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赤外線カメラ赤外線カメラ PENTAX KP IR

赤外線カメラ「PENTAX 645Z IR」
お客様事例 東京国立博物館 様

ライブビューでピント、露出を確認しながら撮影できる高精細デジタルカメラが
見たい物、知りたい部分を正確に写し出す

画像:ライブビューでピント、露出を確認しながら撮影できる高精細デジタルカメラが見たい物、知りたい部分を正確に写し出す

東京国立博物館様は、貴重な文化財を世界、そして未来へ紹介していくために、「保存」と「公開」という命題を調和させながら、日本の伝統と文化を継承していくことを使命とされています。学芸研究部保存修復課様は、館内の所蔵品はもちろん、全国各地の貴重な文化財の調査・修理を行っています。文化財の調査・修理に欠かせないのが赤外線撮影。その迅速で正確な赤外線撮影のために、PENTAX 645Z IRを活用されています。

課題と効果

【導入前の課題】

  • 赤外線撮影の場合はピントの位置がズレやすく、撮影した画像をモニターで再生して何度もピントやライティングの確認・調整をして
    補正する必要があった。
  • 撮影に時間がかるため、撮影効率を上げるのが一番の課題だった。
  • 撮影の状況に合わせた撮影条件設定の自由度が欲しかった。

【導入後の効果】

  • ライブビュー機能によるモニターで画像を見ながらピント調整が
    可能になった。
  • モニターを見ながら確認できるため、ライティング調整が
    楽になった。
  • 撮影時間が短くなり撮影効率が大幅に上がった。
  • ピントの合った画像とピントが合わない画像の仕分けが
    要らなくなった。
  • 中判カメラとしての操作性に優れ、思い通りに設定できる機能が
    赤外線撮影に活かせる。

導入の背景

文化財調査・修復のためには、肉眼に加え「別の目」が必要。
赤外線撮影において、目で捉えられない部分を正確に写し出す高画質が必要でした

画像:導入の背景1

文化財の保存修理を担う東京国立博物館・学芸研究部保存修復課様。
文化財の保存修理には、事前に正確な調査が必要になると、調査分析室長の荒木臣紀様は語ります。

「保存修復課の業務は大きく3つに分かれています。調査・環境・修理です。
当館の収蔵品は公称で11万6000件ですが、数え方次第では100万点以上とも言われています。
年間で修理できる件数は100件です。つまり、総数を11万件と考えたとすると、今年修理して、次に修理できる機会は1100年先になります。ですから、修理だけに力を注ぐのではなく、まず作品の置かれている環境や、文化財自体の状態を正確に調査し、それに対してどう保存環境を整えるのかということを考えることが大変重要になります」

特に文化財自体の調査では、赤外線撮影で得られる正確な画像データが欠かせないと語ります。

「調査では、可視光の調査に加え、赤外線撮影や紫外線撮影、X線を使った撮影があります。
赤外線撮影には2つの目的があります。1つは見えにくかったものを正確に見るためです。〝木簡〟で、墨で書いた消えかかった文字をはっきりと読みやすく、読み取れるようにするためです。
もう1つは、文化財を修理する前に赤外線撮影をすることで、傷や素材の現状を把握するためです。
我々の目は、色によって実際の形がごまかされてしまうことがあります。例えば、昔の絹に描かれた掛け軸には、〝裏打ち〟に墨を塗った和紙を使っているものがありますが、裏打紙を黒くすることで傷が目立たなくなってしまうのです。
ですから、その作品の傷の形を的確にとらえるためには、色の無い世界が必要で、かつ、赤外線であれば、材質の違いによるコントラストが出てくるので、状態を正確に写すことができます。
そして撮影した赤外線の画像から〝損傷地図〟を作ります。修理後には、必ず修理した場所と処理の方法を記した報告書を書かなければならないからです。〝損傷地図〟は作品の状態を示す地図ですから、正確でなければなりません。
つまり、赤外線撮影で正確な損傷地図を得ることが、調査・修理の始まりになるのです」

導入による効果

ライブビュー・高精細画像センサーにより構図、ピント、ライティングなど作業フローがとても楽になりました

ライブビュー機能により、赤外線撮影の作業効率が向上したと荒木様は語られます。

「赤外線撮影において、ライブビューで被写体を見ながらピントの確認ができることは、ものすごい利点です。一般的にレンズは可視光撮影の波長に合わせた色収差で補正しているため、赤外光の波長ではレンズを通すとピント位置がズレてしまいます。そのため赤外線撮影の場合は、このピントの位置を補正する必要がありました。
例えば、これまでの撮影では、

