遍的な光景を切り取る際にも、PENTAXのカスタムイメージのキーは作品づくりのうえで重要なポイントとなる。コントラスト調整とキー(中間光量)調整は根本が違う。コントラストを上げすぎてしまうと、どうしても濃くて強いばかりの写真になってしまう。キーとコントラストを併用して調整すれば、シャドーの中の自然な階調を保ったまま、緩急をつける事ができる。

人それぞれ身近と呼べる場所は変わってくる。
私のように、ノスタルジーに溢れた川崎市の工場地帯が身近な人間もいれば、喧騒と高層ビルに囲まれた都会を身近に感じる人もいる。また、山々に囲まれた自然溢れる場所が身近な人も。

各々の身近な場所の、自分の知らない道に一歩足を踏み入れるだけ、それが小さな旅の始まりなのだ。

私の地元のすぐそばは、15年程で巨大なマンション群になった。自分の日常が少しずつ壊れていくような錯覚に捉われたこともある。もう、以前のように静かな場所ではなくなってしまった、と。

記憶の中にある固定された光景を求めるのではなく、常に新しい光景との出会いを楽しむべきだ。そして、好奇心に流されて歩き続ければ良い。この世界は、自分達が知っているよりも遥かに美しいのだから。

写真3:ただの椅子の足、地面との触れ方が美しい。なので、より空間を意識した構図にした。この写真もキー(中間光量)が重要になっている。露出を下げて全体の光量を落とし、その後キーを上げて中間の光量を持ち上げている。こうすることで極力白飛びを回避することができる。

写真4:どんな場所でも、光を探して理解することによって作品が生まれる。今回の旅の記憶は全てカスタムイメージの銀残しを使用。銀残しは深い独特の色味と、より繊細な光を浮かび上がらせることができる。

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