その昔と言ってもフィルム全盛時代、ハッセルブラッドのマガジンにISO400のフィルムをつめ、+2増感現像でISO1600で使用するという撮影で、漆黒の闇を求めていた。
狙いは、北極星・富士と天の川、幾度となく延々とチャレンジは続いた。
富士の森羅万象を求めて登頂し、富士山頂、火口底に入り込んでは、魚眼レンズを使って火口底から星空に向かってシャッターを切る。ISO1600、F4、2分の露出が良い。
その頃、ISO1600はフィルムカメラの限界に達し、ある種特殊撮影であった。

その後、ハッセルブラッドは中判デジタルカメラPENTAX 645D~645Zへと変わって行く。世の中が変わるように自然と機材も変わり、さらにはPENTAX K-1~K-1 Mark IIも使用している。カメラの日進月歩は留まる事を知らない。
な、何とISO819000 それって一体何なんですか・・・・・?
相変わらず夜空の星と富士は、止める事なく撮影している。
K-1とK-1 Mark IIを、同時に漆黒の闇の中で富士と天の川を撮影してみる。
F 1.8、絞り開放、ISO1600、30秒で同時にシャッターを切る。同時にカメラのモニターに写し出されたのだが、目視で明らかな差を見てしまった。

アトリエに戻ってパソコンで星空を見てみると、ISO1600とは思えぬ画質で、さらに拡大を続けてもどこまでも滑らかな画面は、角ばった粒子(ドット)へと変わり消えて行った。

「操作感はいかがですか?」そんな問いは、デジタルオンチ、世間オンチの私に聞かれても困るのだが、すべては事もなげに写ってしまった。

PROFILE
大山行男(おおやま ゆきお)
1952年 神奈川県生まれ。
1972年 日本各地を放浪しながら、蒸気機関車の撮影を主として写真家活動を始める。
1976年 富士山の魅力にひかれ、富士山の撮影に打ち込み始める。
1984年 初の個展『富士千年』を開催。
1985年 山梨県忍野村に転居。
1990年 富士山麓・上九一色村富士ヶ嶺(現・富士河口湖町)に自らの手で家を建て、撮影拠点とする。
1991年 富士山からはなれ、アメリカ放浪。帰国後富士山を見つめ直す。
1993年 新たな気持ちで樹海撮影に取り組む。
1995年 撮影に大型の8×10カメラを使い始める。
2008年 この年からインド取材旅行開始。
2010年 日本写真協会賞作家賞を受賞。
2014年 タイムラプス8Kの撮影に取り組む。