満開となった桜の凛々しさが春の細雨を透かし美しい。比較的明るい柔らかな光に包まれ、花びら一枚一枚の立体感が際立つ。桜の質感描写には最適な光といえるが、そのぶん細部のディティールはシャープなピントで描きたい場面だ。超高画質645Dを共にすることで、つねに安心感をもって撮影に没頭できた。
ペンタックス645D・FA645 80~160ミリ・C-PL・F16オート(+1.7EV補正・1/15秒)・ISO400・画像仕上げ:ナチュラル・WB太陽光/静岡県身延町・4月上旬
春といえば桜の柔らかな色彩を描くことに悩むことも多いかと思われるが、むしろそれは645Dの際立つ解像感が発揮できる場面でもある。私は日頃カスタムイメージの「ナチュラル」を常用しているが、色特性としては赤味を若干押さえたひかえめな画像仕上げでもあるために、桜の派手な色彩というより落ち着いた控えめな赤味が出やすい。場面によっては桜色の本来の色彩を誇張することもあるために、赤味をわずかに加えた「雅(MIYABI)」もたまに使う。
似た画像仕上げに「鮮やか」があるが、他の色も含めて強く出る傾向にあるため、曇り空の冴えない天候時以外には設定していない。「雅(MIYABI)」は芽吹きの輝きも誇張することない緑色に再現でき、春の印象を重視する表現では効果的だといえる。ただどの画像仕上げを使っても、それぞれの画像仕上げごとに各種パラメーターの微調整ができるので表現者としては嬉しい限りだ。
645Dは14ビットの豊かな階調を備えている。これまで幾度か取りあげたD-Range設定の併用によって手にとるようなリアルな桜花の階調も再現できるだろう。
さまざまな春の色彩も自然感を重視した処理が望まれる。このカメラのユーザーともなればJPEGのみで撮影している方は少ないと思うが、繊細な自然の容姿を描くために解像感を最優先するとRAWでの撮影となる。私はDNG形式によるRAWデータに対応する現像ソフトで現像処理しているが、カメラ内機能としてRAW現像処理も手軽にでき、ほとんどパソコンと似た展開ができるので、機械が苦手というご年配の方にも配慮した優しい機能だと思う。
645Dを使い始めて早2年半となり多くの最新機種が登場するなかで、いまだに他の追随を許さない卓越した描写力を誇ること、そして、驚異のポテンシャルは本物だったのだと改めて感心してしまう。他機との違いでもある高画素での大型イメージセンサー搭載とローパスフィルターレスの効果は比較対象レベルになく、数値以上の描写力の差を現在も感じている。デジタル時代の“風景写真”をターゲットに生まれた645D にすべてを託す喜びは、かつてフイルムの645とともに撮影に没頭した頃と重なる。これからも私の絶対的な安心感を後押ししてくれることだろう。