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K-3 Mark III Impressions

塙 真一

時代の流れとしてはミラーレスカメラ全盛の今。そんな中、一眼レフを使うメリットというものを考えてみると、それは写真を撮るということの創造性に繋がるという気がする。被写体に当たる光を肉眼でダイレクトに感じられる光学ファインダーというシステムを持つ、一眼レフカメラ。露出補正もホワイトバランスもその結果は光学ファインダーの中では確認できない。つまり、シャッターを押してみない限り結果を知ることはできない。シャッターを押す前に結果が分かるミラーレスカメラとの一番の違いはここなのだと思う。だからこそ、撮る者の想像力と創造性が必要なのだ。

HD PENTAX-DA 15mmF4ED AL Limited F4.0、1/500秒、-0.7EV、ISO100、オートWB、リバーサルフィルム

一眼レフとミラーレスカメラのどちらが楽に思い通りの結果が得られるのかと言えば、ミラーレスカメラに軍配が上がるかもしれない。だが、「楽だ」ということと、「楽しい」ということは決して同じことではないのだと思う。漢字こそ同じ字を使うが、この2つはむしろ相反するものなのかもしれない。「楽(らく)」よりも「楽しい」を選ぶ。一眼レフを使うというのはそういうことなのではないだろうか。写真を撮るためには創造性が必要だと主張してくれるカメラ。
また、一眼レフカメラにはクイックリターンミラーという可動部があることによって、ミラーレスカメラよりも機械的なモノという印象が強い。どちらも「カメラ」ではあるのだけれど、「写真機」という言葉が似合うのは一眼レフカメラなのではないだろうか。写真を撮る楽しさに加えて、機械を操作する楽しさを味わえるのが一眼レフカメラだという気がする。カメラは画像記録装置ではなく、写真機なんだということを。

smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited F2.0、1/200秒、-1.3EV、ISO200、オートWB、モノトーン

ただし、現代のデジタル一眼レフカメラは単に機械としての無骨さだけではなく、そこにデジタル時代特有の多様性も持ち合わせていなくてはならない。一眼レフカメラはもっとシンプルな写真機であっても良い気はするが、やはりデジタル時代になって、より細かな仕上がり設定ができ、思い通りの写真に仕上げられる機械であることを求められるのは仕方の無いところだろう。

新たに開発されたK-3 Mark IIIを使ってみて感じたことはまさにこのデジタル時代の写真機という機械だということ。光学ファインダーの見え方、心地よさを徹底的に追求したことは、ファインダーを覗いた瞬間に感じられる。一眼レフカメラとしては比較的コンパクトなボディだが、それでも今どきのミラーレスカメラと比べれば大柄で重たく感じるボディ。だが、その大きさ重さが、機械としての凝縮感を感じさせてくれる。ギュッと詰まった機械をしっかりとホールドできる大型で手になじむグリップで握りしめると、「さあ、写真を撮るぞ!」という気にさせてくれる。カメラを構えたときだけでなく、カメラを片手で持ちながらぶらぶらと歩くときにもそのグリップ感が心地よいのだ。まさに写真機を手にしているという充足感。それがK-3 Mark IIIに対する私の印象だ。シャッターを切るたびに上下するミラーの動きも小気味よくキレの良さを感じる。決して乱暴ではない上品なキレという感じだ。

写真機として大切なのはファインダーの見え具合とシャッターのフィーリングだなと再認識させてくれるのがK-3 Mark III。

smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited F2.0、1/250秒、-1.3EV、ISO200、オートWB、リバーサルフィルム

デジタル時代ということでいえば、K-3 Mark IIIの設定関係は実によく考えられている。一番のお気に入りは、撮影直後の写真を見ながらホワイトバランスやカスタムイメージの調整をおこなえること。ミラーレスカメラでは撮影前の映像を見ながら調整するが、K-3 Mark IIIでは撮影直後の写真でこれをおこなう。今、撮ったばかりの写真をみながら、次のカットのための設定をおこなうという動作が、次の一手を考えるための儀式のようで心地よい。私がカスタムイメージで愛用しているのは「リバーサルフィルム」と「モノトーン」の2種。9割方の写真はこのどちらかで撮っている。「モノクロがいいか、リバーサルがいいか?」これをシャッターを切りつつ、「このシーンはどちらがいいかな?」と考える時間。この時間が創造性を発揮するチャンスなのかもしれない。K-3 Mark IIIだからこそ楽しめる儀式ともいえる。

smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited F4.5、1/100秒、-1.7EV、ISO200、オートWB、モノトーン

写真の仕上がりについては「RAWで撮っておいて後から調整すれば良い」という考え方もあるが、私は撮影しているその瞬間にできるだけ仕上げておきたいと思っている。理由は、撮っているときが一番、被写体に対する仕上がりイメージが強いと思うからだ。「今、目の前にあるシーンをその現場のイメージで仕上げる」のが私の理想だ。K-3 Mark IIIに限らず、PENTAXのカメラは現場で仕上げるということに対するアプローチがしやすいカメラだと思う。
光学ファインダーによってダイレクトに被写体と対峙できる一眼レフカメラならではの楽しさ、写真機としての機械的完成度。そしてデジタル時代のカメラとしての設定操作のしやすさ。この一見して両立することの難しそうな課題にチャレンジした結果できあがったのが、このK-3 Mark IIIというカメラなのかもしれない。ミラーレスカメラ全盛の今だからこそ、こういう写真機の存在に価値があるのだと思う。

Shinichi Hanawa
塙 真一

Shinichi Hanawa

塙 真一

東京都出身。人物をメインの被写体とするフリーランスのフォトグラファー。 カメラ誌に写真や記事を寄稿するほか、役者、タレント、政治家などの撮影も行う。また、海外での肖像写真撮影、街風景のスナップ、夜の街を撮る「夜スナ!」をライフワークとする。写真展の開催も多数。

Twitter:@S_HANAWA
YouTube:写真家塙 真一

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