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PENTAX Q 開発ストーリー

レンズ交換式デジタルカメラとして世界最小※のPENTAX Q。 小ささと多機能を両立させる、そのデザイン開発に込められた思いをご紹介します。

※レンズ交換式デジタルカメラにおいて、2011年10月1日現在

検討初期

Qのデザイン検討は、実はメインターゲットユーザーや基本コンセプトがはっきりと固まっていない 段階から開始しました。スペックがカメラサイズに与える影響は非常に大きいわけですが、 スペック決定を後回しにして、多くのデザイナーが「こんな形状にしたら愛着が持てるのではないか」 「ここまで大きくしてしまっては意味がない」といった議論を積極的に行ってきました。極端に高さを低くし、 上部に電子ビューファインダーを内蔵する出っ張りを設けた「auto110」のようなデザイン案もありました。

それらの具体的なデザイン案のモックを多数作成して議論を行い、方向性を少しずつ絞っていきました。 その後、定量調査を行った上でメインターゲットを決定し、最終的なスペックの優先順位付けに取りかかったわけですが、 その時点で非常に悩んだのが、液晶モニターのサイズです。

画質が良い点は、Qにとって最も重要なポイントの1つとしていましたから、 それを確認する為の液晶モニターも非常に重要だと考えていました。 一方で、できる限り小型なカメラにしたいという考えもあったので、 どちらをどこまで優先するかで社内でも意見が分かれました。

最終的には、実際に入手可能な液晶モニターを使ってメカ設計を行い、 それぞれでモックを作成してカメラサイズを確認するとともに、それぞれの液晶モニターに画像を表示して横に並べ、 液晶の画質の違いの確認も行いました。

その後何度も議論した結果、3.0型でアスペクト比3:2のタイプに落ち着いたのですが、 最初に液晶モニターのサイズをどうするかと悩み始めてから決定までは、何ヶ月も費やすことになりました。

液晶サイズ検討用モック
液晶サイズ検討用モック

課題

Qでは、一眼に憧れを持つコンパクトデジタルカメラユーザーを、主なターゲットユーザーとしています。 我々が想定したユーザーの方々は、シャッタースピードや絞りなどを自由にコントロールできるといった、 いわゆる一眼の「奥深さ」に魅力を感じられている一方、自分には「難しそう」という、 相反する思いが購入の障壁になっていました。

Qのデザインを進めていくにあたり、まず「奥深さ」を視覚的に感じていただけるよう、 一眼レフと同様にモードダイヤルや電子ダイヤルを搭載することを前提としました。

加えて、個性的な写真を簡単に瞬時に撮影できるよう、 画づくりをコントロールするためのダイヤルを新設することにしたのですが、 小さなボディにダイヤルを3つも備え、なおかつ難しそうな印象を抱かないという企画要求を満たすデザインの実現は、 非常に困難を伴うものでした。

当初、モードダイヤルや電子ダイヤルを大胆に前面配置したデザイン案などもありましたが、 難しそうな印象が強いという否定的な意見が多かったため、不採用となりました。 他にもカメラをホールドしながら瞬時にダイヤル操作ができ、 しかもダイヤルが主張しすぎないようグリップ内に埋め込んだ配置なども考えましたが、 ホールドしている際に不用意に回転してしまう事が懸念され、これも採用には至りませんでした。

方向性が定まるまでに、実に様々なデザイン案を検討したのですが、 中には見た目の印象を優先して2つのダイヤルしか搭載されていない案もありました。 また、ダイヤルの配置もさることながら、ボディを極限まで小型化する上でグリップ性能を如何に確保するかも、 困難な課題でした。PENTAXは、長年に渡って小型化に取り組んできましたが、 小さなボディに機能性と操作性を確保しつつ、見た目の印象まで大事にしなければならないということで、 Qのデザイン検討は困難を極め、多くのデザイナーが最後まで悩み続けたのです。

  • 前面にダイヤルを配置した案1
    前面にダイヤルを配置した案1
  • 前面にダイヤルを配置した案2
    前面にダイヤルを配置した案2

こだわり

このように複数のデザイナーが最良のデザインをイメージして悩み、考え続けたQのデザインですが、 最終的にQを担当したデザイナーは、想定ユーザーを『コンパクト機からのステップアップユーザーとは言っても、 遊び心に満ち溢れ、自分らしさを大切にされる方々』と考え、 手にしたユーザーの気持ちを高められるようなデザインにする事を念頭に置きました。

そして、マグネシウム合金による高品位で凝縮感のあるボディ、アナログ感や精巧感が伝わる操作部材など、 様々なこだわりによって、手にされた人が所有する喜びや操作する心地よさを感じて欲しいとの思いを Qのデザインコンセプトにしたのです。

特にこだわったのが3つのダイヤルで、これらをデザイン上の象徴的な特徴にしたいと考え、 操作がし易いだけでなく高品位なダイヤルに仕上げる事も重視しました。

さらに、上に伸びるように円筒面を前後に設け、その上にダイヤルを対称的に配置するデザイン案を考え出しました。 当初は、ボディ上面にダイヤルを2つも設けるスペースは無いと誰もが考えていたのですが、 グリップ自体を円筒にしてモードダイヤルを同心円状に配置することで、握りやすさを確保しながら、 バランスの良いダイヤル配置が可能になりました。 さらに、モードダイヤルにある程度の厚みをもたせることで高級感を演出するとともに、 グリップの円筒面と繋げることで違和感のないデザインに仕上げています。 一方で、前面に新設されたクイックダイヤルは、フォーカシングやズーミング操作を妨げず、 且つ見た目に難しそうな印象を与えないよう、ダイヤルの径・厚み・位置を慎重に検討しました。

  • グリップ部形状
    グリップ部形状
  • ダイヤル配置
    ダイヤル配置

また、ボディの中心にレンズがくるようにマウントを配置し、上飾り・革皺(しぼ)ラバーの前カバー・下飾りという、 往年の一眼レフと共通した外観構成によってクラシカルな要素を盛り込みました。 さらに、ただクラシカルなだけではなく、高級感の中にも可愛らしさ、懐かしさの中にも新しさ、 を同時に見せてくれるようなデザインにまとめ上げることで、 新たなセグメントの一眼であることのアピールも心がけています。

特にホワイトボディでは、全体に落ち着きのあるチリメン塗装を施しつつ、 前面のラバー部分には、強度の高い専用の特殊塗料を採用して意図的な光沢感を持たせ、 従来にはない新しさを感じさせるコントラストを生み出しています。

デザインへのこだわりは、カメラの操作部材に印刷されている文字の書体にまで及んでいます。 Qでは、ボディ・レンズ・アクセサリーの表記に、新たに独自開発したオリジナルフォントを採用しています。 長方形を基調とした直線的デザインで、線の先端に少し丸みを持たせているのが特徴の、 Qにあわせた精巧感に溢れるフォントデザインになっています。 このように全体の外観フォルムから操作部材、そこに印刷された文字の一つ一つにまでこだわりぬいた デザイナーの手によって、Qのデザインが完成しました。

  • ホワイトボディ
    ホワイトボディ
  • オリジナルフォント
    オリジナルフォント