Caplio R1
開発秘話:仕様実現への課題と解決あらゆる可能性の検討からはじまったレンズ開発
「開発は、あらゆる可能性を検討することからはじめました。今までのカメラづくりの常識に縛られず、どんなアイデアがあるかを考えたのです」
(レンズ設計担当:布野)
3群ズームの限界を超えたズーム比
ズーム性能を上げるためには、レンズの数を増やさなければならない。光学3倍ズーム(28mm-85mm)を備えた「Caplio G4 wide」、光学3.6倍ズーム(28mm-100mm)を備えた「Caplio RX」は3群ズームレンズ(同時に移動する複数のレンズを1つの群として数える)で対応できた。しかし、4倍以上もの倍率になると3群ズームレンズでは対応できなくなる。開発者たちは、これまで採用してきた3群ズームレンズから、4群ズームレンズ以上のレンズを採用することを選択した。しかし、4群ズームレンズになると従来の収納方式では、薄型ボディが実現できなくなる。
「そこで考えたのが、4群のうちのどれかひとつを他のレンズ群の列から退避させて収納するというアイデアだったのです」
2つの機能を併せ持つバネ
「収納の方針が決まり、モーターなどのレイアウトを考えはじめました。ただ、起動時間を短縮しなければならないという課題もありましたので、退避させるレンズの動きをよりスムーズに、それでいてしっかりと安定したものにしなければならなかったのです」
レンズを退避して収納するためには、ほかのレンズと連動して移動させるための縦方向の動きと、レンズをスライドさせる横方向の動きの両方が必要となる。起動時間を短縮するには、この両方の動きをスムーズにこなさなければならない。しかも、レンズが光軸からずれてしまってはカメラとして機能しなくなるので、安定した動きも要求された。
これらの課題を解決したのが、トーションバネ(横から見るとV字型のバネ)と圧縮バネ(コイル状のバネ)の2つの機能を併せ持った特別なバネであった。
「このような2つの機能を持たせたバネは、普通はあまり使わないのですが、思い切って試作をしてみました。」
試作の結果は良好。「スムーズで安定した動き」という命題をクリアすることができた。