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GRist

GRist 20 塩澤一洋さん

こんにちは、ヒロです。

今回は、このGR BLOGにいつもトラックバックもしてくれているshiologyの、shioさんこと塩澤一洋さんの登場です。法学部教授でありながら、Mac、写真などの分野でも執筆や撮影などのお仕事もこなす、まさにマルチな才能の持ち主です。いろいろなジャンルに精通しているからこその“視点”や“姿勢”が伺えたら、と期待して取材をさせていただきましたが、期待通り、終始明るく楽しく、ときに熱く、予定時間を大幅にオーバーして語っていだきました!

GRist 20 塩澤一洋さん

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<写真は理論を徹底的に学んだ>

ヒロ(以降 ヒ):写真と関わられた経緯を教えてください

塩澤 一洋さん(以降 shio):
3才からバイオリン、5才からピアノ、小学3年からリコーダー、5年からクラシックギター、中高でフルートと音楽を楽しんできたんです。で、大学3年の秋に突然、表現の手段としてビジュアルもやってみたい!と思い立ちました。Macを愛用していたことも大きな要因ですね。それから約一年は写真雑誌を読みあさり、美術館や図書館で写真集をたくさん見て、徹底的に理論を学びました。そして、翌年10月、「これで写真が撮れる」との確信を得て、初めてカメラを購入したんです。

ヒ:えーっ!それまで写真を撮らないでいたわけですか?徹底的に学習してから実践に入るというスタイルは、他の趣味でも同じなんですか?ヨット、万年筆、カリグラフィなど、ほんとにたくさんのジャンルの趣味をお持ちですよね、しかもどれも半端じゃないこだわりのようですが(笑)

shio:いえいえ、たとえばヨットはいきなり実践から入って、体で覚えましたよ。カメラはたまたまそういうアプローチになったというだけで……。でも、そのお陰で、最初の一枚目から自分のイメージ通りのものが撮れました。

   ~ここで万年筆談義で脱線、約30分(^^ゞ~
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ヒ:さて、話を戻させていただきますが(笑)、その後の写真ライフは、どんな風に突き進んでいくのでしょうか?

shio:最初はゼミの同期生の結婚式の写真を頼まれて、それをすごく喜ばれて、「写真を仕事にすべきだよ!」と言われたのです。他人に喜んでもらうのが大好きなので、写真て素晴らしいな、と実感したのですね。楽器も人に楽しんでいただきたくてやっているところがあって……。だから被写体も圧倒的に“人”が多い。人を撮るのが好きなんです。相手の喜びが僕の喜び、それが僕の仕事の全てですね。

ヒ:そんなに喜んでもらえる写真を撮れるのってうらやましいですね。shioさんはご自身のブログでも、たくさん人の写真をUPしていますが、みんな笑顔が輝いていて表情が生き生きしています。人を撮るときのコツとかあるんですか?

shio:写真ってコミュニケーションだと思います。撮る人と撮られる人の関係性が写真に表われると。だから撮ろうとする人との信頼関係が築けていると、良い写真が撮れますよ。例えば、結婚式の写真を頼まれたら、必ず事前に新郎新婦とよく打ち合せをします。一番大切なのは予めコミュニケーションすることなんですよ。だから打ち合わせの目的は良い人間関係を作ること。そうすれば写真の中の笑顔が全く違ったものになりますよ。

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ヒ:なるほどぉ、shioさんの写真に共通しているキラキラした感じって、そういうところから出ているような気がしますね。

shio:そう、私は日常のキラキラを写し取りたいと思っています。
リコーさんはCandid Photo文化と言われているけれども、スナップ写真の魅力とは、生活の中でキラキラ輝いているものを見つけて写し取ることなんだと思います。Candid Photoを平易な表現でいえば、“日常キラキラ写真”といってもいいのではないかと思いますよ。

ヒ:そもそも何故GR DIGITALを気に入っていただけたのでしょう?

shio:フィルムのGR1が大好きでしたから、そのDIGITAL版をずっと待ち望んでいたんです。元来、単焦点の明るいレンズが好きなので、ライカもヘキサーもNIKONも、50mmF1.4とか35mmF1.4とか28mmF1.8とかを常用していました。だから、ジャケットの内ポケットに入って常に持って歩ける単焦点で高画質のカメラが欲しかったのです。それから単焦点が好きな理由がもうひとつ。私が写真を撮る場合には撮る前から頭の中に絵ができているんですよ。撮影というのは頭の中にある絵を写真に定着させる行為だと思うんです。その頭の中に絵を描くときに大前提として画角がある。28mmだったらこう、50mmだったらこうと絵を描く。それがズームレンズだと画角の選択肢が無限。でも創作って、何か制約があった方がいいものが生み出せるんじゃないかな?キャンバスだってそうですよね。

