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K-3 Mark III Impressions

三井 公一

ボクは日本各地を旅して、その土地に住む人たちの営みやその痕跡を撮り歩いています。といっても壮大なテーマがあるわけではなく、その時々の興味や気温、風向き、そして何となく心に刺さった地名を訪ねてブラブラと出かけていくのが常です。

smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited F8.0、1/400秒、0.0EV、ISO200

移動手段は公共交通機関が多いのですが、行き先の情報をあまり仕入れず、目的地に近づくにしたがってその土地の「気配」のようなものが漂ってくるのを、電車であったりバスの中で感じ取るのが好きなのです。それは言葉であったり匂いであったり街の雰囲気だったりします。先入観を持たずに、現地に着いてからの新鮮な驚きや感動を求めているのかもしれません。

smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited F2.0、1/800秒、0.0EV、ISO100

今回「K-3 Mark Ⅲ」を手にしていくつかの街を訪れました。そのどの土地も今まであまり馴染みのあるところではありませんでした。こういう時は到着したらまず高い場所から俯瞰で街を眺めることです。歩き回る前に土地の広がりと高低差を頭に入れておくと、当てずっぽうにブラブラと写真を撮り歩いても、何となく身体が街を意識して位置関係がわかるような気がするのです。もし撮影途中でいいお酒に出会って酔っ払ってしまっても安心です。駅の跨線橋やデパートの窓から見るはじめての街はとても新鮮に感じます。

smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited F8.0、1/400秒、0.0EV、ISO200

こうやって歩き出すといろいろなものが目に入り気になってきます。そんなものにK-3 Mark Ⅲを向けると、大きくて明るい光学ファインダーを通してクリアな像となって目に飛び込んできます。最近はもっぱらミラーレス一眼カメラばかり使っていたので、素通しのガラスペンタプリズムを透過して見る、美しくて生々しい光景に目を奪われてしまいます。自分の視覚が装着されたレンズによって四角いフレームにギュッと凝縮され、脚色されてない色で見えるのはちょっと忘れかけていた感覚でした。

シャッターを切る感触も大切です。静かすぎず大きすぎず、文字どおり「手応え」を感じられるシャッター音と、その感触が写真を撮る気分を盛り上げてくれるからです。K-3 Mark Ⅲはその点素晴らしいです。軽やかにキビキビとしたシャッターフィールは心地よく感じます。出会った人を撮らせてもらったときも「ほぅ、いいシャッターの音じゃないか」と言われたほどでした。このように街を見て、ほうぼう歩いて、人と出会って写真を撮らせてもらうという過程すべてがブラブラ撮影の醍醐味なのです。

smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited F5.6、1/500秒、0.3EV、ISO100

今回紹介する写真は海沿いの街でのカットです。冬でしたが海からの暖かい風が吹き、品と歴史があってのんびりとしたステキなところでした。ご多分に漏れず地方都市のこの街も衰退傾向にあります。路地を歩けばシャッターを閉じた商店が目に付き、お年寄りに多く出会います。でも皆さんパワーに満ちあふれていて「お、カメラとレンズの色が違っててオシャレだね」などと声をかけられます。K-3 Mark Ⅲはそんな人たちが住む街を克明かつ精細に写しとってくれました。シャープさはもちろんのこと、空気の温度感さえ伝わってきそうな微妙な色合いが気に入りました。街はちょっと停滞しているのだけど、温かな希望がほんのり残っている、そんな儚くも透明感あふれる光の感じをK-3 Mark Ⅲはデリケートにキャプチャーしてくれた気がするのです。

smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited F2.8、1/8000秒、-0.7EV、ISO100

ゆっくりとのんびりと街をブラブラと撮り歩き、そこにある営みを見つける旅ができたとき、「ああ、ここに来てよかったな」と思います。下調べをしない気ままな行程は、素通しのガラスペンタプリズムのようにあるがままの光景を見せてくれます。それを自分なりに切り取り、好きな色で表現していく楽しみがK-3 Mark Ⅲにはあると感じました。再びこのカメラを手に、この街を訪れてみたいと思っています。

Koichi Mitsui
三井 公一

Koichi Mitsui

三井 公一

1966年神奈川県生まれ。新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。

http://www.sasurau.com/
Twitter:@sasurau

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