写真家 馬込将充による初の個展。最新作のシリーズ「輝く荒野へ」より、カラー作品18点を展示。
リコーイメージングスクエア東京
「輝く荒野へ」馬込将充
作者 | 馬込将充 |
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作品名 | 「輝く荒野へ」 |
会期 | 2022年3月3日(木)~3月28日(月) |
時間 | 10:30~18:00(最終日16:00終了) |
定休日 | 火曜日・水曜日 |
入場 | 無料 |
会場 | リコーイメージングスクエア東京 ギャラリーA |
連絡先 | 〒163-0690 東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービルMB(中地下1階)MAP ℡0570‐006371 |
作品コメント
たとえば、高度経済成長期に子ども向けの雑誌に多く描かれたSFチックな未来予想図。
私が幼年を過ごした90年代まではそういったものがまだ目に留まる場所にあって、夢のような世界や突拍子もない物語の賑やかで活気に満ちたイメージを眺めていた。
過去に描かれた未来、誰かが憧れたはずの世界、その過程に今日生きている私。
ただ、出来事や時代背景と関係なく私は子どもでいたから、本当にこんなことが起きる日が来るのだろうかという想像が大切だった。
私は私の知り得ないことについて思考するようになった。
知り得ないこと̶それはあらゆる場所に存在していた。とくに、私の手ではどうにもならないことや喪失の機会に直面した時、それを強く感じる。
2011年の3月11日、東日本大震災で私の街は液状化の被害に見舞われた。埋立地の街は、遠浅の海のようになって、傾いた電柱や建物は夕陽に照らされている。かつて海だった街、知識でしかなかったことが目の前の実体になっていた。
写真には写るものしか写らない。視覚以外のものを写せない。そしてその視野は私の主観から逃れられない。冷静なドキュメンタリーは成立しない。記憶と記録は曖昧でしかない。
私は、写しきれない背景に繋がるための写真を撮りたいと思うようになった。断定や答え、私がどう思ったかよりも経験や思考、記憶や感情すべての結晶として今ここにいるあなた。その存在証明を何よりも大切にしたいと思った。
私の街、別れた恋人、死んでしまった友人、いまも私の側にいてくれる親しい者たち、往来ですれ違う数多の人。一面では語り得ない人の積層を一面でしか捉えられないならば、私はその背景に揺らめくものに目を凝らして写真を撮っていたい。答えを出すことより、想像し続けることをしていたい。傷跡に残るのは痛みだけではないはずと祈りながら。
生活に降り注ぐ、過ぎ去ったものとこれから起きる全て。
私が、あなたが生まれて死ぬまでの全て。
過去も、未来すらも全てが今この瞬間に在るのだ。
私は写しきれない世界に繋がる回路を探している。
馬込将充
姫野希美氏推薦理由
人と建造物が共に在る光景――それは、現代の私たちを取り囲む環境としては当たり前のはずなのに、
馬込将充の写真からはその印象があたらしく立ち上がる。建造物は人が構築し人を護りつつ、同時に人を捕らえ閉ざすものにも見える。自らつくり出したものでありながら、枷ともなるもの。その窓のひとつひとつに生活を灯しながら、一方で固有のものを覆い隠す。
身体と物、個の存在と街とのあいだに生じる憧れと軋みを通して、馬込は世界を望み見、向き合おうとする。そこに静かに写し出される痛み、ときに歓びは、関係性や時代の空気感を超えた重さをもつ。そして、その痛みさえもひとつの存在のように息づくとき、輝く荒野への足取りと、時間を貫く光が見える。
姫野希美
作者プロフィール
1993年1月8日生まれ。千葉県出身
2016年武蔵野美術大学映像学科卒業
第13回写真1_WALL審査員奨励賞(菊地敦己選)
第14回写真1_WALLファイナリスト
写真展
2015年 第14回写真1_WALLファイナリスト展 (ガーディアン・ガーデン)