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第9回
EXPOSURE 3 - 露出を操る 3 【分割測光+露出補正の罠】

  • PENTAX K-5 + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
    散歩中のスナップのため、カメラは分割測光+プログラム露出にセット。一年で最も日の短い12月下旬の正午過ぎ。 構図内に太陽が入り川面が反射で輝く難しい状況だが、K-5の77分割測光はそのままで理想的な露出を導き出してくれた。「逆光だからプラス補正」などと思い込んで補正をかけたらオーバーになってしまう。

  • PENTAX K-5 + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
    客人を犬ぞり体験へ連れて行った際に、美しいオッドアイ(光彩異色症)のそり犬がいた。独りではない時はじっくり露出を決められないことも多いので分割測光にしておくことが多い。犬の顔は白いが冬の低い日差しが横から当たり、背景の雪は反射で輝く難しい状況にも関わらず、そのままで理想的な露出となった。

  • PENTAX K-5IIs + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
    世界最長の犬ぞりレース『ユーコンクエスト』の撮影。多数の観客がいるので一度陣取ると容易には移動できない。このカットでは完全な逆光でマッシャー(犬ぞり師)がシルエットになることもわかった上で、スポット測光+マニュアル露出で露出を固定している。分割測光でも大きく外さないかもしれないが、犬ぞりの進行方向へカメラを振っていくと太陽がフレームアウトするにつれ露出がバラつく恐れがあるためマニュアル露出が好ましい。

  • PENTAX K-5IIs + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
    こちらも散歩中のため、分割測光にて目に止まったワイルドクロッカスを接写。RAWからストレート現像の状態。悪くはないが、花なのでもう少し明るい方が良かった。その辺りは撮影者の好みや意図もある。RAW撮影時には現像時に調整出来る範囲に収まっていることが大切。このカットの場合は黄色が飛んでいないことが重要。

  • PENTAX K-3II + smc PENTAX-DA50-135mmF2.8ED[IF] SDM
    【調整前 – ストレート現像】冬の斜光が山肌に美しい明暗のコントラストを描き出していた。頭の中ではモノクロの高コントラストな画をイメージしつつ、その素材として明部から暗部までディテールを撮りこぼさないようにスポット測光で丁寧に露出を決める。飛ばさぬように、潰さぬように。

  • PENTAX K-3II + smc PENTAX-DA50-135mmF2.8ED[IF] SDM
    【調整後 – Adobe Lightroomにてモノクロ現像】素材がしっかりしていればそこから調整出来る範囲も広がる。飛んだり潰れたりして情報が記録されていないものはどうにも出来ない。ゆえにカメラ任せにはせず、明暗のどこからどこまで記録出来るのかをきちんと自分で測って設定したい。最終的にイメージ通りに仕上げることができた。

「カメラに測らせる」のか「自分で測る」のか

自動露出の進化は止まるところを知りません。昨今のペンタックス機では 『約8.6万画素RGB測光センサー』搭載機が増えてきました。これの意味するところは、この測光センサーによる分割測光はかなり細かく画面内の「明るさと色」の分布を測り、なおかつ「形や動き」まで認識しているということです。明るさの分布を大まかに測っていた分割数の少ない旧来の分割測光とはその演算の複雑さも別次元でしょう。古いカメラであれば、使っているうちに分割測光の癖がわかり、経験を元に露出補正をかけるという方もおられたと思います。しかし分割測光が進化すればするほどカメラの導き出す露出は適正となり、露出補正する必要性がなくなっているはずなのです。複雑な演算はもはやブラックボックスの中であり、なぜその露出なのか撮影者さえもわかりません。つまり「基準が不透明」なのです。自分で測っておらず「基準が不透明」な分割測光に対して勘で「プラスだ、マイナスだ」と補正をかけてみても狙った結果は得られず迷宮に迷い込んでしまうかもしれません。「カメラに測らせる」のか「自分で測る」のか、その根本を誤っていては「何に対して補正をかけているのか」がわからない罠にはまってしまうのです。一方で、デジタルカメラであれば撮影画像をすぐに確認できるので、確認して「暗い」「明るい」と補正をかけて撮り直すやり方もあると思います。注意しなければならないのは、背面液晶で確認している画像の見え具合はその場の環境光によって変わってくるという点です。ヒストグラムも確認した方がよいでしょう。

カメラメーカーは、露出のことなど全く知らない初心者から露出を自分で操るプロまでが使えるように、あらゆる機能をカメラに盛り込みます。しかしそれらの使いこなしは複雑過ぎて、カタログや取扱説明書で説明しきれるものではありません。カメラメーカーが行うのは「機能と操作の説明」であって、写真が撮れる原理や理論の部分は使用者が自ら学ぶべき部分なのです。「たまたま撮れた」のと「狙い通りに表現出来た」のでは、見る人にとっては同じでも撮影者の悦びは雲泥の差です。感性は理論を伴ってより輝きを増すと言えるでしょう。

K-3以降搭載機が増えてきた『約8.6万画素RGB測光センサー』。もはや明るさだけに留まらず、色や形、そして動きまでも検知して解析されている。測光をカメラに任せるのか自分で行うのか、状況に応じて使い分けたい。

プロフィール

花谷 タケシ

京都市出身。独学で写真を学び、1998年カナダに渡航。西海岸から東海岸まで車で横断した後、カナディアンロッキーで過ごす。ここで次第に熊に魅せられさらなる北の大地アラスカや極北カナダに撮影フィールドを移していく。2007年にカナダへ移住し、2010年よりユーコン準州ホワイトホース市を終の棲家とし定住。《人間》対《自然》ではなく、人間も自然の一部として他の生きものたちといかに《共生》していくかを模索しながら、極北の厳しい自然環境の中で生きる野生動物の姿を追い続けている。

オフィシャル・ウェブサイト:熊魂 yukon-bearspirit:
www.yukon-bearspirit.com
フェイスブックページ:
www.facebook.com/yukon.bearspirit

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