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K-3 Mark III Impressions

木村 琢磨

HD PENTAX-DA11-18mmF2.8ED DC AW F8.0、20秒、0.3EV、ISO100、曇天、風景

写真を撮るということ
僕にとって写真を撮るということは自己表現であり、自身の体験の共有である。特定のジャンルにこだわることなく自分が訪れた場所、出会った人、体験した出来事をカメラというツールを通して写真というコンテンツに変換して発信している。

HD PENTAX-D FA150-450mmF4.5-5.6ED DC AW F8.0、1/125秒、0.0EV、ISO400、太陽光、風景

元々は写真家ではなく映画監督や画家になりたいと思っていたこともあり、忠実性よりも自分の世界観を大切にしたいと思っている。
ジャンル問わずと言っても風景を撮影することが多い。人物撮影と違って「自分独りで撮影できる」被写体であり、気が向いた時に撮影できるのが魅力だ。風景写真と聞くと「絶景」を撮影しなくてはいけないのでは?とハードルを上げてしまう人もいるがそんなことは全くない。「目の前にある景色」を自分のフィルターを通じて写す、それだけで風景写真は成立する。太陽の光、植物の造形美、自然が生み出す色…自分が心惹かれたもの、瞬間を写すのが実に楽しい。
写真を撮ることで自分の記録にもなる。自分の気持ちが一枚の写真に閉じ込められていて、見返せばその時の感情や情景が蘇ってくる。まさに過去へのタイムマシーンだ。

K-3 Mark IIIとの出会い
初めてK-3 Mark IIIを手に取った時「PENTAXらしいカメラ」だなと思った。手に取った時の一体感やファインダーを覗いた時の「感覚」がPENTAXのソレだった。

言葉で表すよりも感覚が先に伝わってきた。「これはいい写真が撮れそうだ」そんな気持ちにさせてくれた。
気になっていたのは…やはりファインダーだ。発表された時からファインダーには力を入れていたことがわかっていたので実際に覗いてみるのを心待ちにしていた。
最初にファインダーを覗いた時そのファインダーのサイズから「センサーサイズギャップ」が起きた。フルサイズのファインダーを覗いているのと同じ感覚。初めて一眼レフを手に取ってファインダーを覗いた時のあの感覚が蘇ってきた。写真を撮らなくてもファインダーを覗いてフレーミングするだけでも楽しいと感じるあの感覚。ボディサイズとファインダーの大きさのギャップがすごく心地良いのだ。ミラーレスカメラが普及してセンサーサイズ=ファインダーのサイズではなくなったが、この光学ファインダー特有の「電源を入れなくてもファインダーを覗ける楽しみ」は失われてしまった。もしかしたら「この体験」はPENTAXのカメラが最後の砦になるかもしれない。

K-3 Mark IIIの描写力と機動性

描写力と聞くとレンズの方が重要…ではあるが、そのレンズの能力を引き出すのはボディの役割だ。画素数は約2,573万画素と必要十分だ。
風景を撮影していても描写に不満は全くなく、ここまで繊細に写るのかと驚かされる。特に自分はパンフォーカスを多用する作風なので中央から周辺まできっちりと描写されている機材がベストだ。リアルレゾリューションも搭載されているので三脚を使ってじっくり撮影する場合はより高精細な一枚を狙うこともできる。
APS-Cセンサーを搭載、ということでボディサイズはフルサイズセンサー搭載のカメラと比較するとかなりコンパクトだ。グリップの形状やボタンの配置もちょうど良く、ファインダーを覗きながらの設定変更なども快適だ。

個人的にストラップをつけずに撮影することが多いので手に持って散策がメインとなる。そうなるとより手にフィットするカメラが望ましい。K-3 Mark IIIは体との一体感が高く、一日持って移動しても全く苦にならなかった。

