鹿野 貴司 Takashi Shikano

鹿野 貴司
Profile
1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。
主な写真展:「Tokyo Sunny Day」2003年・コニカミノルタプラザ、「甦る五重塔 身延山久遠寺」2009-10年・キヤノンギャラリー銀座・日本外国特派員協会など、「Beijingscape」2010年・エプサイトギャラリー、「感應の霊峰 七面山」2012年・コニカミノルタプラザ、「山梨県早川町 日本一小さな町の写真館」2016年・新宿ニコンサロン、「しましま」2018年・GLOCAL CAFE IKEBUKURO、「明日COLOR」2020年・ルーニィ247ファインアーツ

https://note.com/shikanotakashi

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited

31mmの画角は日頃持ち歩いているRICOH GR IIIとほぼ同じ。一眼レフで使う31mmと、腕を伸ばして撮るGR IIIの28mm相当は、感覚的にほとんど変わらない。だからGR IIIのように、目の前の光景をシャープに切り取ることもできる。しかし重厚なK-1 Mark IIのボディにこのレンズを装着すると、GR IIIとはまた違った楽しみが生まれる。光学ファインダーでF1.8が生みだす立体的な像を眺めるのは、それだけで白いご飯が3杯食べられる(個人の感想です)。

一般的に遠近感の強い広角レンズでは、寄りが足りないと平面的になりがちで、写り込む要素も多いため散漫な写真になりやすい。31mmという焦点距離は、超広角レンズほど効果はないものの、それなりに遠近感が強くて個人的には使いこなしが難しいと思う。いわば撮影者の絵心や技術が問われるレンズでもある。

一方でF1.8という明るさもあり、前ボケを使って標準~中望遠のような心地よい奥行きも表現できる。構図の中で重なり合う要素をアレンジしつつ、遠近感を比較的自然に再現できるのは31mmという数値の妙ではないだろうか。まさに難しさと楽しさが紙一重で同居するレンズなのだ。もちろん定石通りに背景をボカし、主題を浮かび上がらせるのもいい。FA Limitedシリーズの味ともいえる周辺減光も効き、ポートレートなどは存在感が際立つ写真が撮れると思う。

旧来のsmc版とは光学系は変わらず、では描写がどこまで変わったのかはsmc版ユーザーの僕も気になるところ。実際のところ大きくは違わず、smc版のように開放F1.8では包み込むように柔らかく、絞り込むと鋭いキレ味を見せる。ただしHD版はsmc版より薄皮が一枚剥けたようなヌケの良さも感じる。smc版では開放から2/3~1段絞ったあたりに“うま味”を感じていたが、クリアなHD版では開放からその味が楽しめた。

またペンタキシアンには釈迦に説法かもしれないが、K-3 Mark IIIなどのAPS-C機に装着すれば47.5mm相当の標準レンズとなることも忘れてはならない。2つのフォーマットで常用レンズとして使えるというのは、二刀流というべきか、はたまたレンズにも働き方改革というべきか。シンプルだが引き出しが多く、FA Limitedのキャラクターをもっとも体現している一本だと思う。

Sample Images

PENTAX K-1 Mark II
×
HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited
by Takashi Shikano