そうそう、話は少しそれますが結婚式でも28mm、35mmの広角レンズはよく使いますよ。100mmで背景を少なくしてその花嫁の笑顔だけが際立った写真ももちろんいいけども、沢山の人達の暖かさに囲まれている笑顔の花嫁はそこでしか撮れない。だから背景をある程度写し込める広角レンズが必要なんです。


<驚異のフリッカー使い>

ヒ:撮った写真はどうしていますか?

shio:現在Flickrには7万枚以上の写真を保存してあります。公開しているのは4万5千枚程度ですけどね。Flickrに登録しておけば、ネットに繋がる環境ならどこにいても見ることができます。写真はもちろんHDDにもバックアップしてありますよ。

ヒ:それにしてもすごい量ですねー!

shio:GR DIGITAL 2007ではもう22,609枚。GR DIGITAL 2005で21,246枚。なのでGRだけで43,000枚くらい撮ったことになりますね。

ヒ:耐久テストみたいです(笑)

注:shioさんはGR DIGITALをGR DIGITAL2005、GR DIGITALⅡをGR DIGITAL2007と命名して使い分けてくれています


<shio流セッティング徹底紹介>

ヒ:shioさんのGRセッティングを教えてください。

shio:
・撮影モードはPモード
・常にISO80、露出は-0.7EV(空の青さを撮りたいのでオーバー気味にならないようにしている)実は露出補正はあまり使わないんです。液晶モニターを装備したデジタルカメラなのですからモニターに自分の欲しい色、露出が表示された状態で撮影すればいいわけです。ですからFnボタンにAF/MFを登録しておいてFnボタンでAFロックをしてから、カメラを動かして露出を決めて撮影することが多いですね。
・室内で人物を撮るときはISO400にすることが多い。料理を撮るときはISO80で露出を+0か+0.3EVにしている。料理のお皿が白いとアンダーになってしまうし、オーバー目に撮った方がおいしそうに見えるので。
・測光は中央重点測光(露出を決めるためにカメラを動かした時の露出の変化が穏やかだから)
・ズームボタン: 露出補正
 ADJ1    : ISO
 ADJ2    : 画像設定
 ADJ3    : 画質 
 ADJ4    : ホワイトバランス
 Fn:     : AF/MF
・画像設定はいつも「普通」で撮影している
・AF補助光は常にOFF(余計な光が出て欲しくないからとMFを多用するから必要性を感じない)
・フラッシュは基本的に使わない
・今のJPEGの画質で十分と感じているし、じっくり加工している時間も無いのでRAWは使わない


<shio流使いこなしテク>

ヒ:さて、それではshio流GR使いこなし方をご紹介ください。これまでもブログで紹介した使い方を真似している人がたくさんいるようですが……。

shio:そうですね、じゃあ代表的なところをいくつか(笑)

まずストラップはストロボ側とグリップ側の下の穴につなげます。こうすると、横、縦どちらでもストラップをピンッとはってカメラの安定性を高めるときに、ストラップがモニターを見る視界の邪魔にならないんですね。ストラップをピンッとはるのはカメラのブレを防げるからです。

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ヒ:おー、なるほど。

shio:それにたすき掛けにして背中にまわしておくときも安定感が増すでしょ

ヒ:あ、shioさん、ストラップ裏表逆です・・・

shio:ふふふ、これでいいの、逆にしておいた方が前にずらしやすいでしょ。

ヒ:なるほどねぇ!細かく工夫しているんですねー。今度やってみます!

shio:じゃぁ、次。これは私のブログでも紹介している3つの撮影スタイルね。

 〔ボトム・アーム・スタイル〕

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これは右手人差し指でレリーズボタンを押す一般的なスタイルですね。カメラを構えた腕が、カメラの底側に伸びるからそう名前を付けています。


