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PENTAX Q 開発ストーリー

PENTAX Qの企画開発は1979年に発売されたauto110(オートワンテン)にまで遡ります。そこから2011年の発売まで、開発の歴史をご紹介します。

auto 110(オートワンテン)1979年

話は30年以上前に遡ります。
当時、35ミリ判フィルム一眼レフカメラで確固たる地位を確立していたペンタックスは、 1969年に中判一眼レフカメラ「アサヒペンタックス 6×7」を発売し、 1976年にはKマウントで小型軽量なMシリーズで多数のヒット商品を生み出していました。 そして1979年、世界初の110フィルム対応レンズ交換式一眼レフカメラ「アサヒペンタックス auto110」を発売します。

これにより、ペンタックスは、中判、35ミリ判、110と3つのフィルムフォーマットの一眼レフカメラを ラインナップに持つ唯一のメーカーとして幅広いニーズに応えるとともに、写真文化の拡大に貢献してきました。

auto110は、後継機のauto110スーパーを含め、多くのユーザーに愛用されましたが、 35ミリ判フィルムカメラの小型化などで110フィルム自体が衰退し、 それとともにauto110のシリーズ展開も幕を閉じることになりました

試作 2000年

それから何年もの歳月が流れ、カメラがフィルムからデジタルに移行しつつあった2000年頃、 開発者数名でプロジェクトチームを発足し、『auto110 Digital』の企画検討を行います。

分解したauto110のボディにCCDを貼り付け、何とか画像が出せる試作機まで用意して上層部に提案をしました。 しかしながら、まだKマウントのデジタル一眼レフカメラも発売できていないような状況でしたので、 他に優先すべきものがあるということで実現には至りませんでした。

  • auto110 Digital 試作機
    auto110 Digital 試作機
  • auto110 Digital 試作機
    auto110 Digital 試作機

夢 2004年

その後、2004年ごろになって、開発者の間だけでなく、商品企画の部署でも『auto110デジタル』を作りたい!という声が上がります。 商品企画では最初のアプローチでauto110が当時どれぐらい売れたのかを調査していくうちに「auto110のデジタルカメラが欲しい」というユーザーの声が少なからずある事を知ることになります。

そして何故auto110が衰退してしまったのかなど、社内でも聞き取りをおこなっていく中で、2000年頃に既に開発者から提案があり、試作機まで用意していた事が分かったのです。

『これだけ作りたいと思っている人がいるのであればヒット商品になるはず』、『半導体技術はどんどん進化するので小さなセンサーが110フィルムのように衰退することはない』と信じて企画を通そうと考えますが、かつて開発者が提案した結果と同じく、商品企画でもなかなか社内の合意を得ることができませんでした。

挫折 2006年

開発のキーパーソンである開発統括部長に企画推進の同意を得ようとするも、なかなか説得ができずに頓挫してしまうということを何度も 繰り返します。開発統括部長が難色を示したのは、当時は小型のイメージセンサーでは十分な画質が得られず、他に優先すべき課題も あって、時期尚早と考えたからでしたが、「検討だけでもさせて欲しい」という度重なる要望に対して、ようやく理解を示し、2006年、 ついに検討チームが発足されます。

チームでは、センサーサイズ、ファインダー、フォーカシング、絞り、シャッターなど、それぞれに 対して選択肢を洗い出し、将来性を考慮しながらメリット・デメリットを議論しました。建設的に議論が行われ良い方向に向かいつつ ありましたが、担当者が入れ代わってしまったり、引き継ぎがうまくいかなかったりなどしてまたも頓挫してしまいます。

さらに、2008年に Kマウントのデジタル一眼レフカメラに注力するという事業方針が立てられた結果、開発者のもう1つの長年の夢であった 中判一眼レフカメラのデジタル版「PENTAX 645D」の開発までもが一旦凍結されるとともに、『auto110デジタル』の企画検討も遅々 として進むことはありませんでした。そのうちにマイクロフォーサーズという新規格が発表され、完全に夢は破れたかにみえました。

※その後、645Dは開発が再開され、2010年に発売して以来、カメラグランプリ大賞など数々の賞を受賞しています。

始動 2009年

そして2009年、ついに状況が大きく変化します。まず、カメラが搭載された携帯電話の普及で 写真を撮る人が増えた事などから、デジタル一眼の購入層が拡大するとともに多様化していることが 最新の調査データで明らかになりました。

