ほかの生き物には目もくれず
種によって生息地も異なり、生活パターンも違います。それらを理解し、時間を有効に使い、一種、一種確実に見つけていきます。一応、定番となる「シナリオ」が各探鳥地ごとにあるのですが、相手は生き物です。予想外に見つからない時もあります。その場合は、どこかで「修正」しなければなりません。そうならないためにも常に頭はフル回転しています。特に声は重要です。常に複数種の声が耳に入ってきますが、その中に優先種が含まれている場合は、直ぐに探しに行きます。ハイライトとなりえる種は誰もが見逃したくないですからね。
世界一美しい鳥として世界中のバードウォッチャーを魅了するケツアール(カザリキヌバネドリ)
お客様も、見たい鳥がたくさん存在するわけですから真剣そのものです。エコツアーのように皆でワイワイ、ガヤガヤしていられません。鳥が逃げてしまうからです。警戒心の強い種は、大勢で歩いているだけで姿を消してしまいます。極力物音はたてない、おしゃべり厳禁などといった息の詰まる瞬間も多々あります。
探鳥ツアーは日の出と同時に始まり、夕方まで続きます。夜にフクロウやヨタカなどを探すケースもあり、文字通り一日中のツアーです。休暇を取られて参加される方がいても、とてもリラックスな雰囲気ではありません。唯一、昼休みはシエスタ(=お昼寝の時間)となりますが、その間もホテルやロッジのお庭で探鳥される熱心な方もいらっしゃいますね。
そんな忙しいツアーのどこが楽しいのか?と疑問に思われる方もいることでしょう。事実、本当に忙しいのです。私としてはある程度の数を見せなければいけません。後をついて来るお客様も大変だと思います。しかし、夢にまで見ていた鳥が次々に登場する時の感動、興奮は格別なものなのです。ケツァール(カザリキヌバネドリ)との出会いに目頭を熱くさせる方もいます。汗をかきながら自らの足で歩き、野鳥との出会いに一喜一憂する。目標を達成した日の夜、皆さんと飲むビールは格別に美味しいものです(笑)。