PENTAX K-1 Mark II (以下Mark II) は見た目PENTAX K-1とそっくりなわけで、操作系はまったく一緒といっても良い。これが微妙にダイヤルが違っていたりすると、2台体制で撮るときなど、戸惑ってしまうこともある。特に星景の撮影時などは暗い中での操作となるので、微妙に違うのが一番困る。K-1とMark IIの間にはそう言ったことが一切なく、ストレスなく両機を使うことが出来る。

Mark II (K-1も同様)で便利なのが、やはりユーザーモードが5つあること。
U1: Star) ISO1600、F2.8、8秒、WB3500K、インターバル合成 (最短、2000回、2秒セルフタイマー)
U2: 15min) ISO100、F16、15分、WB3500K、1コマ撮影
U3: アストロトレーサー) ISO200、F2.8、4分、WB3500K
U4: スターストリーム) ISO6400、F2.8、8分、WB3500K、スターストリーム
U5: 手持ち) 絞り優先、シャッター半押しAF、手ぶれ補正ON
といった現場でセットするには少々メンドクサイもの・・・でなければ通常撮影時に戻し忘れると困るもの・・・をセットしている。通常の撮影は絞り優先なり、マニュアル露出なりで行い、星の撮影はユーザーモードで行うというのが確実かつ楽な運用だと思っている。少し設定について説明しておこう。

U1: いわゆるグルグル写真を撮るための標準設定。山の中で光害がなく、新月の場合はピントと構図だけ合わせてシャッターを押すだけで良い設定にしてある。半月の場合ISO800、満月の場合ISO400に変更するだけ。
U2: 20分までの長時間露光が可能なので、U1と同じ露光になるようセットしてある。シャッター回数が少ないのと、比較明合成で星のコントラストが強すぎる場合に使うためのモード。ただし、個人的にはほとんど出番はない。
U3: アストロトレーサーを使うためのモードで、露出は新月・光害無しの天の川に合わせている。
U4: スターストリーム動画を撮るための設定。星を明るく撮らなければ動画で星が認識できないため、明るめの露出設定。
U5: ライチョウやカモシカ、ヘリ、登山者などを被写体にする際の、とっさの手持ち撮影用。
こういった設定をしておくと、たまに撮りたいものや設定を忘れがちなものなどをカメラが覚えていてくれるので、とてもありがたい。ホワイトバランス等は個々人の好みでカスタマイズすると自分だけのMark IIになってくれると思う。

さてK-1からMark IIに変わって機能面はさほど変わっていない。ならば画質的にはどうか?高感度が良くなったといわれるが、個人的には露出アンダー目の描写が良くなっているように思う。銀塩時代の・・・アンダー目のポジのような描写をしてくれるのがとても気に入っている。従来のデジタルカメラだとアンダー目に撮ると階調が無くなってストンと黒つぶれする感じだったのが、かなり粘ってくれるのだ。渓谷などを撮る際は、目を擦ってもう一度モニターを見たりするほど良い描写をしてくれる。

この効果はアクセラレーターユニットによるものだと思う。というのもKPを使った際に、同時に使っていたK-1よりも色のコクが明らかに良かった経験がある。それはもう、KPにK-1が抜かれた瞬間だった。Mark IIにはもちろんアクセラレーターユニットが最初から搭載されていて、フルサイズの恩恵も有り、KPで経験したあのコクがMark IIにはある。そしてK-1はアップグレードで同等のコクを手に入れることが出来る。

現在、アップグレードしたK-1と共に、少々重いが2台体制で撮ることも多くある。私が少し心残りだったことは、K-1をすぐにアップグレードしてしまったために、2台体制で撮っても、Mark IIの優位性を感じられずに撮っていることだ。

PROFILE
村田一朗(むらた いちろう)
山岳写真家。1964年3月28日生まれ。東海大学海洋学部卒業後、某電機メーカー勤務を経てフリーとなる。デジタル黎明期より積極的に撮影を開始し、デジタルフォト2010年4月号にて山岳星景「無限軌道」を発表し、以後、星景の分野でも作品発表を開始した。ハード・ソフトの自作を得意としデジタルでしか表現できない作品の制作に力を注いでいる。K-5以降ペンタックスを使い始め、現在はK-1 Mark IIにて作品制作を進めている。