第9回
EXPOSURE 3 - 露出を操る 3 【分割測光+露出補正の罠】
「カメラに測らせる」のか「自分で測る」のか
自動露出の進化は止まるところを知りません。昨今のペンタックス機では 『約8.6万画素RGB測光センサー』搭載機が増えてきました。これの意味するところは、この測光センサーによる分割測光はかなり細かく画面内の「明るさと色」の分布を測り、なおかつ「形や動き」まで認識しているということです。明るさの分布を大まかに測っていた分割数の少ない旧来の分割測光とはその演算の複雑さも別次元でしょう。古いカメラであれば、使っているうちに分割測光の癖がわかり、経験を元に露出補正をかけるという方もおられたと思います。しかし分割測光が進化すればするほどカメラの導き出す露出は適正となり、露出補正する必要性がなくなっているはずなのです。複雑な演算はもはやブラックボックスの中であり、なぜその露出なのか撮影者さえもわかりません。つまり「基準が不透明」なのです。自分で測っておらず「基準が不透明」な分割測光に対して勘で「プラスだ、マイナスだ」と補正をかけてみても狙った結果は得られず迷宮に迷い込んでしまうかもしれません。「カメラに測らせる」のか「自分で測る」のか、その根本を誤っていては「何に対して補正をかけているのか」がわからない罠にはまってしまうのです。一方で、デジタルカメラであれば撮影画像をすぐに確認できるので、確認して「暗い」「明るい」と補正をかけて撮り直すやり方もあると思います。注意しなければならないのは、背面液晶で確認している画像の見え具合はその場の環境光によって変わってくるという点です。ヒストグラムも確認した方がよいでしょう。
カメラメーカーは、露出のことなど全く知らない初心者から露出を自分で操るプロまでが使えるように、あらゆる機能をカメラに盛り込みます。しかしそれらの使いこなしは複雑過ぎて、カタログや取扱説明書で説明しきれるものではありません。カメラメーカーが行うのは「機能と操作の説明」であって、写真が撮れる原理や理論の部分は使用者が自ら学ぶべき部分なのです。「たまたま撮れた」のと「狙い通りに表現出来た」のでは、見る人にとっては同じでも撮影者の悦びは雲泥の差です。感性は理論を伴ってより輝きを増すと言えるでしょう。
K-3以降搭載機が増えてきた『約8.6万画素RGB測光センサー』。もはや明るさだけに留まらず、色や形、そして動きまでも検知して解析されている。測光をカメラに任せるのか自分で行うのか、状況に応じて使い分けたい。
プロフィール
花谷 タケシ
京都市出身。独学で写真を学び、1998年カナダに渡航。西海岸から東海岸まで車で横断した後、カナディアンロッキーで過ごす。ここで次第に熊に魅せられさらなる北の大地アラスカや極北カナダに撮影フィールドを移していく。2007年にカナダへ移住し、2010年よりユーコン準州ホワイトホース市を終の棲家とし定住。《人間》対《自然》ではなく、人間も自然の一部として他の生きものたちといかに《共生》していくかを模索しながら、極北の厳しい自然環境の中で生きる野生動物の姿を追い続けている。
オフィシャル・ウェブサイト:熊魂 yukon-bearspirit:
www.yukon-bearspirit.com
フェイスブックページ:
www.facebook.com/yukon.bearspirit
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