GRist 68 アミタマリさん
7/17に発売になったGR IIのカタログはご覧いただけたでしょうか。
都会のライブ感あふれる作例の数々がとても印象的ですよね。
今回のGRistは、GR IIのカタログ撮影をしていただいた、写真家のアミタマリさんにご登場いただきます。
アミタマリさんといえば人気俳優・女優さんや、有名アーティストのポートレート写真が思い浮かびますが、スナップシューターであるGR IIでの撮影はどうだったのでしょうか。
■写真を始めたきっかけ
えみっふぃー(以下 え):今回はGR IIのカタログ撮影でお世話になりました。
使ってみた感想はいかがですか?
アミタマリ(以下 ア):もともとフィルムのGRを使っていたので、特に違和感はありませんでした。
え:GRをお使いだったのですね!ポートレート撮影のイメージがあるので、ちょっと意外です。
ア:いつも持ち歩いていますよ。広角の写真が好きで、プライベートではよく撮っています。
え:フィルムのGRはどんなきっかけで使い始めたのですか?
そもそも、写真を始めるきっかけは何だったのでしょう?
ア:モデルの仕事をしていたころに、師匠(写真家 故・野村浩司氏)のところによく遊びにいっていたんです。で、あるとき、自分のところでバイトをしてみないかといわれて。私はバイクに乗っていたので、バイク便とか、フィルムの整理など、まずは雑用から(笑)
そこで、撮影から、現像、プリントまで、写真が出来上がる一連の工程に初めて触れて、"創る面白さ"に目覚めたんです。
え:なるほど。
ア:26歳くらいのとき、雑用バイトではなくて、ちゃんと仕事として写真に関わりたくなって、アシスタントとして野村さんの下で写真を始めました。
その後、雑用バイトも含め、3年アシスタントを勤めたあと、独立しました。
GRは、アシスタント時代に野村さんが使っていたのですが、GRのフォルム、単焦点であることに惹かれて、私も使い始めました。
え:どんなシーンで使うのですか?
ア:そのころはライブ写真をよく撮っていて、ステージだけではなく、楽屋の様子も含めて、ミュージシャンに密着して撮るのですけど、そのときにはすごく便利で。
え:カタログにもあるこんな感じですね?(カタログの写真を指して)
ア:そうです、楽屋からステージまでの狭い通路でも、GRだとコンパクトだし、ストロボも付いているし、これだけで全部撮れるんですよね。
しかも大げさじゃない。
え:大きいカメラだと撮られる方も構えちゃいますしね。
ア:そうなんです。楽屋はアーティストの場所ですし、特に本番前は緊張したりもするので、なるべく空気を乱したくないと思うので。
小さいけれど、仕事でちゃんと使えるのがいいですね。
え:他に活用シーンはありますか?
ア:あとは、旅ですね。普段から持ち歩いてはいるのですが。
それと、GRは子供も使えるんですよね。押すだけだから。
私が撮っていると、子供も撮りたがるんです。
6歳になるのですが、子供は目線も低いし、撮りたいものがはっきりしているので、やはり大人には撮れないものを撮りますね。そろそろちゃんと教えたいと思っています。
■カタログ撮影について
え:今回のGR IIのカタログ撮影の秘話があれば聞かせていただけますか?
ア:カタログのテーマは、「"今"の東京」だったんです。
それを、私らしく撮る、という。
考えてみたら、私は25歳くらいから東京に住んでいるんですが、こんなに真剣に東京を撮ったのは初めてでした。
10日間くらいかけて、自分の車と足で、朝から晩まで気の向くまま、行きたいところへ行って。
靴が壊れるくらい歩いて、撮りました。
え:えー!靴が壊れるくらい、とは。
そうやって撮ってきた中で、新たな発見はありましたか?
