私は森の中で光を切り取り続けている。
時には雨が降り、険しい道を切り開いて進むこともある。光を見つけた瞬間の感情は、その“時”そのもの。そしてでき上がる作品は唯一無二の特別なものとなる。
後から思い返して画作りをするのと、現場で作り上げるのでは、作品の質が変わってくる。だからこそ、感情を作品に反映させることのできるカメラが必要だった。
PENTAXのカメラが内蔵するカスタムイメージでは、光を形にするための「コントラスト」と「ハイライト」「シャドー」設定。そして、中間光量を修正することができる「キー」等をはじめとした素晴らしい調整機能の数々。あらゆるフィールドの様々な条件に耐えうる堅牢性を持ち、目の前に広がる光景をありのままに瞳に届けてくれる光学ファインダー。
全てが備わっているPENTAXだからこそ、作り上げることのできる作品がある。
人は誰でも、見たことのない光景を追い求める。そして、自分だけの世界を心に抱いて生きてゆく。唯一無二の写真を、他の誰でもなく自分だけの光を心のままに。
いつの日からか、森の中で光を追い求める生活を送っていた。誰も知らない、一瞬の光景。繊細で、すぐに消え去ってしまう光を切り取るために。
撮影に出る前日準備をしておいた、撮影日数分の着替えや、熊撃退スプレー、いざとなった時のためのホイッスルや安全対策諸々、そして大切な撮影機材を確認した。私の撮影機材は全てPENTAXで構成されている。その理由は連載の中で少しづつ紹介させていただく。
そうこうして整え終わった荷物と機材を、相棒の黒蔵(ジムニーシエラ)に詰め込んでゆく。フルフラットにして寝床の一部となっている助手席の上に、K-1 Mark IIと645Z、レンズ達を置き準備は完了。さあ、愛おしい森へ旅に出よう。
撮影する場所は、その時々の気分で変えている。雲の動きや、空気の流れ。時には風の音や、空気中の湿度。様々な情報が、ここに行きなよと心を動かしてくれる。
相棒の黒蔵と、たまたま見つけた林道に入ってみた。雨が降る荒れた道をゆっくりと奥へ進んでゆくと、そこには美しい霧が満ちていた。雨の音や鳥のさえずりすらも、静寂に溶けてゆくようだ。
光は霧で乱反射し、森全体がうっすらとした光を宿している。心を揺り動かす、神秘的な美しさを抱いていた。
吸い込まれるような光を眺めながら、路肩に車を止めて降りてみる。足の裏に、重なった葉や石、木の根の感触が伝わってきた。その瞬間、森の一部になったような、そんな錯覚にとらわれるのを感じた。
鳴り止まない雨の音を聴きながら、刻々と変わってゆく光景に目を向ける。水分を含んだ針葉樹の香りが漂う深い森。目の前に広がっている光景の全ては、今を表す、二度と訪れることのない“時”の一部だ。
圧倒的で決定的な瞬間ではなくとも、落ちているひとひらの葉に当たる光だけでも十分に美しいのではないだろうか。私はこの空気を、時間をこの場で切り取りたいのだ。
作品を撮る上で最も重要なことは、撮影現場の空気の中で、いかに作品を作り込むことができるかだと私は考えている。
後から机上で現像作業をすることはもちろん大切だが、心を動かす瞬間と出会った時の感情や想いを作品に落とし込むためには、現場での調整と作り込みが必要となってくる。
森を包み込むほのかな美しい光を、静かな木漏れ日を撮影したい時。
光の量を見極めて、カメラ内の機能を調整することにより、繊細な光をより立体的に切り取ることができる。
自分のその時の感情に答えてくれる、PENTAXのカメラにしかできない作品の撮り方があるのだ。
今後も旅の物語形式で、PENTAXで撮影した作品の画作りのポイントや、現地の様子をお伝えしていきたい。