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天体撮影から考える Why PENTAX?

天文機材技師の☆男(hoshiotoko)こと、笠原隆樹です。

私の天体撮影はO-GPS1+アストロトレーサー機能で大きく変化しました。
ひと昔前は、美しい天体写真を撮影するには星の動きに合わせてカメラを追尾させる必要があり、赤道儀などの重機材を使用するのが一般的でした。
しかし、2011年に発売されたGPSユニット O-GPS1とPENTAXデジタル一眼レフカメラの組み合わせにより、簡易的な天体追尾撮影が可能な “アストロトレーサー” が実現。
私もO-GPS1が発売されるとすぐに購入し、当時の手持ちカメラであるK-5とK-rの2機種を持って梅雨時の富士山や奥秩父、新潟県湯沢町と晴れ間を求めて飛び回ったものです。
今回は天体撮影の専門家やマニア向けではなく、「星空の写真を撮ってみたい」と考えている一般の方向けに、これらの機能やアクセサリーについて私なりの見解と、なぜ天体撮影にPENTAX機が良いのかを紹介したいと思います。

■ 唯一無二の飛び道具 アストロトレーサー

アストロトレーサーも初めて搭載されてから7年が経過し、すでにご存じの方も多いでしょう。
簡単に言うと「星の動きに合わせてカメラのイメージセンサーを動かす」ことで、星が止まっているような写真を撮影できる機能です。

地球が自転しているため、長秒露光を行うと星が軌跡として写ります。

星の動きを追尾撮影することで、長秒露光でありながら星を写し止めることができます。

■ アストロトレーサーとは?
カメラ本体に内蔵された手ぶれ補正機構(SR)とGPS情報を連動させた、天体追尾撮影機能。(詳しくはこちら
■ O-GPS1とは?
GPS機能が非搭載のカメラでも、アストロトレーサーによる星景撮影を可能にするGPSユニット。(詳しくはこちら

※PENTAX K-1 Mark II、K-1、K-3 IIといったカメラにGPS機能が搭載された機種については、O-GPS1がなくともアストロトレーサー機能が使用できます。

■ キャリブレーションとは?
O-GPS1(またはGPS機能内蔵カメラ)が方位情報を正確に取得するために行う調整のことです。(詳しくはこちら

天体撮影と聞くと、機材に詳しい方ほど大げさな装備を思い浮かべるのではないでしょうか。アストロトレーサー機能を活用することで、撮影機材は驚くほどシンプルになります。

〔写真:撮影機材はこれだけ〕

  • PENTAX K-70
  • GPSユニット O-GPS1
  • HD PENTAX-DA16-85mmF3.5-5.6ED DC WR
  • 三脚+雲台

〔写真:紹介した機材で、これだけの星景写真が撮れてしまいます〕

PENTAX K-70+O-GPS1+HD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WR
アストロトレーサーON、絞り F4.5、露光時間 60秒、ISO3200、焦点距離16mm
(2018年6月18日 湯沢町にて)

■ 赤道儀にはない、アストロトレーサーのメリット

場合によっては地面直置き撮影も可能!

撮影機材を大幅に小型軽量化できる!

赤道儀に対してのアストロトレーサーのメリットは数多くあります。
まずは操作手順がシンプルで分かりやすいこと。
基本的には「精密キャリブレーション」を行い、カメラを設置。
あとは装着レンズの焦点距離にもよりますが30~90秒程度の露光時間で撮影するだけです。
星が点像で写るだけでなく、肉眼では見え難い天の川や星雲までもが簡単に撮れてしまうのです。

次に、赤道儀のように面倒な気配りや専門知識が必要ないこと。
北極星を基準に極軸合わせをする赤道儀に対してアストロトレーサーの精密キャリブレーションは、北極星が見えない南半球でも問題がありません。また、一度行った精密キャリブレーション設定は、電源を切っても保持され、三脚ごと方向転換しながら構図決めもでき、とても助かります。
O-GPS1システムは軽量なため小型三脚でも大丈夫ですし、急場の地面直置き撮影も可能です。
赤道儀では、自由に移動することができません。
実は、これが大変に大きなメリットなのです。
特にポータブル赤道儀と呼ばれる小型の撮影機材では、構図決めが鬼門となります。
構図を決めている最中に機材が動いて極軸設定が狂ってしまったり、無理な構図のためにアンバランスとなり、機材全体がたわんでしまったりします。そうすると、当然に星は流れて写ることになります。

そして最大のメリットは、安価で手軽に本格的な天体撮影ができるということです。
赤道儀の場合は10万円以上の追加出費が必要ですが、O-GPS1の追加費用は2万円程度です。
わかりやすく箇条書きでまとめてみましょう。

