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天体ショー情報 5/26(水)夜初めころ
皆既月食を見よう!撮影しよう!

<2018年1月31日の皆既月食(皆既の始まりころ)>
PENTAX K-1 HD PENTAX-DA55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE
ISO200 F8 約10秒(B(バルブ)) アストロトレーサー・クロップモード使用
地球の影(本影)が中心に向かって徐々に濃くなっている様子がわかる

こんにちは。スクエア大阪の伊藤です。コロナウイルスによる非常事態宣言が5月いっぱいまで延長されることが決まり、さらに感染拡大傾向です。皆さまなかなか撮影に出掛けることもままならないと思いますが、タイトルの通り、5/26(水)の夜初め頃に皆既月食が起こります。月食は場所を選ばず(空の明るい都市部でもOK)、誰でも特別な機材がなくても観察でき、マニュアル露出ができるカメラなら比較的簡単に撮影もできる天体ショーです。皆さまもぜひ観察と撮影にチャレンジしてみましょう。

【月食の仕組み】
まず、ご存じの方もいるとは思いますが、月食が起こる仕組みを説明します。

<図1:皆既月食が起こる仕組み>

簡単に言いますと、<図1>のように太陽―地球―月の順に一直線に並んだ時に月食は起こります。その位置関係から、月食は満月の時にしか起こりません(ちなみに日食は太陽―月―地球の順で、新月の時にしか起こらない)。しかし、地球の公転面と月の公転面が傾いているため、満月の時に必ず月食が起こるわけではありません。
地球の影には薄い「半影」と濃い「本影」があり、月が半影に入ると「半影食」とされますが、肉眼ではほとんど変化か無いように見えますので、一般的には本影に月が入ると「月食」と呼ばれます。月全体が本影に入ってしまう状態を「皆既月食」、月の一部が本影に入り月の一部が欠けて見える状態を「部分月食」と言います。

【皆既月食には明るく短い皆既月食と、暗く長い皆既月食がある】

<図2:今回の月食、地球の影と月のイメージ>

<図3:今回とは異なる長く暗い月食、地球の影と月のイメージ>

上の<図2>と<図3>を見比べてください。月が地球の影に入る様子のイメージ図です。月食は月に対して地球の影が大きく、通過する影の位置によって、皆既月食の継続時間や明るさが変わってきます。
今回の皆既月食は<図2>のように、地球の本影をギリギリ通過するタイプ。図では影の縁をハッキリと描いていますが、実際はグラデーションを持ちつつ中心に向かって影は濃くなっていきます。したがって、本影の端の方を通過する今回は、明るい赤銅色の皆既月食になるでしょう(冒頭の写真のような感じ)。この後に月食撮影用の露出表を掲載しますが、今回は右端の「皆既中」の設定は必要ないと思われます。それでも皆既中は明るさの変動があります。月食は比較的時間的余裕がある天体ショーなので、「皆既前後」の設定をベースに、-1~+2EV(段)程度露出を変えながら撮っておくと失敗が少なくなるでしょう(特に地上の被写体と並べる場合は露出を変えながら撮るのが無難です)。

<図4:月食露出表>

【その他撮影時の設定での注意点】
●WB(ホワイトバランス)
「AWB(オートホワイトバランス)」ではなく、「太陽光」もしくは「マニュアル」で「5000K」に設定しましょう。より月の赤さを強調したいなら、「曇天」にするのも一興です。
●撮影モード
「M(マニュアル)」モードに設定し、<図4>の月食露出表をもとに設定してください。
●フォーカスモード
「MF(マニュアルフォーカス)」にします。ピント合わせはLV(ライブビュー)で行うとより正確です。ズームレンズを使用する方は、必ず構図を決めて(焦点距離を決めて)からピント合わせを行います。ピント合わせ後にズーミングすると、ピントがずれる可能性があります。
●インターバル合成
PENTAXの一眼レフまたはGRシリーズの内蔵インターバル合成機能では、インターバル撮影中の露出設定を変更できません。特に部分月食と皆既月食を並べたい場合、明るさの差が大きくなりますので、そのまま同機能を使って撮影する場合は、皆既月食の明るさに合わせる(<図>4の右から2番目「皆既前後」)のが基本です(部分月食は明るく飛ぶが、皆既月食がきれいに写る)。満月を含めて、部分月食から皆既月食もすべて適正露出で撮影したい場合は、通常の「M」モード&単写で露出を変えながら、後で各種アプリを使って合成する方がいいと思います。皆既月食のみを並べたい場合は、今回は皆既中の明るさが大きく変わらないタイプですので、内蔵インターバル合成機能でも撮影可能でしょう。
※ただし、今回は皆既月食の時間が短い(20分弱。月が1つ分移動するには約30分必要)ので、赤い月が離れて並ぶようには撮影できません。
※部分月食を重ねずに並べる場合は、撮影間隔を約40分以上取ると良いでしょう。

