フォトグラファーのユルゲン・フロイント氏がロケ地に選んだのは、氏とゆかりのあるオーストラリア、トロピカル・ノース・クイーンズランドにある大自然。この雄大なフィールドを自由に飛び回る鳥たちの姿を、どのようなかたちで写真に収めるのだろうか。
「野鳥撮影において最も重要だと思うのは、鳥たちについて深く知ることです。被写体のことを深く知ることはどの撮影においても当たり前のことかもしれませんが、野鳥の場合、種類や季節によって動きや容姿などが異なるため、理解を深めるのはとても地道で手間のかかる作業です。私たちも、オーストラリアの北東部に位置する、このトロピカル・ノース・クイーンズランドに暮らしながら、何年もの長い年月をかけて、特殊な鳥類がどこに生息しているのかを調べました。この地にどのような野鳥が生息していて、繁殖期がいつなのか、季節ごとにどのような渡り鳥がどこから来て、いつどこへ去っていくのか……。とにかく、この地を中心とした鳥たちの生息について調べ尽くしたのです。もちろん野鳥だけでなく、この土地の季節や気候に関する知識を深めつつ、地元の野生生物の専門家からもよく話を聞きました。そして、美しい鳥がいるだろうと思われる場所へと足繁く通いました。ときには、鳥たちを警戒させぬよう、隠れる場所を作ることも必要になります。数週間は隠れ場所をそのままにしておき、鳥がそれに慣れてから利用することで近付けるようになったこともありました。このように、野鳥の撮影は、どのような鳥がどこに生息していて、どのような生態を持っているのかを知ることでもあります。撮影の場所探しには、地元のガイドから話を聞くことも役立ちます。まずは自然を観察し、それから写真撮影の計画を立てることを心がけましょう」
90度ごとに4つのAFスイッチがレイアウトされた「HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW」。フォーカスプリセットモードや、コンティニュアスAF中に強制的にフォーカス位置を固定できるAFキャンセル機能の割り当てなど、野鳥撮影においても、より被写体を追いやすいための工夫が施されている。ユルゲン氏も撮影において、このAF/MFの切り替えを効果的に取り入れているという。
「撮影対象に合わせて構図を変えたいときに、その状況に応じてAFからMFによく切り替えます。ピント合わせなどでレンズに添えた手の動きが制約される場合は、カメラ本体の背面にある親指AFボタンを多用します。オートフォーカスは、小さくて動きの速い鳥に対して使うのに、とても効果的です。マニュアルフォーカスを使用するシチュエーションでは、風景の中で、比較的動きが少ない大きな鳥を撮影するときによく用いています」
広大な草原から、深い森の中まで。待機と移動が繰り返される野鳥撮影では、レンズの光学性能はもちろん、適度な堅牢性や、カメラと組み合わせた際のバランスなども重要なポイントになる。
「野鳥撮影の際、カメラには高いISO感度が必要ですし、レンズは暗い熱帯雨林の中でも、ピントがしっかりと合った画像が得られることが必要です。レンズ周りのつくりが丈夫なことも、とても大切です。そういった点からも、PENTAXのレンズにとても満足しています。例えば、三脚のジンバル雲台に取り付ける三脚座は非常に丈夫で、画角をしっかりと固定することができます。撮影対象をすばやく捉えるためにオートフォーカスが高速であることも必要ですが、この点も不満を感じたことはありません。PENTAX K-3と150~450mmレンズを組み合わせたときの重さは完璧なバランスになります。長時間のトレッキングで持ち運ぶのに重すぎず、また、軽すぎて揺れたり不安定になったりすることもありません。APS-Cフォーマットのカメラを使うことで、よりクローズアップ撮影をすることも、遠くにいる鳥を十分に捉えることもできました」
「この土地の森林や乾燥地帯にはさまざまな野鳥がたくさんいます。鳥たちはとてもカラフルで、見ていて飽きることはありません。静かな水中とは異なり、野鳥の観察や写真撮影を行っているときには音が聞こえます。鳥たちの鳴き声は耳に心地よく、鳥たちの色はとても美しく目に映り、まさに自然が作り出す天然のパレットです。写真におさめることも楽しいですが、まずは自然の世界に出掛けて、その美しさをできるだけたくさん体験してください。私たちはとても恵まれた時代に生きています。美しい場所へ簡単に行くこともできますし、現代のカメラとレンズの性能も日々進化しています。誰もが自然の姿をそのまま切り取り、残しておくことができるのです。野生生物は自宅の裏庭にいるかもしれません。さまざまなものに気付き、それらを尊重する気持ちが大切です。自然の美しさはあらゆるところに存在しているのです。」