被写体と対話する

HD PENTAX-DA11-18mmF2.8ED DC AW F8.0、1/125秒、0.0EV、ISO200、太陽光、風景

撮影をするときは被写体と対話をする様な気持ちで向き合う。人を撮影する場合を除いて、実際に被写体と会話をしながらということはないが、なぜこの場所に、この様な形に、この様な質感で?など被写体を観察しながら向き合う様にしている。答えが出るわけではないがその場所で撮影することの意味が生まれる気がするのだ。
光学ファインダーを通じて被写体を見つめるということは「生の光」を肉眼で受け止めての撮影ということになる。作られた映像ではなくレンズを通して入ってきたリアルな景色を見つめながらの撮影は作品の仕上げにも大きく影響してくる。

太陽を見ると眩しい、その「当たり前」を光学ファインダーでは実感できる。それも情報の一つである。風が強かった、寒かった、足場が悪かった、そんな情報を五感を通じて受け止めて仕上げに反映できればと思っている。
撮影をする場合可能であればJPEGとRAWと両方を残しておいて欲しい。
K-3 Mark IIIはカメラ内現像機能も充実しており、撮影したその場で仕上げることが可能だ。その場で感じたことをすぐに作品に反映できることはよりリアルなイメージを仕上げることにつながる。撮影前に設定を作り込み撮影することの楽しさに加えて、撮影後に作品を仕上げる楽しみと2度楽しむことができるのだ。特にシャッターチャンスを優先して撮影する場合はRAWで撮影しておくと良い。特に僕のメインの撮影スタイルは撮影の基本であるISO、シャッタースピード、F値の露出に関わる設定に主に注力して撮影、ホワイトバランスやカスタムイメージはRAWであれば撮影後に調整することが多い。設定を変えている間にも時間は過ぎていくため可能な限りシャッターチャンスを優先しているからだ。
人の気分は変わりやすい、今日良かった仕上げが明日の自分が気にいるとは限らない。
そんな時RAWで撮影しておくことで何度でも作品を作り直すことができるのだ。

smc PENTAX-FA31mmF1.8AL Limited F1.8、1/400秒、-2.7EV、ISO100、太陽光、風景

自分の色を求める
K-3 Mark IIIでは少し今までと絵作りの傾向が変わっていて、個人的にお気に入りのカスタムイメージ設定がある。
風景/彩度+2/色相−3/キー+1/コントラスト+1/コントラスト(明部)−3/コントラスト(暗部)−2/ファインシャープネス+3
風景を撮影する場合はこの設定をベースに撮影をして後はシチュエーションによって微調整を行う。
PENTAXのカメラで撮影すると目の前の景色がまるでアート作品の様な仕上がりになるのだ。特にアンダー目なシチュエーションでは最大限にその個性が発揮されると思っている。アンダー目に撮影することでより太陽の光を印象付けることができるし、太陽の光を探すのがとても楽しくなるのだ。僕は写真からではなくアート寄りの世界に憧れてきた人間なので忠実な写りよりも記憶色を再現することが好きだ。

最初に記述したカスタムイメージが「自分のフィルター」にかなり近い仕上がりで、光学ファインダーを覗いて肉眼で見た景色と、こういう感じで仕上がったらいいなという自分のイメージ、そしてカスタムイメージを通じて仕上がった一枚がイコールに仕上がる気持ちよさ。
カスタムイメージの感覚を掴むにはまずはライブビューを使って設定を作り込むといいだろう。ライブビューではリアルタイムでパラメーターが反映されるため景色を見ながら自分好みの設定を作ってみて欲しい。必ずどのシーンにも当てはまるというわけではないが光学ファインダーではその仕上がりをリアルタイムで確認することができない。つまり設定を変え忘れて「偶然そう撮れてしまった」という一枚に出会える可能性があるわけだ。その意外な仕上がりがもしかしたら自分のすごく好みな一枚になるかもしれないし、新しい扉を開いてくれる一枚につながるかもしれない。
写真には偶然性も大切だと思っている。その偶然性の一つに撮影設定も大きく関わっているのだ。

