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K-3 Mark III Impressions

金子 裕昭

〝ついにやって来た〞K-3 Mark III…

K-3と共に、幾度となくアフリカ、タンザニアのサバンナを駆け回ってきた。
果てしない大草原にテントを張り、相棒と一心同体になって取材を行ってきた。
大空の下、灼熱、雨、振動、埃だらけの厳しい大自然の中を、一緒に戦い続けてくれた。
そして、何にも代えがたい素晴らしい瞬間、野生動物たちの命の傑作を残すことができた。

私が撮りたいもの、それは「そこに息づく生命のドキュメント」。
野生動物たちがまるでポーズを取ったような雰囲気ではなく、躍動する生命たちのありのままの営みを捉えることだ。
彼らと同じ目線、同じ気持ちで伝えていく。それが、難しくも最高に面白い。

ついに!新しい相棒「K-3 Mark III」との作品づくりが始まった。
挑戦したいことを思い描く今、楽しみは尽きない。

遠いアフリカ、大都会の東京、何処にでも存在するすべての「命」の物語。
難しいことは、野生動物たちは気の向くままに動くので、その瞬間、その瞬間を先読みして、ファインダーにおさめなくてはいけない。
当たり前だが、ヌーもタカも、こちらの都合なんて知ったこっちゃない。

撮影は、自身でフィールドを歩き回り、被写体となる野生動物を探すことから始まる。
ただやみくもに歩いていてもダメで、相手の生態を知ることは欠かせない。
時間帯、天気、あらゆる環境を考えて、目だけに頼らず、周囲の音、風向きを全身で感じる。
取材を行うその日その日ごと、また季節ごとに、フィールドの「いつもと違う点」を見つけていき、変わりゆく自然たちの変化を、頭に叩き込むのだ。
チャンスに出会えるのはごくわずか。
その一瞬にかけるまでのプロセスは大切な創作時間だ。

そして、待ち焦がれていた時がやってくる。
太陽と雲の位置を確認し、ゆっくりとカメラを構える。
やみくもにシャッターを切るのではなく、相棒と一体となって、被写体、光り、背景の組み合わせを考えた「完成された作品イメージ」を創り出しておく。
K-3 Mark IIIのファインダーの中には、自分の肉眼で見た画と同じ、その完成図の色彩がそのまま存在している。
それはまるで、そこに躍動する「命たち」と見えない一本の糸で繋がっているかのような感覚だ。

また、K-3 Mark IIIはファインダー倍率が上がった分、より一層細部まで見やすくなった。
自分が捉えたそのままの瞬間、野生たちの吐息を、たくさんの人に見てもらいたい。

早朝、野生動物たちの声が聞こえてきた。今日も相棒を手に、新しい無限の可能性に胸が高鳴る。


K-3 Mark III ✕「プロセスを愉しむ」「感じた色」「被写体との対話」

“野生動物たちの言葉”… 
相手は野生に強く生きる命たち。撮影プロセスの中で、彼らの生態を追い続けていくうちに、私は彼らのドラマの視聴者となる。彼らが語りかけてくれるメッセージを、どう表現するかは自分次第。美しくも、切なくも、その一瞬をどう切り取り表現するか、その考察は難しくも愉しい時間だ。カスタムイメージの機能を最大限にひきだし、周りの風景、色、空気感を、どう操るか、そこに無限大の可能性を感じる。

“二度とない瞬間”… 
何日も取材を続けていると、被写体の性格も分かりはじめ、撮りたい画の創造力がより洗練されてゆく。目の前の野生動物たちを見つめながら、気候変動や開発の影響により、彼らが見られなくなってしまう日を想像することがある。だからこそ、私は右目でファインダーを覗き、残さなければならない瞬間に集中する。すると、K-3MarkIIIに鮮明に映っているすべての要素が、私と被写体を結びつけてくれる。そして構図、露出を決め、まるで被写体とシンクロしたような感覚の中で、シャッターを切ることができる。

“地球の色”… 
太陽、青空、山の木々は、一刻一刻ごとに様々な色合いを見せてくれる。その色が持つ確かな”印象”は言葉では置きかえられない。自然界が作り出す色には、同じものは一つもない。光学ファインダーを通して目に飛び込んでくるのは、命の強さ、儚さ、厳しさ、躍動感を描きだす無数の色たち。そのリアリティー溢れる色は、肉眼で見るのと同じまさに真実の色。この高揚感をぜひ体験して欲しい。