 〔ライト・アーム・スタイル〕

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これが僕が一番よく使う持ち方です。カメラの右側に腕が伸びているので「ライト・アーム・スタイル」です。
親指をレリーズボタンの位置に、人差し指と中指でカメラの底を握り、薬指でカメラを支えます。
このスタイルは色々な方向を撮れるのがメリット。腕とカメラが真っ直ぐになるのでローアングルも撮りやすいし、その際にカメラの垂直も出しやすい。カメラの垂直を出すというのはパースが出ないようにカメラを被写体に対して正対させることです。レリーズボタンは右手親指の腹ではなく第一関節あたりで押します。これでブレをかなり抑えられます。
一眼レフの使い方を人に教えるときには左手でカメラをホールドして右手はグリップに添えるだけと教えるけれども、GR DIGITALの場合は体との一体感は右手側にあり、色々なアングルで撮れる機動性もメリットなので、いかに片手だけでブラさないように撮るかが重要だと思うのです。

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 〔バック・アーム・スタイル〕

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腕が、カメラの背中側(後ろ側)に伸びるので「バック・アーム・スタイル」です。
右手人差し指と中指でグリップを握り込み、薬指はカメラの底部を支え、親指を後ろから上面に回します。この場合レリーズボタンは親指の腹で押します。左手はカメラを下から支えるようにします。
このスタイルのメリットは被写体に対して垂直を出しやすいことです。ボトム・アーム・スタイルだと低い位置で構えた時に必ずカメラが前傾してしまうし、手首に無理がかかる。このスタイルであれば無理がかからずに自然と垂直を出しやすくなるのです。
GR DIGITALでこのように持つようになったのはGX100でVF-1を上から覗きながら撮影してきたことが影響していると思います。GX100、200の場合は左手の親指の位置にちょうどFnボタンがくるのも便利です。

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いやぁこんな解説をまじめに聞いてくれる人がいてうれしいなぁ(笑) 

ヒ:いえいえ、ホールドは一番重要ですからね

shio:要は、片手でいかにブレさせずに、水平、垂直をとって撮影するか?の工夫なんですよ。

ヒ:マニュアルフォーカスでお子さんをよく撮ると聞いたことがありますが・・・・・

shio:子供を撮るときにはMF(マニュアルフォーカス)で1m位に合わせておいて、動き回る子供をシャッターチャンスを優先して撮影します。
人を撮る時の基本は相手の目線の高さで撮影することです。なので子供を撮影する時はしゃがむ必要があります。でもライト・アーム・スタイルであればローアングルが撮影しやすいので子供と一緒に歩きながら子供の目線で撮影することもできます。ですからモニターを見ないで撮影することも多いですね。これは片手でも扱えるコンパクトカメラのメリットだと思います。それからMFの時にフォーカス距離が表示されることも重要ですね。


<GRの目標はGRだ!>

ヒ:GR DIGITALへの要望、期待を聞かせてください

shio:目指すのは銀塩GR1でしょう。一眼レフより良い写真が小さいBODYで撮れる、というコンセプトを追及していって欲しいですね

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<最高の1枚!>

ヒ:最後のお決まりなんですが、お気に入りの1枚を紹介してください

shio:これはGR DIGITAL2005で撮った、パリのオペラ座です。

ここに入った瞬間に、床に這いつくばって撮影しました。妻はあきれて他人の振りしてましたけどね(笑)


■取材を終えて

塩澤さんの大学教授としての一行プロフィールにはこう書かれています
「難しいことをやさしくするのが学者の役目、それを面白くするのが教師の役目」
今回の取材でも、まさにそのとおりにわかりやすく丁寧に撮影に対する姿勢やshio流スタイルを解説していただきました。shioさんとお話をしていると、写真を撮りたくなってくるのが不思議です。こういう素晴らしい方々に支えられている幸せを、改めて実感できた、最高に楽しい取材でした。


塩澤一洋(しおざわかずひろ)プロフィール

1969年東京生まれ。成蹊大学法学部教授・政策研究大学院客員教授。
2000年より成蹊大学専任講師。助教授、准教授を経て現職。
2005年8月~2007年7月、スタンフォード大学
ロースクール客員研究員。
2003年~2007年、東京大学先端科学技術研究センター特任助教授
1990年代から写真家としても活躍。米アップル社のCEOス
ティーブ・ジョブズ氏を撮影した写真は、MacPeople誌や韓国
MacMadang誌その他の表紙、記事などに多数掲載。

GR Digital発売直後から、ブログ「shiology」にGR Digital/GR
Digital II/GX100/GX200で撮影した写真を公開。
http://shiology.com/

月刊MacPeopleに「shioの三つ星ガイド」を連載中。

ASCII.jpで先日まで、「Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代
の羅針盤」を再連載していました。
http://ascii.jp/elem/000/000/
136/136046/

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