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GR IIってどんなカメラだ?GR II の魅力と表現力GR IIってどんなカメラだ?GR II の魅力と表現力

GR IIの歴史と、不変のアイデンティティ

 GRがシリーズとしてスタートしたのは約20年前の初代「GR1(1996年10月)」からだ。その2年後、二代目として「GR1s(1998 年4 月)」が、さらに2001年9月には三代目「GR1v」が発売されてシリーズを確立していった。いずれの機種も、モデルチェンジしても外観デザインを変えず、小さな沈胴式4群7枚構成の28mmF2.8レンズを内蔵し、ボディ外装はマグネシウム合金製を引き継ぐなど、スペックはほとんど同じだった。二代目GR1sのあとに、少し変則的であるが、ボディデザインはそのままにして21mmF3.5レンズを内蔵した「GR21(2000年4月)」が発売されたがこれは期待したほど売れなかった。やはり28mmF2.8レンズを内蔵したGR1シリーズが圧倒的な人気であった。多くのプロ写真家が「究極のサブカメラ」と絶賛するなどして一時はGRブームが起こったほどだ。

 GR1、GR1s、GR1vに内蔵された28mmF2.8レンズは完成度が高く大変に優れた描写性能を備えていた。ボディデザインも贅肉をそぎ落としたようにシンプルで無駄がなかった。そのためモデルチェンジしても、レンズもボディもほとんど手を加える必要もなかったし"改良すべき点"もほとんどなかった。初代GR1からの熱心なユーザーであった私もそうだったのだが、多くのユーザーもまた、28mmレンズの描写の変化やボディデザインの大きな変更を望まなかった。カメラの操作系もまた、手に馴染んだ同じ使い勝手を継承してくれることを願っていた。しいて変化を求めたことといえば、使い勝手についてのマイナーな部分改良のみだった。

 こうしてGR1シリーズは、変わらないことこそいいことなんだ、という「GR、不変のアイデンティティ」が徹底していった。

 三代目GR1vが発売されてから約4年後の2005年10月に、GRシリーズとしての初のデジタルカメラである「GR DIGITAL」が発売された。フィルムカメラからデジタルカメラにフルモデルチェンジしたが、コンセプトもスタイルもなんら変わることなく初代フィルムGR1のそれを色濃く受け継いでいた。M型ライカがフィルムカメラからデジタルカメラにスムーズに変身したのとちょうど同じだ。

 イメージセンサーは1/1.8型のCCDで画素数は813万画素を、内蔵レンズは28mm画角のF2.4レンズだった。その後、デジタルGRもまた、II型、III型、IV型とモデルチェンジしてシリーズ化していった。GRの基本スタイルやコンセプトはなによりも大切にされ、大幅なフルモデルチェンジは決してしなかった。当時のコンパクトデジタルカメラは短期間のうちにモデルチェンジを繰り返す傾向が強くあったが、GRシリーズはそれらとは違ってカメラのライフサイクルも長かった。コンパクトデジタルカメラとしては極めて珍しい存在でもあった。

 とはいっても、モデルチェンジされるときにはデジタル技術やカメラ技術の進化に合わせて必要不可欠な機能や機構の改良は加えられた。たとえば、画素数を少しアップしたり、F1.9の大口径28mm相当のレンズを搭載したり、レンズ内に手ぶれ補正機構を内蔵させたりといった変更や改良がそうだった。しかし、GRシリーズの基本コンセプトである小型軽量で優れた操作性、多様なユーザーの希望にかなうカスタマイズ性、高い描写力の28mm画角の単焦点レンズを内蔵、といったGRスタイルは頑固に守り通した。

PENTAX のKシリーズと同じAPS-Cサイズのイメージセンサーを搭載して、こんなにコンパクトなボディに仕上げている。電源をOFFにすれば沈胴式レンズはボディ内に引っ込んで、ほぼ平らになる。カメラ重量はバッテリー込みで、たったの約250グラム。

GRシリーズの" 記念碑的な3機種" で、右からフィルムGRシリーズの最終機種である「GR1v」である。真ん中が1/1.7型や1/1.8型センサーを使ったデジタルGRシリーズの最終機種の「GR DIGITAL IV」、そして左が最新型の「GR II」だ。こうして見てみても「キープコンセプト」が受け継がれていることがよくわかる。
「GR LENS 18.3mmF2.8」のレンズ構成断面イラスト。上の図が電源ONでレンズが撮影状態にあるとき。下の図は電源OFFでレンズが沈胴状態のとき。つまり、カメラの電源をON/OFFしても、ピント合わせのときも、この5群4枚構成のレンズ群が"ひとかたまり"で前後する。電源ON/OFFによるレンズのガタツキの心配もなく、撮影距離による収差変動もない。高画質最優先のレンズ構成である。
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GR IIのレンズとボディ

田中 希美男(たなか きみお)
フリーランスフォトグラファー。多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業。撮影分野は人物、風景、スナップなどを問わないが、車の撮影をもっとも得意とする。新型カメラやレンズのレポート、撮影ハウツウを雑誌などで解説。おもな書籍は、「デジタル一眼・上達講座」、「デジタル一眼・交換レンズ入門」(ともにアスキー新書)、「デジタル一眼レフ・写真の撮り方」(技術評論社)、「名車交遊録」(原書房)、「名車探求」(立風書房)など。写真展など多数開催。写真ブログ「Photo of the Day」やtwitter(@thisistanaka)で写真関連の雑感や情報を伝える。

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