また、半導体技術が進化し、小型でも高感度でノイズの少ないセンサーが開発されたことに加え、 画像処理エンジンも高性能化し、従来では処理時間がかかり過ぎてできなかった、 複雑なノイズ処理が高速に行えるようになりました。

一方で、他社から発売されていたミラーレスカメラをauto110と並べて比較してみると、 『一眼レフが小型化されたと言っても、まだまだ大きい』、 『特にマウントが大きくて、ボディサイズの小型化にも限界がある』ということに気付き、 auto110 Digitalを開発したいという気持ちが再燃します。

その頃、就任して間もなかった事業部のトップもかつてのauto110の存在に驚き、 様々な人に見せて回って「これのデジタル版があったら欲しい」という生の声を直接確認した結果、 ついに小さなセンサーを搭載した超小型デジタル一眼「PENTAX Q」の製品化について、 正式に検討指示が下されました。

発案からおよそ10年、一人ひとりの小さな「夢」がようやく実現に向けて動き始めたのです。

企画 2010年

最初にターゲットユーザーとして、 既にデジタル一眼を持っていてサブ機に小さなデジタル一眼を欲しい人(X層)、 コンパクトデジタルカメラを持っていて次は一眼を欲しい人(Y層)、 ハイエンドコンパクトデジタルカメラが欲しい人(Z層)の3つのセグメントを設定しました。 そして、X層・Z層のニーズを意識しつつもY層をメインのターゲットユーザーに設定することにしました。

さらに、コンパクトデジタルカメラユーザーの3割がデジタル一眼の購入を検討しながら、 大きさ・重さが大きな障壁となってコンパクトデジタルカメラを購入している(一部のY層)という調査結果を元に、 これらの大きな障壁を取り除いて一眼の楽しさをもっと多くの人に知って欲しい!という考え方に重きを置きました。

実は、この考え方は調査結果によるものだけでなく、 「もっと小さくして全く新しい一眼を作りたい」という開発者の思いにも共通していたのです。

保有タイプと購入意向タイプ

次に、Y層がなぜ一眼を欲しいと思っているかを確認する為、『一眼の魅力は?』という定量調査を行いました。 その結果、単に「画質が良い」というだけでなく、「レンズが交換できる」「撮影設定を自由に変更できる」 「個性的な写真が撮れる」といった事もポイントが高いことが分かりました。

大きな魅力である『レンズ交換に対してどんなイメージを持っているか?』を確認すると、 「色々な雰囲気の写真が撮れそう」「より自分が撮りたい写真を撮れそう」というポジティブなイメージもありましたが、 それよりも「お金がかかりそう」「持ち運ぶには重そう」「難しそう」というネガティブなイメージの方が 強いという事が分かりました。

一眼の魅力

一眼の魅力

レンズ交換のイメージ

レンズ交換のイメージ

これらの結果を踏まえ、ペンタックスが作る超小型一眼は、 「圧倒的に小型軽量な一眼」「高画質、本格一眼性能」「個性的な写真撮影機能」を柱とすることにしました。

レンズ交換できるのに驚くほど小さなボディサイズと、そのボディにバランスよく装着でき、 レンズ交換をより手軽で、存分に楽しんいただける小型軽量なレンズ。 その一方で、カメラとしての性能も疎かにせず、優れた解像性能のレンズとKシリーズで 培った画像処理技術による高感度性能と高画質画像の実現、ボディ内手ぶれ補正機構、 超音波式のダストリムーバル、高速連写、そして小型化する上での大きな難関であるストロボの内蔵などを、 小型ボディにできる限り盛り込もうと考えました。

さらに、個性的な写真が撮れることも重要であるとして、エフェクト機能の充実と、 それらの設定を瞬時に変更できる専用のダイヤル(クイックダイヤル)を設ける事も、 初期の段階から決めていました。また、ユーザーの方々がカメラを使いこなせるようになったときに、 次のステップとして撮影者のイメージ通りの様々な写真が撮れるよう、 デジタル一眼ならではのモードダイヤル・電子ダイヤル・フォーカスリング・ズームリングなど全てを備えた操作系として、 撮影時の設定を瞬時に、そして自由に変更できる事も重視した設計とする方針を打ち立てました。