僕は長らくの天文ファンである。大切な趣味であるし、星景写真は自分自身の表現でもある。星景に限らず長時間露光は、デジタルにおいてはノイズとの戦いだった。しかし、その戦いも終焉を迎えようとしている。PENTAX K-1ではしっかりとノイズを押え込んでいる。その結果、高感度でも約3,640万画素の高精彩を遺憾なく発揮する。フルサイズだからこそ実現できる低ノイズと高精彩なのだ。高精彩は、よく見たい、より詳細に残したいと思う自然な欲求を満足させてくれるが、その欲求をこれまで撮れなかった、撮ることが難しかった領域にまで広げてくれたのである。今や暗い空の少なくなった現実では、肉眼で捉えられる星も減ってしまった。しかし、肉眼以上に写し止められるPENTAX K-1を使って、子供の頃のような星空を見上げた感動を楽しんでいる。 その感動を支えるのはまず画質であるが、もう一端を支えてくれるのが、アストロトレーサーだ。GPS情報を利用し、星の動きに合わせてセンサーを動かす技術だ。肉眼で見ると星は夜空に止まっているが、高精細なカメラであるほど、数秒の露光でも星は動いて写ってしまう。それを解決するのに星空雲台などを使う。小さな製品も多いのだが、それでもフィールドの中では荷物になってしまう。PENTAX K-1なら、それもいらない。三脚だけあれば十分なのだ。これは、行動範囲を広げるのみならず、撮影チャンスも広げてくれる。雲が多くて晴れそうもない夜も、軽い機材ならちょっと撮ってみようかという気になるものだ。 そこでさらに気持ちを持ち上げてくれるのは良く見える光学ファインダーだ。暗い星空の中しっかりと構図を決めることができるのは、光学ファインダーならではだ。最新のデジタルデバイスと優秀な光学技術の融合が高画質で使いやすいカメラを作るのである。

PROFILE
茂手木秀行(もてぎひでゆき)
1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く著書に「Photoshop×Camera Rawレタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。長時間露光、超高感度は学生時代の研究・制作テーマであり、当時から現在まで作品表現の中核としている。