ア:今回のGR IIの、「GET REAL」というキャッチコピーがすごく心に響いたんですよね。
いままで自分の写真は刹那的なものより、普遍的だったり、過去を振り返ったり、というものが多かったんです。
たとえば、昨年の写真展「eternity」は、いわば"あの世"をテーマにしたものでした。
年が明けて、新たなスタートを切る、というタイミングで、この「GET REAL」― 究極の"今のリアリティを撮る"、というテーマが与えられたことが、びっくりするくらい自分のタイミングと合致していて。自分が今撮るべきものを与えてもらった、と思いました。
5年後10年後に振り返ったとき、これを撮った心情であるとか、いろいろなことを思い出せるだろうと思うし、今回の仕事は印象深いものになりました。
え:運命的な感じですね。
ア:そうですね。最近そういうことが続いているのですが、自分がそうしたい、そうなりたい、と強く思うことで、引き寄せられるのではないかと。逆に、強く思わないと変わらない、ともいえますが。
写真は一押しで、その瞬間過去にさっと流れてしまう ― 言い換えれば、撮るたびに何十分の一秒分、前に進めるものだと思っているのですが、今回の"スナップする"という仕事は、それを自分の身体を使って、歩きながらやる、ということで、シャッターを押すたびに少しずつ前進している、ということを強く感じられるものでした。
え:それがアミタさんにとっての写真、ということですね。
ア:そうですね。
ア:GRって"男のカメラ"というイメージが強くて。
え:そうですね、同感です。
ア:大道さんのように、刹那的に切り取っていくことにすごく憧れもあって。
でも、私は女だし、私なりのものが撮れればいいなと思っています。
■ポートレート撮影について
え:普段はモデルさんやタレントさんなど、スタジオで人物を撮られることが多いと思いますが、アミタさんの撮影スタイルがユニークとうかがいました。
なんでも、スタジオではいつも裸足だとか?
ア:ええ、裸足ですね。私は、三脚が嫌いで(笑)
被写体には自然体でいてもらって、自分が動き回りながら撮りたいんですよ。
だから、自分の足で自分の身体を支えて撮影するのですが、靴や靴下も滑るのでそれも履かず、裸足なんです。
だから、いまだに撮影の翌日には筋肉痛になるくらい。私にとっては、スポーツですね。
え:それはアミタさんの個性ですね(笑)
ポートレート撮影において、他に心がけていることはありますか?
ア:被写体に愛を注ぐ、ということでしょうか。母性ともいえるかも...。攻めるように撮るときもありますが、母になってから向き合い方、撮り方が多少、変わったかもしれません。撮ることで、その人が気づいていない魅力を、私の直感で引き出す、それが私の愛の形です。
それが、その人にとって、新たな自分を発見するきっかけになれば、すごくいいですね。
★お気に入りの一枚
カタログにも掲載している写真ですが、原宿で通りかかったときにマネキンを搬入しているところに出会いました。人通りの多い場所なのに、タイミングがばっちり合って余計なものが何も写り込まず、これこそ"スナップ"!という1枚になりました。
~取材を終えて~
飾らなくて自然体のアミタさん。
なにごとにも全力で取り組まれる姿勢が、とても素敵でした。
実は取材をした週末に、東京都現代美術館で開催されていた「山口小夜子 未来を着る人」展でばったりお会いして、運命めいたものを感じました。
撮る側・撮られる側、両方のことをよくご存知のアミタさんが、どのように展示会をご覧になったのか、またお話しする機会があればいいなと思いました。
今後のご活躍にも、是非期待したいと思います!
■アミタマリ/Mari Amita
1973年生まれ、山口県出身。専修大学文学部卒。 モデルを経て写真家・野村浩司氏に師事、2001年に独立。2003年・宝島社の新聞広告で朝日広告賞グランプリを受賞。
数多くのミュージシャンのCDジャケットやポートレートを手掛けるほか、広告、カルチャー、ファッションを中心に活躍中。
2013年、初の個展『silent flowers 』
2014年、個展『eternity』共にGALLERY SPEAK FOR にて開催。
■最近の刊行物 武井咲写真集『bloom』(株式会社KADOKAWA)
■HP http://www.amitamari.com/
過去の記事
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