赤城 耕一 Koichi Akagi

赤城 耕一
Profile
東京生まれ。エディトリアルではドキュメンタリー、ルポルタージュ。PR誌、コマーシャルでは人物撮影。カメラ・写真雑誌、WEBマガジン、撮影のHOW TOからメカニズムの論評、新製品カメラ、レンズのレビュー。写真集評、写真展評も行う。ワークショップでは撮影指導も行っている。使用カメラは70年前のライカから、最新のデジタルカメラまでと幅広い。著書に「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「銀塩カメラを使いなさい!」(平凡社)「ズームレンズは捨てなさい!」(玄光社)、「赤城写真機診療所 MarkII」(玄光社)、最新刊は「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)。

HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited

今回使用したのはHD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limitedである。鏡胴は金属製の仕上げで美しく、かつ軽量であることも魅力だ。七宝焼のフィンガーポイントも素敵なアクセントになっている。

35ミリ判の対角線の距離は約43mm。この対角線の距離と同じ焦点距離のレンズを「標準レンズ」とするという定義があるが、これに従えば、50mmよりも焦点距離の短い本レンズこそが「真の標準レンズ」ということになる。

PENTAX K-1 Mark IIに装着し、ファインダーを覗いてみる。なるほど、その自然な視角とパースペクティブは肉眼で周囲をさらっと見渡しているような感覚である。

自然な視角だが、絞り込めば被写界深度が深くなるので、パンフォーカス撮影やスナップ撮影にも使いやすい。逆にF1.9という大口径を生かし、絞りを開放値近辺に設定することで浅い被写界深度を得ることができ、ポートレートや雰囲気ある静物写真にも使いやすい。つまり、標準レンズらしく、被写体を選ばない万能性を持つ性格ということになるし、絞りの設定による変化こそが写真の個性的な魅力であるといえる。

本レンズはFAタイプなので絞りリングがあり、かつAF方式もカメラ内のボディ内モーター駆動によるものだ。あえて旧来の方式を採用したのでAF時には動作音がするし、フォーカスリングも回転する。

しかし、これらは欠点ではなく、レンズがしっかりと仕事をしているというパフォーマンスともとることができる。また筆者がまだ愛用しているフィルムのペンタックス一眼レフにも使用できるというフレキシビリティのある魅力は維持されたわけで、これほど嬉しいことはない。

旧タイプは発売時から長く愛用していることもあり、その数値性能だけによらない描写には関心していた。開放では軟らかく、かつ絞りこむことで像が締まるイメージがあるが、本レンズ描写の基本的な雰囲気も同じ。いわゆる「絞りが効く」典型レンズといえ、絞りの設定で異なる性格を持っている。

本レンズの使いこなしは絞りの設定による合焦点のシャープネスやコントラストの変化に加え、美しいボケ味の形の変化にも注目すべきだ。ちなみに開放時のコントラスト、逆光時の描写は旧タイプよりも明らかに性能は向上している。つまり、HDコーティングを採用したことで、43mmという焦点距離の本レンズはさらなる万能性を身につけ、「真の標準レンズ」により一層近づいたことになる。

Sample Images

PENTAX K-1 Mark II
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HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
by Koichi Akagi