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密猟問題
森林伐採と並び、問題となっているのが密猟です。コンゴウインコなどはペットとしての価値も高く、毎年雛が巣から盗まれます。国立公園や保護区のレンジャーと話したことがあるのですが、密猟者は道のない場所から侵入して来るので、数人の警備では手に負えないと嘆いていました。私自身、有名なラ・セルバ熱帯生物研究所の敷地内で密猟者と遭遇した経験があります。夕暮れ近くに、一人はライフル銃を持ち、もう一人は大きな皮袋を重そうに背負っていました。直ぐに事務所に通報したのですが、同様のことは頻繁にあるそうで、正直私は驚きました。あの大きな袋の中に罪もない生き物が入っていたのかと思うと、今でも胸が痛みます。
コンゴウインコの生息地として有名なカララ国立公園では密猟者が何度か逮捕され、その腹いせに事務所や車が放火されたこともあります。今でこそ取締りが厳しくなりましたが、以前はニカラグア国境で籠に入れられたインコ、サル、ヘビなどが平然と違法売買されていたそうです。
私は「生き物は自然の中で見るのが一番」と常にお客様にお伝えしています。日本ではペット・ショップ、サーカス、動物園などでもよく見かけるコンゴウインコやノドジロオマキザルなどは、熱帯雨林で見るからこそ美しく、価値があるのです。大空を飛翔するコンゴウインコの美しさは言葉では表現できません。密林でノドジロオマキザルの集団に遭遇し、その行動に一喜一憂できるのも「ライブ」ならではの楽しさです。密猟は需要があるから行われる訳ですが、その多くは先進国へ行くのです。野鳥ガイドを始める前まではペットとして、あるいはテレビの世界の生き物でしたが、自然の中で出会うことによって、私の人生は変わりました。
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ノドジロオマキザルノドジロオマキザル
アメリカンクロコダイルアメリカンクロコダイル
ヘラクレスオオカブトムシヘラクレスオオカブトムシ
 
コスタリカの未来
ここまで読まれて、コスタリカの将来を心配されている方もいるかと思います。「エコツーリズムの先進国」でも現状は多くの問題を抱え、他の中南米諸国でも同様か、それよりも悲惨な状況です。しかし、全てにおいて悲観的になってはいけないと思います。事実、嬉しい兆しも見えています。一時は絶滅が懸念されたアメリカン・クロコダイルですが、今では個体数も安定しています。ケツァールを保護するため生息地では地元民が積極的に植林をしています。絶滅したと思われていたヤドクガエルが再発見された記事も新聞で見かけました。1950年代以降、カリブ海側から姿を消していたコンゴウインコが今年再び同エリアで営巣しました。
伐採跡地も、何十年も経てば熟成した二次林となります。原生林と比べると「命」の密度は異なりますが、それでも多くの「命」がそこに宿ります。コスタリカは、伐採の代償として自然の大切さを学びました。残された緑は美しく、世界中の観光客やバードウォッチャーを魅了しています。エコツーリズムは、これからもどんどん浸透していって、自然の素晴らしさをより多くの人々に実感してもらいたいと切に願っています。日本にとっては、まだまだ未知の中米の小国コスタリカですが、「Pura vida!」を通じて少しでも魅力が伝われば幸いです。一年にわたりお付き合いくださいまして、ありがとうございました。Pura vida!
 
『Pura vida! 野鳥ガイド露木貴浩氏のコスタリカ大自然コラム』
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露木貴浩氏について
オオツリスドリの古巣を持つ露木氏
滋賀県生まれ東京育ち。学生時代に渡米し、ロサンゼルスで手にしたピーターソン・フィールドガイド(北米の野鳥図鑑)がきっかけとなってバードウォッチングを始める。
活動の場は北米から中南米へと広がって行き、中南米の自然の美しさに魅せられると同時に、森林保護の必要性を感じ始める。以後、サラリーマンから野鳥ガイドに転身。中南米の玄関口であるヒューストンでの活動の後、2003年からはコスタリカに在住し、欧米バードウォッチャー御用達ロッジのガイドや、旅行会社の現地講師も兼任するなど、幅広い活動を続けている。
目標は、世界中のバーダーに新大陸の野鳥を紹介すると同時に、消えゆく熱帯雨林、熱帯雲霧林、密猟問題の現状などを伝えていくことだ。
露木さんのホームページ
「アメリカ大陸の野鳥」