三井 公一 Koichi Mitsui
- Profile
- 1966年神奈川県生まれ。新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
http://www.sasurau.com/
Twitter:@sasurau
HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED
Limited DC WR
はじめての土地を撮り歩くときに、自分は広い目線を持ちたいと思っている。なので、高い場所があればそこに登って頭に地形を入れ、インスピレーションをふくらませるようにしている。また使用するレンズもまず広めの画角からスタートすることが多い。ワイドな視野であらゆる光景を受け止めたいと思っているからである。
今回、はじめての土地にブラブラと撮影へ出向いたのだが、この「HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR」は大きな力になってくれた。訪れたのは広島県・鞆の浦界隈。風待ち港として栄えた風光明媚で歴史的な場所だ。
この21mmという焦点距離はまさにベストマッチ。このレンズを「K-1 Mark Ⅱ」に装着して、明るい光学ファインダーを通してこの土地をのぞいてみると、あらゆる光景がドラマティックに見えてきたではないか。これはしめたものである。
カメラを構えた自分を、少し上方から見ているようなイメージでブラブラと歩いた。路地、港、島、寺社、堤防、桟橋と気の向くまま歩を進める。そしていい光景を見つけて「K-1 Mark Ⅱ」をのぞいた瞬間、そのイメージがキュッと光学ファインダー内に優しく包み込まれ、シャッターを切った瞬間にメモリーカードに記録される・・・そんな風に撮影を楽しむことができたのであった。
21mmという焦点距離はかなり広い。海原の水平線はグンと遠くなり、人ひとり通るのがやっとの狭い路地もクルマが通れそうに写る。広がりや奥行き、そして高さ感も強調されるためだ。そうなると歪みが気になってくるものなのだが、この「HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR」はそれを感じさせない。直線はきれいに真っ直ぐ気持ちよく写り、ヒトの目で見たように自然に光景を写しとれるのだ。これはいい。
またF2.4という開放F値も気に入った。最短撮影距離も18cmと被写体に寄れるのがいい。絞り開放で肉薄すると21mmという超広角レンズなのにボケを活かした表現ができるのだ。さらにそのボケ味が素晴らしく美しいのである。前ボケも後ボケもスーッと溶けていくかのような、スムーズでシルキーな”Bokeh”で、まるでまどろみから目覚めたときのような感じの、幻想的な描写を見せてくれる。立体感抜群なのだ。
さらにF2.4付近の開放値だと、周辺光量がキレイに落ちてくれる。これがいい。周辺光量落ちがない方がいいと思う人もいるかもしれないが、そんな時はチョイと絞れば問題ないだろう。シャープネスも向上して現代的な描写も楽しめるからだ。
フレームの四隅にかけてなだらかに光量が減衰し、中心部が柔らかなスポットライトを浴びたかのような「HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR」の表現力は、ひとたび味わうとはまってしまうことだろう。魅力というか魔力である。
このレンズは佇まいも素晴らしい。「Limited」レンズらしく高品位なフィニッシュとフォルムなのは当然だが、手に取ると金属製ながらどことなく柔らかさと温かみを感じられるのだ。たおやかなカーブを描く花形フード、緻密な造りと動作の距離指標、そして存在感を放つ七宝焼きのフィンガーポイント、どれを取っても写欲を高めてくれる仕上がりになっている。所有する悦びと撮る悦びを高次元で味わえる「Limited」レンズと言えるだろう。