①レンズの距離目盛でピント調整をして撮影。
②撮影した画像をWi-Fiでモニターに飛ばし、再生して確認。
③ピントが合っていなければ再度ピントを調整。
④さらに明るさのムラがあればライティングを調整。

上記の作業を5~6回繰り返してやっとピントが合う状況でした。
今はライブビューを見て、ライティングをしながらピントも合わせられるので、全く作業効率が違います。

画像:導入による効果

ライブビューは構図の決定にも役立ちます。画質を良くするには、画像の情報量が必要ですから、大きな作品、例えば屏風絵などは、一扇ずつ分割して撮影することが多くなります。そんなときにもライブビューなら構図の確認が楽なので、本当に便利になりました。
私共は限られたスタッフで、さまざまな業務と並行して撮影業務を行わなければならないため、効率的に赤外線撮影ができるのは、本当に魅力的です」

「以前の機種と比べると、画質が非常に良くなり、歪みが少なくなっているのを実感します。それはレンズの性能もあるかもしれませんが、大型CMOS画像センサーの影響が大きいと思います。〝損傷地図〟作りに正確な画像は欠かせません。
高精細大型液晶モニターでは、撮影した後に画像をすぐに確認できます。以前の機種では、モニターでは何がどこに写っているのかわかりづらく、実物と見比べながら確認していました。
ライブビュー撮影も撮影結果の確認も、モニターで完結するので、そこは大きいところです」

選定のポイント

モニターで画像を見ながら撮影できるライブビュー機能が決め手。
PENTAX中判カメラとしての使用感、レンズとのマッチングも最高でした

荒木様に、PENTAX 645Z IRを選定した理由を語っていただきました。

「PENTAX 645シリーズの交換レンズや、アクセサリーを使えることはもちろんですが、決め手は間違いなくライブビュー機能です。ライブビュー機能は、高精細大型液晶モニターや、大型CMOS画像センサーなどの機能を活かすためにも欠かせない機能だと思います。
さらに、PENTAX中判デジタルカメラとしての使用感の良さがあります。見た目よりも軽く、握ったときのグリップ感も非常にいいですね。触った印象の安心感がすごくあります。
レンズは基本的に55mmを使っていますが、必要に応じて90mmマクロを使います。
以前は大判サイズのデジタルカメラも使っていましたが、大きいため取り回しが大変でした。パソコンで操作しなければならないというのも不便だったのです」

可視光では見えにくいが赤外線撮影では輪郭が把握できる

(目の周り、鼻筋、口周り、首周りなど)

画像:可視光線域撮影

可視光線域撮影

画像:赤外線域撮影

赤外線域撮影

[国宝] 普賢菩薩像(ふげんぼさつぞう)
平安時代・12世紀
東京国立博物館蔵

撮影データ
F:8、S:3秒、赤外線投光器(浜松ホトニクス社製)3灯、フィルター:富士フィルムIR88

今後の展望

赤外線撮影の特長を活かして様々な用途で活用してみたい

「以前、文化財の調査における赤外線撮影の可能性について、青銅器の研究者と話したことがあります。
例えば鋳造したばかりの青銅器は熱を持っています。しかし、どれくらい熱いのか、どこが特に熱いのか、また冷め方などは、目で見ることはできません。
しかし、赤外線で撮影することで熱の状態を見ることができますから、そうした調査に使うことも可能ではないだろうかということでした。
また文化財の修理で〝剥落止め〟というのがあります。剥落している空間に薬品を入れて接着する作業ですが、接着剤がどこまで入っているのかわからないという課題がありました。しかし、薬品の流れを追うことができれば修理により正確を期すことができます。その作業にも赤外線撮影が使えるかもしれません。赤外線カメラは熱に反応しますから、空間に少し温めた接着剤などを流し、その熱を赤外線撮影で撮影することができれば、剥落の空間を通っている接着剤がどこまで流れているかがわかるというのです。このようにさまざまな用途で赤外線撮影の可能性があると思います。
屋外・出張先など様々な場所で赤外線撮影をする時にも、PENTAX 645Z IRは取り扱いやすく便利です。正確な赤外線撮影が可能で、作業効率も高いPENTAX 645Z IRを活用しながら、今後さらに赤外線撮影で調査の幅を広げていこうと考えています」

画像:今後の展望

お客様プロフィール

独立行政法人国立文化財機構
東京国立博物館 学芸研究部 様

■業種:
博物館(職員数:99名)

■主な業務内容:
日本を中心として広くアジア諸地域にわたる有形文化財の収集、 保存、修理、管理、展示、調査研究、教育普及事業等。

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