入賞作品発表
「PENTAXフォトコンテスト2022」はPENTAXクラブハウスオープンを記念し、お客様への感謝と、PENTAXユーザー同士の交流、さらに写真に対する新たな楽しみ方を再発見する機会になることを願い、自由な感性で捉えた作品を募集いたしました。
審査員には第一線で活躍され、当社WEBサイトでも皆さまにお馴染みの写真家、鹿野貴司氏を迎え、去る1月10日(火)に厳正な審査を行いました。グランプリをはじめとして全12点の素晴らしい作品を選定いたしました。
入賞者の皆さまおめでとうございます。そしてご応募いただいた全ての皆さまへも改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。
ここに入賞作品を発表いたします。
なおPENTAXクラブハウスにて入賞作品展を開催いたします。ぜひ足をお運びください。
■PENTAXフォトコンテスト2022 入賞作品展
2023年2月16日(木)~2月28日(火) 11:00~18:00
休館日:水・日および祝日・弊社休業日
<審査員総評>
どんなフォトコンテストでも「何が/どうなった」の「何が(主語)」だけで、「どうなった(述語)」が感じられない作品が散見されるものです。しかし今回のコンテストはとてもレベルが高く、作者は何を伝えたいのかが感じられる作品ばかりでした。
さらに「何を(目的語)」「いつどこで(修飾語)」などが感じられて、長く見ていたくなる作品が選考を勝ち進みました。そうした作品はたとえば静的な風景でも、眺めるだけで風や音が感じられます。文法など関係なく一瞬で目をひく作品もありましたが、読み解くと美しい構文ができているものです。今回のグランプリ「コックピットの女神」はまさにそんな一枚でした。
一方で応募の多かった組写真は、この1枚だけなら…と思う作品が目立ちました。ひょっとしたら皆さん、プリントをする機会が少ないのでしょうか。組写真は見る人にストーリーを想像してもらうのがキモ。印象が重複しても乖離してもいけません。手を動かして写真を見比べたり、並べていく習慣をつけると、組写真でも単写真でもより精度を高めることができます。撮影も重要ですが、ぜひ自分の写真と向き合う時間を大切にしていただければと思います。
鹿野 貴司
入賞作品
グランプリ
抑えた色味も効いて、写真が光と影の芸術であることを再認識させてくれる一枚です。窓や鉄骨の構成美、白い空とそこへ切り込んでいく戦闘機、そして見守る人の影と、3つのレイヤーがきれいに重なっています。コックピットに座る女性パイロットが、引きの写真でも主役として輝いているのは、まさにこの構図の妙だと思います。
金賞
山岳写真も多くご応募いただいたのですが、一目で惹かれたのがこの作品でした。左下の登山者が効いているのは、雲や雪面のダークトーンがあるからこそ。階調のおいしい部分を見事に生かしています。風景画の巨匠ウィリアム・ターナーが、もしアルプスに登っていたらこんな作品を描いたかも、と思いました。
本来は3枚組なのですが、縦位置の1枚で金賞に選びました。老眼鏡や包丁さばきで説明しなくても、この1枚で十分「おふくろ」を表現できていると思います。ユージン・スミスの代表作「楽園への歩み」を彷彿とさせますが、それと大きく違うのは向こうに広がる青空と白い雲。おふくろさん、今日はどこへ行くのでしょうか。
銀賞
肖像権を気にされているのか、逆にマスク姿を写したくないのか、後ろ姿のスナップをたくさん見た気がします。その中で秀逸だったのがこの作品。気持ちいいほどの奥行き感が、この親子の明るく幸せな未来を連想させます。女の子が左手に重たそうな紙袋を提げる一方、右手は楽しそうに風船を掲げているのもいいですね。
富士山、満天の星空、そこに大きな流れ星。餃子・ビール・炒飯(あるいはラーメン)、あるいは31mm・43mm・77mmのような素晴らしいコンビネーションです。撮れた瞬間、井戸さんが夜空に向かってガッツポーズをしたり、帰宅して祝杯をあげた姿が目に浮かびます。していなかったらすみません。
写真でもちらっと見えますが、お遍路さんは「お大師さんと一緒」という意味で、笠やカバンに「同行二人」と記します。偶然出会ったおばあさんにお付き合いしたのか、期せずして同行二人になりました。また直線を俯瞰+縦位置で切り取ることで、八十八ヶ所の果てしない道のりを連想させます。すばらしい情景です。
銅賞
斜に被った麦わら帽子、首に掛けたタオル、ジャージに草履サンダル、そして精悍なおじさんの顔。そんな完璧なモデルが、広角で清々しいほどシンメトリーな構図に配されました。早朝の光が左から差し、おじさんに立体感と存在感も生まれています。たくさんの応募作品の中で、もっとも気持ちよく人物を写している一枚でした。
風景写真といえば彩度やコントラストが高めな作品が目に止まりがちですが、そんな中で静かに何かを訴えかけていた一枚です。時間帯か天候か、光はありませんが、それが静けさにつながっています。選考後に撮影データを拝見したら、単焦点の標準レンズを使われていました。浜田さんの丁寧かつ素直な姿勢が伝わってきます。
指差し確認は車掌さんかと思ったのですが、ワンマンの運転士さんでしょうか。形式張っていない駅員さんの右手に、誠実さや人間味を感じます。駅でよく見かける光景ですが、望遠の圧縮効果でシンプルでかっこよく一枚の作品に仕上がりました。何より驚いたのが、その先のミラー。きっちり車両の先頭部が写っているのです。
実は審査では左回りに90度回転した、縦位置の写真と思い込んで見ていました。そうすると帰りを待つ子供と、帰ってきた親の関係がもっとユーモラスでまるで人間の親子のように見えるのです。しかしながら正しい向きで見ると、これはこれで気持ちがいい。そして何よりタイトルが心を和ませてくれます。
PENTAXのカメラや、それを使う姿をモチーフにした作品もいくつかありました。そんなヨイショに左右されるほど僕の審査は甘くないつもりですが(笑)、この作品はスナップとして秀逸です。しっかり左目を開けてフレームの外を観察しているのは、親の教育が行き届いているのか、はたまた本人の素質か。想像が膨らみます。
U-25奨励賞
審査で僕もスタッフの皆さんも一番笑い、ずっと話題にしていたのがこの作品でした。濁流のような水の中に、満面の笑みの女性…の顔だけ。それでタイトルが「田舎の母」です。YouTubeやTikTokにおもしろさを求めがちなU25世代から、動画では決して表現できない写真ならではの表現を見せられたことがうれしいです。