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カメラは地球を巡る
2月の太陽による幻日。ハロー現象だ
vol.10 極北光 佐藤秀明
2月、レゾリュート村の正午
3月初旬。気温氷点下60度

北極と言えば、一年中氷に閉ざされている風景を思い浮かべる。しかし、北極にも季節が存在し、夏には花が咲き、太陽が暖かく大地を照らし出す。

夜の季節、昼の季節

季節と言っても、太陽が顔を出している昼間の季節と、太陽が姿を見せない夜の季節と言った方がいい。

夜から昼、昼から夜へ移って行く時の微妙な季節、春、秋と呼べなくもない時期も存在するが、ほとんど気がつかないうちに季節は進んで行く。

そもそも北極圏とは、地球の北緯66度30分を結ぶラインから上部を指して言うのだが、そのラインがどうしてその位置に設定されたのかを知っている人は意外と少ない。

実はそんなに難しい話しではなくて、夏至の日に太陽が一日中沈まない場所と、一瞬でも夜に姿を消す場所との境界線なのである。だから、緯度が高くなればなるほど、太陽はますます高くなるのだ。

5月の白い太陽が照らす氷山とイヌイット
7月、夏になると海を埋め尽くした氷も後退していく
7月から8月にかけ、ポピーが一斉に花開く

太陽がやっと顔を見せるころ

しかし、太陽の光が最も美しいのは2月から3月にかけての、太陽が姿を見せはじめて間もないころである。このころの光が氷の世界に及ぼす色の美しさは、見たことのある人でないとわからないかも知れない。

いよいよ太陽が明日にでも姿を見せるという、不思議な紫色に染まった氷原の美しさに触れると、再び北極に戻って来ると言われてるくらい美しい。

それから2か月もすると、太陽が一度も沈まない、昼間の世界へと移って行く。顔をみせたばかりの太陽はオレンジ色の不思議な光を放って目を楽しませてくれるが、ぐるぐる頭上を廻る4月の太陽は白っぽくて眩しいだけだ。それでも、気温はまだまだ低い。

さ と う  ひ で あ き

1943年、新潟県生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、フリーのカメラマンとなる。

60年代はニューヨークに暮らし、その後、70年代、80年代にかけてはサーフィンを被写体の中心にすえる。

その時に培った自然観をベースに、北極、アラスカ、アフリカ、チベット、南洋諸島など、世界中の辺境を旅し、自然と人間、文化を独特の視野で撮り続け、数多くの作品を発表している。

最近は日本にも目を向け、日本人の心の中に淀んでいる思いのようなものを表現することに精力を注いでいる。主著は「北極 Hokkyoku」「地球極限の町」「口笛と辺境」など多数。「彼は海へ向かう」「西蔵回廊」「伝説のハワイ」など共著も数多い。

日本写真家協会会員

『カメラは地球を巡る』
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