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K-3 Mark III Impressions

大村 祐里子

私は「日常」を主な被写体として撮影しています。ただ、日常を見たまま写したいわけではなく、イメージ通りの絵に変えたいと思っています。カメラマンのアシスタントをしていたとき師匠に「君はねじまげ屋だ」と言われましたが、それは言い得て妙なネーミングだと思いました。目の前の光景を自分のイメージ通りに捻じ曲げたい、それが私の本質です。

イメージ通りの絵に仕上げるため、大切にしていることが3つあります。1つめは「ピント」、2つめは「色」、3つめは「レンズの描写」です。今回、K-3 Mark IIIを使用してみて、上記3つのポイントについて感じたことを書いてみます。

smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited F2.8、1/2000秒、0.0EV、ISO100

1つめの「ピント」についてです。写真は撮影者の「視点」を見せるものだと思っています。だから、視点をあらわすピントが自分の意図する場所に来ないと、めちゃくちゃイライラします。そのため、作品撮りの際は基本的にAFを使わず、MFでピントを合わせます。今回の作品もすべてMFで撮影しています。上の作品は、ガラス面ではなく、その先にある街にピントを合わせたいと考えました。こういうときにはMFのほうが正確です。

smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited F2.0、1/250秒、0.0EV、ISO100

このカメラの光学ファインダーはびっくりするくらいに見やすく、ピントの山がとても掴みやすいです。上の作品のような強い逆光時でもクリアに見えました。どんなときでも直感的に、かつ正確にピントを合わせられるので、自分のようなMF派にはテンポよく撮れる理想的なファインダーだと思いました。

smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited F4.0、1/3200秒、0.0EV、ISO100

私はこのカメラの光学ファインダーが特にお気に入りです。ミラーレス機を使うときでも、集中したいときは必ずファインダーを覗きます。やはり「覗く」という行為は撮影において大事な要素です。このカメラは、ファインダーを覗くと液晶が消灯したり、より撮影への没入感を得られるように工夫されているので、歩きまわって疲れているようなときでも、絵作りへの集中力を切らさずにいられたので、撮影の終わりのほうでも「いいな」と思える写真が撮れました。だいたい最後のほうは集中が切れてダメになることが多いので、珍しいことだなと思いました。

smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited F2.5、1/2000秒、0.0EV、ISO100

目の前の光景をイメージ通りの絵に「変化」させるのが楽しいので、ファインダーの中では現実通りの光を捉えたいと思っています。「なるほど、こういう光ならば、こういうイメージに仕上げるのがいいだろうな」という思考プロセスを経ています。このカメラの光学ファインダーは生の光をきちんと見せてくれるので、目の前の光景と自分がしっかりと繋がっているような感覚で撮影ができました。

smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited F2.2、1/500秒、0.0EV、ISO100、太陽光、クロスプロセス

2つめの「色」についてです。私は写真を自分の好きな色味にすることに命を懸けているといっても過言ではありません。色については、カスタムイメージが大活躍です。私はこの機能が大好きです。種類もたくさんありますし、それぞれをより細かく設定できるので、自分好みの色に最短で近づけられます。今回もコントラストや彩度を絵に合わせて細かく設定していきました。シャッターを押して絵を確認したときに、想像通りのものがそこにあると、最高に気持が良いです。

smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited F2.8、1/1000秒、0.0EV、ISO100、太陽光、ポップチューン
smc PENTAX-M 50mmF1.4 F4.0、1/80秒、0.0EV、ISO100、太陽光、雅(MIYABI)

3つめ「レンズの描写」についてです。やはり、イメージの描かれ方はなんのレンズを使うかによって変わってきます。私は優しい描写が好きなので、そのように写る「オールドレンズ」も使います。このカメラは種類豊富なKマウントのレンズをアダプター無しで装着できます。オールドレンズ勢にはありがたい仕様です。

smc PENTAX-M 50mmF1.4 F1.0、1/800秒、0.0EV、ISO100、太陽光、ナチュラル
smc PENTAX-M 50mmF1.4 F1.4、1/1600秒、0.0EV、ISO100、太陽光、風景
smc PENTAX-M 50mmF1.4 F1.4、1/1000秒、0.0EV、ISO100、太陽光、ナチュラル

オールドレンズを装着すると、柔らかい描写、変わったボケ味、流れる周辺……といった、現代のレンズにはない味わい深さを存分に楽しめました。また、いつもとは違う描写のレンズを使うと良い気分転換になります。さきほどのカスタムイメージと併せると、新たな発見も多くあります。

ボディに予めオールドレンズの焦点距離を入力しておけば、それに合わせた手ぶれ補正が効きます。私は「U1」にデジタルレンズの設定を、「U2」にオールドレンズの設定を保存しておき、レンズに合わせて呼び出すようにしました。これで、レンズを複数本持ち歩くときも、いちいち設定を変えなくて良くなります。

さらに、K-3 Mark IIIでは、さきほど入力したオールドレンズの焦点距離や、絞り値がEXIFに記録できるようになりました。あとでEXIFを確認したり、ソートしたりする際に非常に便利です。撮影のお仕事をしている身としても、大変ありがたい機能です。

小気味よいシャッター音が耳元で聞こえるのも嬉しいです。「私、撮ってる!」という高揚感でいっぱいになります。露出の設定が苦手な方はグリーンボタンを押せば適切な露出を知ることもできます。また、RAWの保存形式はPEFかDNGか選べます。カメラ内RAW現像や専用ソフトを使用する場合はどちらでもかまいませんが、使い慣れたソフトで現像したい方はDNGを選べば良いでしょう。

やはり、写真は、目の前の光景に対して、自分の考えや印象を「付加」して、イメージ通りの絵に仕上げていくという行為こそが醍醐味だと思います。K-3 Mark IIIは、そのプロセスひとつひとつを、じっくりと楽しめるカメラだと思いました。写真を撮る喜びの「根本的なところ」を思い出しました。やはり私は一眼レフが好きだと思いました。

Yuriko Omura
大村 祐里子

Yuriko Omura

大村 祐里子

写真家。1983年東京都生まれ。福島裕二氏に師事後、撮影のほか、雑誌・書籍・Webでの執筆など、さまざまなジャンルで活動中。

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