ハンドリングに優れたコンパクトな設計ながら、超望遠3倍ズームに、高い描写性能、堅牢性も兼ね備えた、新開発の超望遠ズームレンズ「HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW」。その誕生に至るまでの経緯や、製品に盛り込まれた想い、魅力について、開発者へインタビュー。
商品統括部 商品企画部 企画2グループ マネージャー 岩崎 徹也
Kマウントデジタル一眼カメラ用として、新たにラインナップに加わった、ファン待望の超望遠ズームレンズ。はたして、その真価とは?企画を担当した岩崎に話を聞いた。
従来よりも色収差が格段に抑えられ、特に被写体との奥行きのなかに発生しがちな色ズレを大幅に解消しています。また、超望遠ズームレンズにありがちなピント合わせや、フォーカスのスピードといった使い勝手の問題を克服するため、レンズ本体に4つのAFボタンを配置しました。AFボタンに複数の機能を持たせることで、ボディ側にあるレリーズボタンとの組み合わせにより、しっかりホールドができ安定したピント合わせも可能になります。遠くで動く被写体を収めつつ、近づいた被写体を瞬時にフォーカスプリセットモードで撮影するなど、野鳥撮影とも親和性の高いレンズと言えるでしょう。
開発において、従来はレンズ設計チームと鏡胴メカ設計、企画チームでプロジェクトを進めてきましたが、本製品は、今まで以上にボディの開発チームや、UI(ユーザーインターフェース)の開発メンバーにも参加してもらい、時間を掛けて開発を行っています。そのことで、ボディとの通信や装着時の操作性など、レンズの“使いやすさ”について、多角度的な視点で開発を進めることができたと思います。例えば、随所にレイアウトされたAFボタンは、ホールディングした際の使用感を意識しています。縦横にとらわれない操作性に、ブレないしっかりとしたホールド感、そして、剛性を保つためにある重量のバランスは、ボディとの相性が合ってこそのもの。持ち替えてAF押す時の煩わしさを払拭するのが当初の目的でしたが、図らずとも利き腕にとらわれず、各々の構え方にマッチするレイアウトに仕上がっています。
レンズをゼロから開発するにあたり、はじめに3Dプリンタによる、モックアップという実寸サイズの簡易的な模型を作成します。それをもとに、重心の位置から、ボディとのバランス確認やレンズのホールド位置、ボタンの位置などを決めていきます。当社では3Dプリンタを早い段階から積極的に導入してきたこともあり、正確なモックアップを早い開発段階で確認することにより、部材のレイアウトやスイッチの距離などを決められ、細かなパーツに至るまで、より使い勝手にこだわった製品開発が可能となっています。以前から開発チームのなかでは「悩むよりも、まずはカタチにしてみよう」という合言葉があり、パソコン上での検討と並行して、造形を軸としたものづくりを行ってきました。はじめは丸や四角で話し合いを進めてきたものが、徐々に製品としてのカタチになっていくのは、作り手としても感慨深いです(笑)。
光学性能と操作性を高めることはもちろん、ユーザー目線での利点も随所に盛り込みました。レンズをカメラに装着して持ち運ぶ際にズームの機構が自然とせり出してしまう、いわゆる“自重落ち”を防ぐためのロックレバーや、着脱のしやすい新開発の三脚など。カユいところに手が届く、そんな風に使用する中で利便性を見出していただけると嬉しいですね。