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開発の現場から / Challengers

動体性能
~フラッグシップに求められる条件~

人物紹介

安藤 隆

メカ設計担当

安藤 隆

真田 慎一郎

メカ設計担当

真田 慎一郎

関根 寛之

AF担当

関根 寛之

“Kシリーズ史上最高の動作レスポンスを実現。確かな違いを感じてもらえると思います。”

APS-Cフラッグシップモデルに欠かせないもの

安藤:「APS-Cフラッグシップモデル」を名乗るうえで欠かせない要素に、“動体性能”があります。被写体を的確に追従するオートフォーカス性能や、瞬間をものにするための速写性をしっかりと向上させながらも、数値では表れないような快適な撮影体験を得られるようなカメラを目指しました。

関根:まずは動体追従における、オートフォーカスの挙動についてですが、Z軸と呼ばれる奥行き方向への追従性と、X-Y軸と呼ばれる、平面方向の動きに分けられます。
Z軸の追従は、被写体の動きを予測して、フォーカスレンズを先に動かしておく必要があります。K-3 Mark IIIでは、予測の元情報となる測距履歴を、従来より多く残すようにし、また近似計算のアルゴリズムも改良したことで、予測の精度が向上しました。

安藤 隆
関根 寛之

高速連写に対応した動体追従の実現

真田:K-3 Mark IIIはこれまでのKシリーズの中でも最速となる、秒間約12コマの高速連写を可能としました。高速連写を行うには、より短い時間でミラーの駆動と制動を行う必要が出てきます。これは一眼レフカメラの機構上、オートフォーカスの測距ができるのはミラーが下りている状態の僅かな時間に限られるためです。
この時間を少しでも多く稼いであげることが、高速連写時の動体追従における、メカ設計者の腕の見せどころ、ということになります。

安藤:マウント部を覗くとまず目に入るのは、ハーフミラー構造のメインミラーです。AFモジュールに光を導くのは、そのメインミラーの背後にある「サブミラー」と呼ばれるものです。このサブミラーのミラーバウンドを効率よく抑えるために、新設計のスロープ構造を採用しました。さらに、メインミラーを大幅に軽量化することでもミラー全体のバウンド対策をしています。
これらが大きく寄与し、オートフォーカスを開始するための制動待ちの時間を大幅に短縮し、ミラーダウン後の即測距を可能にしています。

真田:これまでのKシリーズのカメラでは、AF.C撮影時にはAF.Sでの最高速に対して連写のコマ速が落ち込んでしまう点に不満の声をいただいていたのも事実です。
K-3 Mark IIIでは、AF.Sでの秒間約12コマのコマ速に対して、AF.Cでも約11コマを確保することができています。

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連写速度アップと動体追従性の向上の関係性

関根:連写のコマ速が上がることは、オートフォーカスの追従性向上にもつながります。連写がゆっくりしているほうが、ひとコマずつしっかりと測距を行う時間を確保できるようにも捉えられますが、コマ速が遅いとコマ間の被写体の移動量が大きくなり、今度は動体予測の精度が低くなる可能性があります。
連写のコマ速が早くなることによって、より密に被写体の動きを測距し、予測精度を高めることができるのです。
また、これまでは動体撮影が難しかったようなレンズでも、アルゴリズムを見直すことで大幅にフォーカス精度を高めています。

AFモジュールとAEセンサーの刷新

関根:K-3 Mark IIIではAFモジュールとしてSAFOX 13を搭載し、測距点が101点に増えたとともに、ファインダー上でのカバーエリアも大きく拡がりました。
これにより、X-Y軸の動きをする被写体を撮影した際に、被写体を見失うことなく捕まえることができるようになりました。測距点が増えると演算をするうえでの負荷も高まりますが、PRIME Vの処理能力の恩恵で、測距点ごとの演算スピードを向上させています。

また、AEセンサーがこれまでの約8.6万画素のRGBセンサーに対し、約30.7万画素のRGBIrセンサーとなりました。センサー解像度の向上によって、AEセンサー上で顔や瞳を認識したうえで、測距点を選択させています。

さらに、ディープラーニングを用いることができる領域が拡大し、被写体の色情報だけでなく形状などの情報も認識することが可能となり、複数の測距点を連携させた追従性も大きく向上しています。

AFモジュール SAFOX 13
AFモジュール SAFOX 13
約30.7万画素 RGBIrセンサー
約30.7万画素 RGBIrセンサー

ミラーボックス内の光学系、制御・駆動系の大幅な見直し

安藤:測距エリアを拡大するために大型のAFモジュールを搭載していますが、拡大した測距エリアをカバーする光束を得るためにはサブミラーも大型化する必要があり、それに伴い、メインミラーやフォーカシングスクリーンの配置までも見直しをおこなっています。

真田:つまり、一眼レフカメラの機構を設計するうえで根幹となる、ミラーボックス内の光路を、全面的に新設計しています。それにより、このコンパクトなボディに快適な撮影性能を凝縮させることができました。ミラーボックス内の光路シミュレーションには、交換レンズ設計者の知見も借り、これらの課題を解決しています。

安藤:高速連写を実現するために、駆動系や制御系の大幅な見直しも行っています。

真田;原理試作を行った時点で、パワーのあるモーターで動かせば秒間12コマの実現が可能なことは分かりました。しかし、ただ速く動かすだけではなく、ミラーバウンドを最適化するにはモーターの応答性が鍵であると考えました。

安藤:そこで、応答性の高いコアレスモーターを新たに採用しました。さらに、コアレスモーターの応答性を活かすために、それぞれの駆動系が今どのような位置、状態にあるのかをパルス信号で検知することが可能なフォトインタラプターをミラーやシャッター駆動系に採用しています。
これまでは、制御の基点を細分化することが難しい構造でした。K-3 Mark IIIでは、制御の基点を約1000ポイントに細分化し、常にモーターの状況を監視できる構造としました。
それにより、モーターの回転数とミラーバウンドの関係性を把握し、それらがマッチした最適なポイントを見つけて緻密に制御することができました。

真田 慎一郎
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最後に

安藤:設計だけでなく、チューニングや評価にはとてつもなく苦労をしましたが、APS-Cフラッグシップを名乗るにふさわしい、Kシリーズ史上最高の動作レスポンスを実現することができたと思います。
K-3 Mark IIIをいろんなシチュエーションに連れ出していただきたいです。確かな違いを感じてもらえると思います。

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