1941年、東京生まれ。1969年にガラパゴスを含む中南米に最初の海外取材を行って以来、北極から南極まで野生動物を追い、五大陸を歩く。1年の大半を外国で過ごし、海外取材歴は現在まで60数回を数える。
日本写真家協会(JPS)会員 / 日本自然科学写真協会(SSP)会員
プロヴァンスと聞くと、アルルやアヴィニオンを思い出す人が多いと思う。つまり、ゴッホが描いた名画、「ひまわり」や「糸杉」「跳ね橋」の舞台となった場所である。しかし、私にとってプロヴァンスとは「ネコの楽園」なのだ。1995年、猫の写真を撮りたくてフランスへ飛んだ。フランスの友人が「フランスは農業国だから、どこに行ってもネコがいるよ」という言葉を信じて訪ねたのだが、猫は1匹も見つからなかった。悲嘆にくれながら迷い込んだところが、リュブロン地方の小さな村。小高い丘に作られた城塞のような村の石畳の路地は、時に車が入り込めないほどに狭かった。だが、その狭い道に入り込んだとたんにネコが見つかった。最初の1匹が見つかると、それからはおもしろいように見つかり、5日間の滞在で延べ100匹以上のネコに出会えた。
「プロヴァンスの猫」にすっかり魅了された私は今年の5月、6回目の訪問を果たした。
今までは銀塩カメラが主だったが、今回はPENTAX K20DにDA★16-50mm F2.8ED AL[IF]SDMとDA★50-135mm F2.8ED[IF]SDMの2本を携えた。何しろ50年前に最初に手に入れた一眼レフカメラがASAHI PENTAX SPだったので、懐かしいやら嬉しいやらで浮き浮きとして、マルセイユからメルセデス・ベンツのレンタカーでプロヴァンスへと向かった。
プロヴァンス特有の雰囲気を取り込みたかったので、近づけない猫は除いて、あまり望遠レンズは使わないようにした。レンズはさほど大きくはないので、1日歩き回っても重く感じることはない。50mmは75mm相当になるから50-135mmを付けていれば、猫を撮るのには不便はない。むしろ、ある程度の距離をとって背景を生かすには最適の長さとなる。それに背景のボケ具合もきれいだから、心地良く撮れるというものだ。2本とも超音波モーターのSDMレンズなのでAFも速く静かである点も僕には嬉しかった。
一説に「プロヴァンスは1年の300日は晴れている」とも言う。野にはポピー、窓辺には鉢植えに咲き乱れる花々を愛で、若葉のぶどう畑を渡ってくる風を肌に受けながら、手になじんだカメラを持っての撮影旅行ほど、楽しいものはない。