佐々木 啓太 Keita Sasaki

佐々木 啓太
Profile
1969年兵庫県生まれ。写真専門学校を卒業後、貸スタジオ勤務、写真家のアシスタント生活を経て独立。自らに『街角写真家』という肩書きをつけ、最近は写真ではなく、自分の心と向き合う写心を提唱している。それを具体的な形にした Keita's Book というミニ写真集のようなプライベートブックをほぼ毎月作りSNSを通じて発売中。

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HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED
Limited DC WR

K-1 Mark II+HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR
絞り:F2.4 露出補正:-1.7EV WB:日陰 カスタムイメージ:ポップチューン カメラ内RAW現像
せっかくの東京タワーを木で隠すなんて……。こんなアングル探しも超広角レンズを使う楽しみで、かなりピンポイント。

Prologue

初めて手にした HD PENTAX-D FA 21mmF2.4 Limited(以下 この子)は、少し小さく感じた。FA31mm Limitedと比較するとレンズがふた回りほど太くなっていることがわかったのに、なぜそんな錯覚に至ったのだろうか?これはレンズ全体のエッジが少し優しくなっているからだと思う。そして、その手に馴染む感じは好きなタイプだった。
絞りリングはなく、次の20年へ。そんな思いが込められたこの子はどんな個性を持っているのだろう?それを確かめるために最初に向かったのは東京タワーというとても無難な選択だった。曇天というレンズ評価には少し微妙な条件ではあったが、この子のピントは絞り開放からとても繊細で少しシビアさがあり、ボケ味は自然な感じで形が残り、周辺が程よく落ちる。そんな個性を知ることができた。

K-1 Mark II+HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR
絞り:F2.4 露出補正:-0.7EV WB:日陰 カスタムイメージ:風景 カメラ内RAW現像
画角の広さに翻弄されて近づいた。おかげで少し形を残しながらやさしさを感じる自然なボケ味を確認できた。

次に訪れた浦賀でも初めのうちは絞りは開放のF2.4に固定していた。これは決めることを減らすと気づきに集中しやすいからだ。もちろん露出補正は適宜使うがカスタムイメージも強さがでやすいリバーサルフィルムにした。

K-1 Mark II+HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR
絞り:F2.4 露出補正:+0.3EV WB:太陽光 カスタムイメージ:リバーサルフィルム
気ままに気になる風景にレンズを向けた。

何を撮ろうか?何年続けていても撮影のたびに感じるこの問いに明確な答えはない。
駅を降りて港で撮影を始めると、この子を完全に把握していない不安となれない街への戸惑いが同時に襲いかかってきた。
その答えを探すためにできることは、歩いてシャッターを切り続けることだけだ。

K-1 Mark II+HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR
絞り:F4.5(連動外の自動補正) 露出補正:+0.3EV WB:太陽光 カスタムイメージ:リバーサルフィルム
薄い雲がかかっているという条件を差し引いても太陽の輝きが優しく感じられたのはこの子の個性でもある。

K-1 Mark II+HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR
絞り:F2.4 露出補正:-0.3EV WB:太陽光 カスタムイメージ:リバーサルフィルム
最短撮影距離は18cm。その能力は選べるアングルの自由度の高さに繋がり、撮影者の気持ちを楽にしてくれる。

K-1 Mark II+HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR
絞り:F2.4 露出補正:+0.7EV WB:太陽光 カスタムイメージ:リバーサルフィルム
ここはどこ?日本の美しさは自分で歩いてみなければわからないのかもしれない。こんな発見があるといつもそんなことを感じる。

己の勘だけを頼りに歩き回り、自分にとって新しい風景を見つけながら、ただ気になる被写体を追い続けていたが、この子の個性をさらに理解するために少しテストじみたことも試みた。

K-1 Mark II+HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR
絞り:F5.6 露出補正:+0.3EV WB:太陽光 カスタムイメージ:リバーサルフィルム
少し絞りを絞って順光で撮影すると色がもっとも綺麗に見える狙い方になる。リバーサルフィルムで強調されているのはご愛嬌。

K-1 Mark II+HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR
絞り:F2.4 露出補正:-0.7EV WB:太陽光 カスタムイメージ:モノトーン デジタルフィルター:ハードモノクローム
超広角レンズらしい迫力と大口径のボケ味を教科書的にローアングルから狙った。歪みのなさと自然なボケ味が心地よい。

K-1 Mark II+HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR
絞り:F2.4 露出補正:-0.7EV WB:太陽光 カスタムイメージ:モノトーン デジタルフィルター:ハードモノクローム
少し黒の締まりが強いモノクロが好みのボクとしてはこんな仕上げがツボにハマる。これは好みの問題だと思う。

ハードモノクローム
この日はこのほうがこの子の広がりにあっているように感じた。
テストを含めて撮影しているうちに、この子の個性が少し分かってそれが愛おしく思えるようになっていた。
これが Limitedレンズシリーズ の不思議で、この子も立派な Limited 姉妹の一員なのだ。

Epilogue

なぜ、写真を撮るのだろうか?記録、喜び、伝えるため......今回はちょっと違う気がした。
発見のため、新たな世界を知るため、そんなときに選ぶレンズ。
それがこの21mmだ。この子はありふれた日常を刺激に溢れた世界に変えてくれる力を持っている。
超広角レンズにとって、これもすでに使い古された表現だ。
FA Limited の魅力は自分だけの答えが見つかることだ。
この子の答えはもう少し時間がかかりそうだ。これまで以上に優等生に感じる新世代。
次の20年へ。そんな夢がつまっているという。
大きな宿題ができた気がする。それはこれからも表現者でいられる。
そんなプレゼントのように思えた。