第10回
The Architect 【Beaver】 – 森の建築家
知れば知るほど面白いビーバーの生態
私の撮影エリアであるカナダ北西部やアラスカで水辺を散策していると、ビーバーの痕跡を見ることがとても多くあります。トレイル脇にはビーバーがかじって倒した木、かじっている途中の木、そしてカヌーで水上に出るとビーバーロッジと呼ばれる彼らの家をよく見かけます。道路を走っていると、水辺にビーバーダムを見つけることもしばしば。北米に生息するアメリカビーバーの数は現在1,000万~1,500万頭と推測されていますが、以前は1億~2億頭もいたと考えられています。激減した理由はヨーロッパからの入植者による毛皮目当ての乱獲。一時は絶滅の危機にあったと言われていますが、今日では保護が進み回復に転じています。
ビーバーがダムを築くことは皆さんご存知かと思いますが、このダムは上流に築いたビーバーロッジと呼ばれる巣の出入り口が水中になるように水位を調節するために築かれます。このためビーバーは「人間以外で唯一、自らの生活のために周辺の環境を作り変える動物」とも言われています。ダムやロッジは世代を越えて使用されるため、ダムは年月をかけて伸長し、現在確認されている世界最大のビーバーダムはカナダ・アルバータ州ウッドバッファロー国立公園で見付かった850mのものになります。
特徴的な板状の硬い尻尾は水面に叩きつけて仲間に危険を伝える役割と共に、脂肪を蓄える役割もあるといいます。水中では鼻と耳の穴を閉じることができ、およそ15分間も水中にいることができるそうです。知れば知るほど面白いビーバーの生態。今後もじっくりと観察を続けていきたいと思います。
プロフィール
花谷 タケシ
京都市出身。独学で写真を学び、1998年カナダに渡航。西海岸から東海岸まで車で横断した後、カナディアンロッキーで過ごす。ここで次第に熊に魅せられさらなる北の大地アラスカや極北カナダに撮影フィールドを移していく。2007年にカナダへ移住し、2010年よりユーコン準州ホワイトホース市を終の棲家とし定住。《人間》対《自然》ではなく、人間も自然の一部として他の生きものたちといかに《共生》していくかを模索しながら、極北の厳しい自然環境の中で生きる野生動物の姿を追い続けている。
オフィシャル・ウェブサイト:熊魂 yukon-bearspirit:
www.yukon-bearspirit.com
フェイスブックページ:
www.facebook.com/yukon.bearspirit
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