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町家で暮らす日々 27
写真と文 = 水野歌夕

七草粥

1月7日は、五節句の中の一番初め「人日(じんじつ)の節句」で、七草(ななくさ)を刻み入れたお粥(かゆ)を食べて一年の無病息災を願う。人日というのは昔、中国に正月1日を鶏(とり)、2日を狗(いぬ)、3日を猪(いのしし)、4日を羊、5日を牛、6日を馬、そして7日を人の日として占いを行う風習があったことに由来する。それが正月に若菜を摘むという風習や、邪気を祓(はら)うために七種の食材の入ったお吸い物を食するという風習と結びついて、今に伝わる七草粥の形になったらしい。

お粥は消化に良く、正月にお節(せち)を食べ過ぎ、お酒を飲み過ぎた胃腸に優しい。また七草には薬効もあり、冬の時期に不足しがちなビタミンの補給にも役立つそうだ。我が家でもこの日は、毎年欠かさず七草粥をいただく。祖母から教えてもらった七草粥の作り方は6日の晩に、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロの春の七草をまな板の中央に置いて、左端には、火箸(ひばし)とすりこぎ、右端には菜切り包丁を置く。用意が整うと皆で「唐土(とうど)の鳥が日本のとちに渡らぬさきに ななくさなずな ななくさなずな」と唄いながら火箸やすりこぎを鳴らし七草をトントントンと叩(たた)き刻む。このお囃子(はやし)が子どもの頃の私には、不思議な呪文のようでとても楽しかった。

人日の節句に限らず、節句はもともと、季節の変わり目に旬の植物、作物を食したり飾ったりなどすることによって邪気を祓う行事だ。これらの行事を暮らしの中に取り入れることで、現代よりももっと自然に寄り添って生きていた先人の知恵を受け継いで行くことが出来るように思う。それは京の町家暮らしを楽しむことにも通じている。

みずの・かゆう
写真家、エッセイスト。1969年京都市生まれ。佛教大学文学部史学科卒業。京都現代写真作家展において大賞、準大賞、優秀賞を受賞。2001年から一年間、京都新聞に写真とエッセイ「京都ろーじ散歩」を連載。初の写真集「京の路地風景」(東方出版)が好評。水野克比古フォトスペース「町家写真館」館長。
七草囃子(ななくさばやし)には、地方により歌詞に多少違いがあるらしいが、万病のもと、邪気を運ぶ鳥を追い払うという意味があるそうだ。不思議とインフルエンザを連想させる。
 
七草の寄せ植え。七草は最近、季節になるとスーパーでセット売りしているから簡単に手に入るが、ハコベラやゴギョウ、ナズナは今でも道端や田んぼの畦道(あぜみち)で良く見かける。
 
城南宮さんの七草粥。ご家庭で七草粥を作らない方には、京のいろいろな神社さんでふるまわれる七草粥をいただくのもお勧め。おいしいし、ご利益も期待出来そうだ。