smc PENTAX-FA31mmF1.8AL Limited F2.2、1/15秒、-0.7EV、ISO100、太陽光、ナチュラル

そこにカメラがあるということ
K-3 Mark IIIはいつでもどこでも持ち出したくなる、そんなカメラだ。家の中やちょっとした散歩、気合を入れて遠出するときまでどんなシーンでも寄り添ってくれる。
写真はカメラがなければ写せない。持って出るのが面倒に感じてしまうカメラは写真機としては役割を果たしていないということだ。それは画質などのカタログスペックではなく手に取った時の感触やシャッター音、操作性、好きなレンズなど様々な要因が重なって初めて「持ち出したい」という気持ちにしてくれる。

smc PENTAX-FA31mmF1.8AL Limited F8.0、1/15秒、-0.3EV、ISO100、CTE、風景

遠くに行くほどいい景色がある…それは思い込みで身の回りにもたくさんいい景色があり被写体がありそれを探すのも写真の楽しみだ。光学ファインダーの面白さは「とりあえず覗いてみる」。

HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR F11、1/160秒、-0.3EV、ISO200、昼白色蛍光灯、風景
HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR F8.0、1/125秒、0.0EV、ISO200、太陽光、風景

ファインダーを通じて自分の都合の良い世界に切り取って物事を観察する楽しさは写真の原点の一つだ。自分だけの世界を切り取り、そして残すことができる。
PENTAXのカメラは不思議な存在だ。中身はもちろん、佇まいであったり物としての価値観を大切にしていることが製品を通じて伝わってくる。それが「使いたい」という欲求につながっている。せっかく写真を撮るなら楽しく撮影したい、使っていて楽しいかどうかもいい作品を残す上でとても大切な部分だ。PENTAXのカメラにある独特の「楽しさ」もスペックの一つである。

一眼レフの未来
一眼レフもミラーレスも写真を撮影する行為は変わらない。ただ撮影プロセスが全く違う。一眼レフの魅力はなんと言っても光学ファインダーだ。今見ているものと写った結果とのギャップが自分の新しい世界を引き出してくれることも多い。

そのギャップを少しでも埋めるための機能がデジタル一眼レフには搭載されているが、僕は基本的にマニュアルでの撮影を心がけている。自分でISOを決め、シャッタースピードを決め、F値を決め、その過程も楽しみ変えたい。そして何より経験値でカバーすることが楽しいのだ。
写真と肉眼では光を受け取るキャパシティが全く違うためギャップは必ず発生するのだ。それが写真の魅力であり、あの手この手でその差を埋めていくのもまた写真の楽しみでもあるのだ。
綺麗に写る、楽に撮れるというのは当たり前になってしまっている。反面、初めてカメラを手にした時に感じた「操作している楽しさ」がどんどん失われているのではないかと思っている。
僕に取ってPENTAXのカメラは写真を撮り始めたあの頃を思い出させてくれる。光学ファインダーを覗いて見た自分だけの世界、望遠レンズを付けて遠くを眺めて見た時の感動、そんな気持ちを思い出させてくれるPENTAXのカメラは今後さらに特別な存在として多くの人を楽しませてくれるに違いない。

Takuma Kimura
木村 琢磨

Takuma Kimura

木村 琢磨

フリーランスフォト・ビデオグラファー。 1984年12月5日岡山生まれ。地元広告写真スタジオに12年勤めたのち2018年に独立。
地元岡山県を主な活動フィールドに写真という言葉にとらわれず絵画や映画のような作風でジャンルレスな作品を制作。
最長12mのロング一脚を使った超ハイアングル撮影やドローンを使った空撮なども手がける。
TVドラマの写真監修やドキュメンタリー番組の撮影、デジタルカメラマガジンにて『図解で分かる名所の撮り方』連載中。
https://www.takumakimura.com

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