フォトスポット Vol.13
昭和の下町の面影が色濃く残る 港区南市岡
こんにちは。スクエア大阪の伊藤です。おかげさまで6月の掲載分で、好評のうちに一区切りを迎えた「大阪港湾エリア」のフォトスポット巡り。実はもう1回だけ続く予定でした。ところがコロナウイルスの第5波の影響で、外出を控えざるを得なくなってしまいました。今月に入り、とりあえずは一旦コロナウイルスも沈静化の様相を見せていますので、久しぶりに撮り歩きに出かけることに。今回は、ご紹介し損ねた港区南市岡エリアを中心にご紹介します。
※よろしければ関連記事のバックナンバーもご覧いただければ、より楽しめるかと存じます。
1回目:2020年9月18日「フォトスポット Vol.8 大正駅~我が故郷港区池島」
2回目:2020年10月16日「フォトスポット Vol.9大阪港周辺」
3回目:2021年2月26日「フォトスポット Vol.10安治川左岸を上流へ ~前編~」
4回目:2021年3月19日「フォトスポット Vol.11安治川左岸を上流へ ~中編~」
5回目:2021年6月18日「フォトスポット Vol.12安治川左岸を上流へ ~後編~」
【大阪臨港線廃線跡を辿る】
さて、次の写真、見覚えのある方もあるでしょう。
1回目でご紹介した、廃線となった貨物線「大阪臨港線」の廃線跡です。これまでの「大阪港湾エリア撮り歩き」シリーズでは、大阪港から安治川沿いの終着点に向かってたどっていきました。では、始発点の方はどうなっているのでしょうか。今一度、廃線跡をたどってみることにしました。
上の写真の場所から数百メートルは、建物が建つなどして廃線跡地が完全になくなっていますが、しばらくすると特徴的な細長い土地が現れます。廃線跡に沿った道はほとんどなく、廃線跡そのものもほぼ立ち入りができないため、踏切跡を探しながらの廃線巡りになります。
先に進むにつれ、徐々に廃線跡の位置が高くなってきました。やがて大阪環状線と合流します。
そして大阪環状線と合流した大阪臨港線は、尻無川を渡って大正駅へとつながっていました。
【尻無川右岸:瓦の町】
ここで一旦線路から離れて、尻無川沿いの道路を下流に向かって歩いていくと、道路と川の狭いスペースに、やたらと古びた建物が目に付き始めます。
この一帯は、古くから尻無川の水運を利用した瓦問屋が現在でも多く集まっており、これらの建物は、船から瓦を陸揚げするための設備や倉庫になっているのです。トラックを使った陸運が中心となった今でも、まだ現役で使っている業者さんもあるようです(作業中のところに出くわしましたが、お仕事の邪魔になってはいけないのでその場面の写真はなしです)。
【昭和の面影が色濃く残る 港区南市岡一帯】
前回までご紹介した大阪港湾エリアは港湾施設や倉庫・工場が多く、少し寂しい雰囲気が目立ちましたが、大阪臨港線とJR大阪環状線が合流する南市岡のエリアは、人々の生活の匂いがする古き良き昭和の下町です。右下は今時珍しい対面販売のタバコ屋さん。店主の方に話を伺うと、昭和30年代から営業を続けているとのこと。シャッターチャンスを狙ってカメラを構えていた数分の間にも、立て続けにお客さんがタバコを買いに来ていました。
細い路地を散策していると、これまた昭和の香りが漂う古い商店街がありました。そして、良い雰囲気の喫茶店を発見!営業しているようでしたので、休憩を兼ねてお邪魔してみました。
マスターは2代目で、昭和44年からこの場所で変わらず営業し続けているとのこと。この南市岡一帯に下町情緒が色濃く残っている理由を聞いてみると、なんと第1回ほかで触れた「盛り土(土地のかさ上げ。“地上げ”とも)」が関係しているとのこと。戦後度重なる台風の高潮被害を防ぐため、大阪港湾エリアの多くが「地上げ」をして土地のかさ上げを行いましたが、これをすると土地の評価額が上がるため、その分固定資産税を追加で納める必要がありました。現金での納入が難しかった地主の多くが一部物納を余儀なくされたため、地上げした地域は大阪市が所有する土地が多いとのこと(言われてみれば、港区に住む私の親戚の家の土地も市から借りている)。南市岡一帯に古くから住む人々は土地の物納を拒み、地上げに反対する小規模の地主が多かったため、一帯は地上げが行われず現在に至ったとのこと。
この不自然な段差と坂道にも歴史があり、現在とつながっているのだと思うと、感慨深いものがあります。こういった裏話を知ると、撮り歩きがより一層楽しくなりますね。
最後に、飛び込みにもかかわらず撮影と掲載に快く応じてくださった喫茶店「BB」のマスター。GR IIIを取り出すと、一目見てRICOH GRと機種名を当てるほどカメラ好きの方でした(お持ちなのは残念ながら他社メーカー一眼でしたが・・・)。貴重なお話、本当にありがとうございました。
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