探鳥ツアーでのエピソード1 (オレンジマイコドリ編)
お客様それぞれに見たい鳥が存在します。ケツァールは勿論ですが、マイコドリも人気があります。マイコドリ(=舞妓鳥)は文字通り踊る鳥です。繁殖期になると、レック(求愛場)に複数のオスが集まり、メスの前でダンスを披露するわけです。種により踊り方も異なり、非常にユニークな鳥です。
コスタリカにはオレンジマイコドリという色鮮やかで、可愛らしい鳥がいます。ツアー中に見逃してはならない一羽です。しかし、求愛場に行けば複数のオスがいるわけですから、見つけるのに苦労はしません。繁殖期には観察できて当たり前なわけです。

オレンジマイコドリ
ある団体を案内している時でした。いつものように最も確実な求愛場に行きました。何故か「バチッ、バチッ」と羽をならす音が聞こえて来ません。小首をかしげながらも林内へ入ります。そこには一羽のオスもいませんでした。「そんなはずはない!」見せて当たり前の鳥、お客様が大層見たい鳥なんですがいないのです。こんな時には胃がキリキリと痛くなります。繁殖期なので言い訳もできません。
その時は、とりあえず散策路に戻りました。勿論、お客様はガッカリです。どうしたら良いか考えながらも、途方にくれる私。有り得ないシナリオに納得が行かず、私だけもう一度求愛場へ入って行きました。やはり辺りは静寂に包まれていました。
「どうしよう・・・・」。意気消沈していると、静かに枝にとまっているオスが視界に入りました!
この個体を見逃したら困ると思い、直ぐにお客様を呼びに行きました。こうして皆さんがジックリ観察できたのですが、今でも忘れられない思い出の一つです。