アストロトレーサー機能の場合

  • 例えば60秒露光で星は点像、雲は流れるという星景写真が撮れる。
  • 135mmクラスまでなら、かなり使える望遠撮影。
  • バッテリーを抜かなければ、精密キャリブレーション情報が保持される。
    • 本体電源OFF、O-GPS1電源OFF、最近の純正レンズなら交換をしても大丈夫。
    • レンズ情報を持たないマニュアルレンズは、焦点距離情報を入れ直す必要あり。
    • 晴れ待ちで車内待機時など、とても助かる。
    • 撮影場所を大きく変更する場合は、再度精密キャリブレーションを行う必要あり。
  • 構図決めのため、三脚ごと方向転換が可能。これは大変に大きなメリットである。
  • 地面直置き撮影も可能。
  • 北極星が見えなくても問題がない。
  • 南半球での使用に心強い。
  • 速攻性もアストロトレーサーの利点。
    • 旅先で偶然に素晴らしい星空と風景に出会った! 10分後には撮影終了!

ポータブル赤道儀ではどうでしょうか

  • 北極星が見えないと極軸合わせが出来ない。または非常に難しい。
  • 南半球では極軸合わせに不安が残る。
  • ポータブルゆえ赤道儀としては軽く、小型三脚では機械的剛性が弱い。
    • 極軸ズレ以外にも構図決めによるアンバランスで星が流れて写ってしまうことがある。
  • 設置後に移動することが出来ない。
  • 小型ゆえ極軸がズレたり、撮影機材全体がたわみやすい。
    • 極軸設定が狂うと撮影が出来ないため、実は構図決めが大変な作業である。
  • カメラ以外に10万円程度の追加出費が必須。
  • 使いこなしに技術と天文知識を要する。
  • 家族旅行のついでに“チョット撮る”にはスキルが必要。
  • ある程度はかさばり、そして重い。
  • 速攻性を発揮するには熟練が必須。
    • 極軸を合わせ、構図を決め、撮影を始めようと思ったら曇ってしまった!など。

■ 天体撮影にPENTAX機が良い理由

ここまではアストロトレーサーについて述べてきましたが、それ以外にもPENTAXの一眼レフカメラは、天体撮影に非常に適しているところがたくさんあると思っています。

・K-70クラスのカメラでも防塵・防滴、マイナス10℃動作保証がある

天体撮影は夜露との闘いです。長時間撮影を行えば、かなりの確率でカメラがびっしょりになります。冬場はカメラごと凍結もあり得ます。

〔写真:極寒で撮影中のPENTAX K-1〕

・K-70のバリアングル液晶やK-1のフレキシブルチルト式液晶が便利

最近の機種では赤色モニター機能もあるため、暗がりでの設定変更などもやりやすい。

〔写真:PENTAX K-70のバリアングル液晶は縦構図で便利〕

精密キャリブレーション後にバリアングル液晶を大きく動かすと、カメラ周辺の磁場が変化して正確な追尾に影響を及ぼすことがあります。

・JPEG一発撮りでも発色が良く、特に天の川撮影では美しく仕上がる

もちろん一般撮影用の無改造カメラですが、ガス星雲が放つHII領域と呼ばれる赤いエリアも比較的良く写ります。

PENTAX K-5 IIs+O-GPS1+smc PENTAX-DA L 18-55mmF3.5-5.6AL
アストロトレーサーON、絞り F4.5、露光時間 90秒、ISO 3200、焦点距離 18mm
(富士山須走口五合目にて) このレンズはK-rのキットレンズです。

その他にも、

  • カメラ内インターバル合成で“比較明”が選択可能。別途ソフトウェアを購入する必要が無い。
  • アストロトレーサー機能を使うことで、ISO3200以下が星景写真で使える。
    • 現在のデジタル一眼カメラを見ると、ISO3200辺りにダイナミックレンジの壁が存在するように感じます。
    • 一方、星(地球)は結構な速さで自転しているので、広角レンズでも15秒程度の露光を行うと点像には写らなくなります。
    • ですから、ISO3200で30秒も露光すると、確実に星が線になって写ってしまうのです。
    • そこで、画像が粗れるのを承知でISO6400にし、10秒程度で写し撮るのが現在の星景写真です。
    • ISO3200以下が使えるメリットは大きいと感じます。

