フォトスポット Vol.10
安治川左岸を上流へ ~前編~
こんにちは。スクエア大阪の伊藤です。この原稿を書いている2/14(日)現在も新型コロナウイルス流行による緊急事態宣言が継続中です。先月まで外出を促す内容を控えてきましたが、まだまだ油断は厳禁できないものの感染者数は減少傾向のようですし、春めくころには緊急事態が解除され、気兼ねなく撮影に出掛けられることを期待しつつ、久しぶりにフォトスポットのご紹介をしたいと思います。
【大阪東港線の痕跡を探して】
Vol.8・Vol.9と、大阪臨港線(廃線となった大阪環状線の貨物支線)の痕跡をたどり、安治川沿いにも貨物線が通っていたことをご紹介しました。阪神高速天保山JCTの真下で痕跡は一度ぶっつりと切れていますが、国道173号線を挟んで北側にもかつて安治川の左岸沿いに支線が伸びており、終点は大阪東港駅でした。1986年(昭和61年)に廃止され、跡地は阪神高速道路の用地になったりしてどんどんと面影はなくなっていきましたが、わずかにまだ痕跡が残っています。
【弁天ふ頭跡】
瀬戸大橋をはじめとした本四連絡橋が開通する前、四国へのルートはほぼフェリーに限られており、大阪からも四国各地へ連絡するフェリーがいくつも発着していました。弁天ふ頭は、大阪~小豆島・高松便(加藤汽船・関西汽船)、大阪~別府便(関西汽船/現在は大阪南港ATC発)の発着場だったところ。私も母の実家がある高松へ帰省する際に何度も利用しました。しかし弁天ふ頭は市内中心部からの利便性で優位だったものの駐車スペースが狭く、利用車両の大型化と増加、それに伴うフェリーの大型化に対応できなくなり、大阪南港フェリーターミナルに代わっていきます。やがて本四連絡橋が次々に開通。1995年(平成7年)に弁天ふ頭は役割を終えることとなります。
閉鎖後もまだしばらく加藤汽船のビルが残っていましたが、廃墟寸前となり危険なため2017年に解体撤去されたと聞いていました。しかし、行ってみたらビルの一部がまだ残っていました。
【安治川水門】
Vol.8で紹介した大阪市内に3つあるアーチ型水門の1つ。尻無川水門と同じく市中央部への高潮や津波被害を防ぐ役割があり、大型船舶の航行を妨げないようにアーチ型が採用されました。大阪を直撃し車が飛ばされる映像で記憶に新しい2019年(平成30年)台風21号の際は、3mを超える高潮を受け止めて大阪市中央部を見事に守り切りました。しかしこの水門も近い将来に廃止が決定しています。
【安治川隧道】
安治川の川底に建設されたのは、なんと1944年(昭和19年)。77年前のことになります。河底トンネルとしても沈埋工法(コンクリートの箱を水中に沈める工法。大阪だと咲洲トンネル、東京だと首都高湾岸線のトンネルがこの工法)のトンネルとしても日本初という貴重な建造物です。歩行者通行可能な水中トンネルは、ここのほかには有名な関門海峡トンネルなど全国でも数か所。歩行者用河底トンネルは日本でもここだけです。
着工当時(1935年(昭和10年))、ここには渡し舟がありました。今でも交差点名にその名残があります。
しかし、街の発展とともに人・自転車の交通量が増え、渡し舟に代わり設けられたのがこの安治川隧道。前述した日本初の沈埋工法もですが、画期的だったのは自動車用トンネル(2車線道)も併設されていたことです。しかもトンネルへのアプローチはなんとエレベーター。今でも自動車用エレベーターの扉やボタンなどが残されています。
戦後の復興期を支えた安治川隧道の自動車道ですが、すぐ下流に安治川大橋(現国道43号線)が開通して交通量が減少。トンネルかつ入口がエレベーターという構造上、排気ガスも問題となり、1977年(昭和52年)に一旦閉鎖。エレベーターからスロープ方式への切り替え計画もありましたが、結局そのまま廃止となってしまいました。
しかし、地元住民の重要な生活道路としては今でも大活躍の「安治川隧道」。エレベーターは夜間の24時~6時以外は利用でき、階段なら24時間通行可です。
さて、今回はここまで。次の機会には安治川とともに歴史もさらに遡っていきたいと思います。お楽しみに。
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