冒頭に述べたように、「GR」から「GR II」にモデルチェンジされても、古くからのGRシリーズと同じように大幅な変更はない。ボディデザインもイメージセンサーも、レンズも、操作系も同じまま。ただし、注目しておきたい改良点が5つほどある。
改良点の1つめは全般的な画質の向上だ。オートホワイトバランスのアルゴリズムを見直して、より自然で安定した色調に仕上がるようにした。従来のGRシリーズはややグリーンかぶりの傾向がみられることがあったが、そこも改善してナチュラルな発色に仕上がるようになった。とくに高ISO感度で色ノイズが大幅に少なくなったことは大いに評価したい。高感度の画像処理に長けていたペンタックス一眼レフ開発陣との協力作業の好結果だろう。
2つめの改良点としてはレスポンス向上やスピードアップをはかったことだ。バッファメモリーを増やすことで連続して撮影できるコマ数をアップさせた。旧「GR」がRAW撮影で4カットまでだったが、新「GR II」では10カットまで連続撮影が可能となった。最短撮影距離は「GR/GR II」ともに標準モードとマクロモードの切替式だが、じつは、ボディ背面のAFボタンを押すことでマクロモードに切り替えなくてもダイレクトに最短0.1メートルの至近距離までAFでピントが合わせられる"隠しモード"がある。「GR II」ではそのときのAF測距アルゴリズムを改良して「GR」より高速にAF合焦できるようにした。
改良点の3つめは、好みの色調の画像に仕上げてくれる画像エフェクトモードに新しいモードがいくつも加わって、従来よりもいっそう多彩な表現が可能となったことだ。人物の顔を検知して最適な肌色に仕上げる「人物モード」、空気感や透明感のある画像に仕上げてくれる「明瞭コントロールモード」、金属などの質感描写に適した「光沢コントロールモード」などなどが加えられた。こうした画像エフェクトはRAW で撮影したファイルなら、「GR II」のカメラ内で自由自在にRAW現像処理して仕上げることもできる。さらに、PENTAX一眼レフと共通の仕上がりにできる「鮮やかモード」や「雅(MIYABI)モード」も追加された。これにより、GR IIとPENTAX一眼レフカメラと同時に、あるいはサブカメラとして活用することが可能となった。
4つめは、「GR」から「GR II」になってのもっとも大きな変更点である。新しくWi-FiとNFCに対応することで、ワイヤレスのまま画像転送ができるほか、スマートフォンなどからの専用のアプリ画面を見ながらリモート撮影ができるようにもなった。「GR/GR II」のような気軽なスナップ撮影が主流のカメラに、はたしてリモコン撮影の機能が必要なのかどうか疑問に感じる人たちもいる。しかし、いっぽうでWi-Fi機能の搭載で手軽に画像転送したいと強く願っているGRユーザーも多くいる。「GR II」のWi-Fi対応は、そうしたユーザーの多様な要望にもきめ細かく応えようとしたものだ。
改良点5つめは、PENTAX外付けフラッシュと「GR II」に内蔵のフラッシュと組み合わせることで、内蔵フラッシュと単体フラッシュをワイヤレスで2灯以上のシンクロ撮影ができるようになったことだ。GRシリーズでは初の機能である。対応フラッシュはAF540FGZ II、AF320FGZ IIなどのPENTAXブランドの単体フラッシュである。
田中 希美男(たなか きみお)
フリーランスフォトグラファー。多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業。撮影分野は人物、風景、スナップなどを問わないが、車の撮影をもっとも得意とする。新型カメラやレンズのレポート、撮影ハウツウを雑誌などで解説。おもな書籍は、「デジタル一眼・上達講座」、「デジタル一眼・交換レンズ入門」(ともにアスキー新書)、「デジタル一眼レフ・写真の撮り方」(技術評論社)、「名車交遊録」(原書房)、「名車探求」(立風書房)など。写真展など多数開催。写真ブログ「Photo of the Day」やtwitter(@thisistanaka)で写真関連の雑感や情報を伝える。