【今回は月食と地上の被写体を同時に写し込むチャンス!】
まずは下の<図5>を見てください。東京の星空を基準にした月食のおよその位置が記された図です。

※表示されている月食の時間は全国共通ですが、方位や高度は場所によって異なります。最後に紹介するサイトなどで、事前に調べておくことをおすすめします。

<図5:皆既月食中の月の位置/参照元 国立天文台

今回の皆既月食は、高度が低いことが特徴です。東日本の一部を除き、月食(部分月食)が始まった状態で月の出を迎える「月出帯食」となります。しかも今年のスーパームーン(その年で一番大きい満月)とも重なります。高度の低い月は、建物など比較対象物があるため大きく見えます。スーパームーンでさらに大きく見える皆既月食は、きっと迫力満点のはず。山や海、地上の建築物などの被写体を一緒に写し込むには最適の条件です。しかも明るい皆既月食ですから、高感度に強いカメラ(K-3 MarkIII・KP・K-1シリーズなど)なら、レンズによっては手持ちでも撮影可能です。当日は、ぜひカメラを手に撮影にチャレンジしてみましょう。

【撮影地と月の高度を事前に調べよう!】
次に、重要なのが狙っている地上の被写体と月食との位置関係です。例えば富士山と月食を同じフレームに入れたいならどこから撮ればいいのか、ということです。今回の皆既月食の時間は20分弱しかありません。当日現地へ行ってから撮影地を探すのではとても間に合いません。そこで、あらかじめ月食がどの位置に来るのかをある程度予想しておくことが重要です。
でも、月がどの位置にくるのかを予想するなんてできるの?と思われる方がいるかもしれません。でもここにこんなことを書いている時点でわかるかと思いますが、現在は少し手間をかければ比較的簡単に月の位置を調べることができます。
まず、もう一度<図5>を見てみましょう。月食の正確な時刻(この時刻は日本全国共通です)と、東京の場合の大まかな方角と高さ(高度)が記されています。まず方角ですが南東から東南東よりの地平線から月が出て、皆既月食のころにはほぼ南東の位置に来ることがわかります。これで、地上の被写体の撮影地の位置(方位)関係を算出できます。
次に高度です。皆既月食の時間帯には、およそ15°前後の高さになっていることがわかります(月の方角と高度は、場所によって変化します。詳しい方角と高度の調べ方は後で述べます)。問題はどうやって月の角度と地上の被写体とのバランス(構図)を取るかです。
そこで下の<図6>の出番です。

<図6:手を使った角度(高度)の測り方>

手をまっすぐに伸ばして<図6>の指の形を作ると、おおよその角度を測ることができます。つまり手と腕を使った分度器です。これで月の高度と地上の被写体の高さとのバランス(構図)が取れる地上の被写体との距離がわかります。

これである程度、撮影地が絞れるはず。なお、より正確な月の方角や高度を調べたい方は以下のサイトが便利です。

●国立天文台暦計算室:月食各地予報 - 国立天文台暦計算室
①上記リンクページの左側「計算地点」で「緯度・軽度・標高」を入力するか、その下の「指定方法」から、「市町村名を検索する」「主な都市を選ぶ」「google mapsで選ぶ」などに変更できるので、好みの方法で「計算地点」を設定します。
②「計算内容」で「指定地点の予報をする」の右側「Go」をクリックすると、その地点の月食時間(部分食、皆既食の始まり・終わりなど)、方位(北を0°とし、時計回りの方角)、高度(地表からの高度)などの表とともに略図が表示されます。

●月の出・月の入りマップ:https://hinode.pics/moon/
右側の入力ウィンドウで日付(月の満ち欠けをアイコンにしたカレンダー表示)を入力すると、地図上に指定した日にちの月の出の方向と月の入りの方向が、赤線で表示されるサイトです(東側が月の出の方向、西側が月の入りの方向)。通常の月食ではあまり参考になりませんが、今回は「月食出帯」、月食が始まっている状態で月が出るため、撮影地の絞り込みに便利です。普段の月の撮影にも便利なサイトです。

皆既月食そのものは、どこでも見て撮影できる天体ショーですが、人気のある地上の被写体とのコラボを考えている場合は、人出が集中することも予想されます。蜜を避けて感染対策を徹底して撮影に臨んでください。
それでは皆さま、今年は残念ながら雨の季節が早まりそうな様子ですが、当日晴れることを祈りましょう!

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