などの特徴もあります。

・PENTAXにはAPS-C用のDAレンズに多くのバリエーションがある

バリエーションが多いだけでなく、購入しやすい価格で販売されています。
アストロトレーサーを使うことで、比較的暗いレンズでも十分に星景写真が撮れるのも魅力的な特徴です。

〔写真:HD PENTAX-DA 15mmF4ED AL LimitedをF5.6まで絞って撮影〕

PENTAX K-70+O-GPS1+HD PENTAX-DA 15mmF4ED AL Limited
アストロトレーサーON、絞り F5.6、露光時間 60秒、ISO 3200、焦点距離 15mm(湯沢にて)

・古いKマウントレンズや6×7用レンズまでもが星景撮影に使える

自宅に眠っているレンズ、かなりお値頃な古いレンズの中には、星の撮影で優れた描写力を発揮するものも。

■ PENTAX機ならではの星の撮り方

私のように天体撮影を目的として旅する方は別ですが、例えば家族旅行で星空の美しい場所に行かれる方は 大勢いらっしゃるでしょう。そのような時に限って、見たこともないような星空に出会うこともあります。
K-70とO-GPS1、小型三脚さえあれば、このような写真が数分で撮れるのです。
作例は、一発撮りのJPEGデータです。

〔写真:HD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WRの広角端16mmの開放撮影〕

PENTAX K-70+O-GPS1+HD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WR
アストロトレーサーON、絞り F3.5、露光時間 60秒、ISO 3200、焦点距離16mm
(群馬県上野村スカイブリッジにて)

〔写真:星景写真では、あえて人工物の光を写し込むのも面白い〕

PENTAX K-70+O-GPS1+HD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WR
アストロトレーサーON、絞り F4.5、露光時間 60秒、ISO 3200、焦点距離 16mm
(2018年6月18日 新潟県かぐら三俣スキー場の大きな駐車場にて)
左が火星、中央が土星、右がさそり座のアンタレスです。

〔写真:カメラのキットレンズでもかなり良い仕事をするのがPENTAX〕

PENTAX K-70+O-GPS1+smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
アストロトレーサーON、絞り F4.5、露光時間 60秒、ISO 3200、焦点距離 53mm(群馬県上野村にて)

〔写真:K-70とキットレンズで撮影したJPEG画像を後処理して表現したM31アンドロメダ大銀河〕

PENTAX K-70+O-GPS1+ smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
アストロトレーサーON、絞り F5.6、露光時間 30秒、ISO 6400、焦点距離 135mm

この写真は複数回撮影したJPEG画像を用いていわゆる“天体写真的”画像処理を行っているものの、撮影自体はK-70とキットレンズで行っています。

〔具体的な処理内容〕

  • ・30秒×21枚コンポジット(天体写真的画像処理)
    • ※総露光時間:10分30秒相当、ダーク減算、フラット処理無し
  • ・300mm相当にトリミング

ここでご紹介した写真は、全て市販品そのままのPENTAX機で撮影したものです。
良い天体写真を撮影するうえで重要なのは、暗い夜空がある場所へ出かけて行くことです。
天体写真ファンでない方が一人で、特に女性が夜中に行動することは難しいかもしれません。
でも、家族や友人との旅行中であれば十分にチャンスがあります。
もちろん、海外でも大丈夫。
そんな状況で沢山の荷物の中に赤道儀や大きな三脚を忍び込ませる余地は・・・たぶん無いでしょうね。
私自身もそうでした、アストロトレーサーに出会うまでは。
ここでご紹介したレベルの写真なら、最初に紹介した装備で撮影できてしまうのですからありがたい限りです。
天文機材技師という変わった仕事をしている身として、各種カメラでの撮影を頻繁に行っています。
プロの写真家さん同様に失敗が許されない現場がありますが、アストロトレーサーの速効性が大変役に立っています。

皆さんがこれから星景写真を撮ってみようと思っているのでしたら、

唯一無二の飛び道具 “ アストロトレーサー ”

が使えるPENTAXのカメラを1セットお使いになると、撮影地や旅先での楽しみがさらに増えるのではないでしょうか。

〔この記事でご紹介した製品はこちら〕

プロフィール

笠原 隆樹 (Kasahara Takaki)

謎の天文機材技師、全方位エンジニア。
☆男(hoshiotoko)としてネットに出没する。
父の形見がPENTAX S2。
筋金入りのPENTAXファンであり、K-x以降の全機種を使って天体写真を撮っている。PENTAX歴40年以上。
育英高専(現サレジオ高専)電気工学科卒業
電気工事士、無線技士 有限会社エイエフテック 代表取締役
顕微鏡用爆速レーザオートフォーカス開発者、現場AF職人でもある。

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