人物撮影の現場が多い私にとって、被写体とのコミュニケーションは欠かせないが、コミュニケーション以前に、使用するカメラのサイズやシャッター音の大きさによって威圧感や緊張感を生んでしまうことがごく稀にある。小さな子供や撮影慣れしていない新人モデルなどは特にそうだ。
しかし、このPENTAX K-1 Mark IIに触れた時、そういった心配はいらないと感じた。

フルサイズでありながら驚くほどコンパクトなボディと心地よいシャッター音で、被写体は警戒心を解き、レンズの向こう側にいる鑑賞者、顧客や読者にリアルな眼差しを向け、次第に撮られていることを忘れているかのような何気ない自然な佇まいも見せてくれる。小さすぎず、軽すぎず、手の平がちょうどフィットし、右手の5本の指でしっかり支えることができるグリップ。光学ファインダーを覗くと、大きくクリアな視界の中に被写体の姿が見て取れた。大口径レンズを装着した際の全体のバランスも非常に安定している。

ダイヤルやボタンの配置も絶妙で、ちょっとした指の動きで、ダイヤルを誤操作してしまう心配もなかった。それでいて、グリップを握ったまま無理なく指が届く範囲にすべてが配置されていることに感心している。

また、ポートレート撮影では撮影のレスポンスも重要なポイントのひとつだったが、シャッターを切ってからプレビューまでのタイムラグがなく、画像の拡大縮小はダイヤル操作でスムーズに調整できるため、仕上がりを撮影チーム全体で即座に共有できた。

髪の毛のツヤや繊細さ、まつ毛の先端までリアルに写し撮る解像感、唇や肌のキメの細かさといった質感まで見事に表現されている。
AF速度、範囲ともにPENTAX 645Z、PENTAX K-3の比ではない。

体感的にもテンポよく撮影できたので、お子さんの撮影にも適していると感じた。
ぜひPENTAX K-1 Mark IIで存分にポートレート撮影を楽しんで欲しい。

PROFILE
井出 眞諭(いで まさつぐ)
立教大学経済学部経営学科卒業後、スタジオワークを学びながら、ロケアシを経て、独立。
音楽雑誌やWEB媒体でアーティストを撮り始め、CD ジャケットやドラマのポスター、著名人のポートレート、ビューティー、ルックブックなど多方面で活動中。
リコーイメージングスクエア新宿やEMON PHOTO GALLERY など展示多数。
COMMERCIAL PHOTO New Generation Photographers 2012 選出。
PENTAX K-S1のカタログほか、カメラの書籍にも携わる。
PENTAX Kシリーズで長年ポートレートを撮り続けてきた。
http://masatsuguide.wix.com/idephotography