HD PENTAX-DA 560mmF5.6ED AW F5.6 1/800秒、0.0EV、ISO200、太陽光、風景、セレクトエリア拡大(S)

二羽のトビが河原に降り立った。「誰か(他の生き物)の食べ残しだろうか?」そこにあった残骸を啄み始めた。
AF.Cがどれほど進化したのかを試す良いチャンスが廻って来た。ゆっくりとしゃがみ込み、飛び立つところをローアングルから狙ってみる。
一羽のトビが糞をした…その瞬間「飛ぶ!」そう確信してシャッターを切る。
こちらに向かって飛んできたので「もしかしたらピント外したかなぁ…」という思いが一瞬頭をよぎったが、しっかりととらえてくれていた。

HD PENTAX-DA 560mmF5.6ED AW F5.6、1/1000秒、0.0EV、ISO100、太陽光、風景、オートエリア(S)

流し撮りSRを試してみたく河原を訪れた。まずは目的であるサギ類を探しながら、彼らが飛んできた際に背景が映える場所を決める。
待つこと数時間。下流から一羽のアオサギが飛んでくるのが見える…
カメラを向け、ピントを決めてゆっくりと流し、求めていた背景にやって来た瞬間シャッターを切る。
約一秒切ったところで指を離し、再度ピントを合わせてまたシャッターを切る。
この日出会えたサギは、この一回だけだったが、K-3 Mark IIIは十分に力を発揮してくれた。

HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR F5.6、1/160秒、0.0EV、ISO400、曇天、風景、セレクト (S)

フィールドに出ていると「撮りたい」と思う瞬間がたくさんある。私の場合、それは野生動物たちの動きだったり、表情だったりが多いのだが、この日はこの「景色」を目にした瞬間、撮りたいと強く思った。
深い谷底に太陽の光が差し込むことはが無いが、斜面は強い光が当たり燃えるような炎色に染まっているのだ。この眩い光と影のコントラストを表現したく「この場所に来ないかなぁ…」と思いながら通いつめた数日後、一頭の猿がやって来た。その瞬間、覗いたファインダーの中には、肉眼で見るそのままの「色」がそこに存在し、後はシャッターを押すだけだった。

HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR F4.0、1/250秒、0.0EV、ISO200、太陽光、風景、セレクト (S)

時間が止まることは無い…その流れていく時の中で、クローズアップしたい瞬間を封じ込めることを出来るのが、写真の魅力だと私は考える。
それは、ずっとシャッターを押していれば撮れるという事ではない。ファインダーの中にある被写体と通じ合うことが出来れば、おのずと被写体から「その瞬間」を教えてくれているような気がする。まばたきをしてる間に過ぎてく時間の中で、一瞬だけ見せる表情…そのほんのわずかな瞬間を撮るために「連続撮影H」を使った。

smc PENTAX-DA300mmF4ED[IF] SDM F5.6、1/200秒、0.0EV、ISO400、太陽光、風景、セレクト (S)

K-3を使用していた頃に「一つだけ改善して欲しい点を」と聞かれたら迷わず「測距点拡大」と答えただろう。野鳥をはじめ野生動物は、もちろんずっとそこに居てくれるわけでは無い。だからこそ、素早くイメージを完成させ、その場面に合わせた露出にシフトしてシャッターを切る訳なのだが、もう一つ重要なのは測距点を決めること。主役にピントを合わせるのは当然だが、それを引き立ててくれる周りの環境にも気を配りたい。ここでもたついてしまうと「逃げられた!」になりかねない。
K-3MarkⅢはその測距点が拡大され、実際に使用してみてシフトが格段にスムーズになった。
願い叶ったこの新しい相棒を、これから使い倒すのが楽しみだ。

Hiroaki Kaneko
金子 裕昭

Hiroaki Kaneko

金子 裕昭

1968年島根県津和野町生まれ
アフリカ タンザニアをフィ-ルドとして真の命の美しさ尊さを追い求め、野生動物達と同じ目線に立つべくサバンナにテントを張り、撮影活動に取り組む。延べ滞在日数は400日を超える。 又、近年は都内の身近な自然にも目を向け撮影活動の幅を広げる。著書に「生きる強さ」(青菁社)

https://photographerkaneko.wordpress.com/

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