GRist 56 ナガオカケンメイ さん
こんにちは、えみっふぃーです。
今回のGRistはナガオカケンメイさんです。「ロングライフデザイン」をテーマとするストアスタイルの活動体D&DEPARTMENT PROJECT(ディアンドデパートメントプロジェクト)を2000年に創設するなど、ロングライフデザインに関する活動をされています。今回は、その第1号店であるD&DEPARTMENT TOKYOにお邪魔しました。
■デジタルカメラと、d design travel
えみっふぃー(以下え):GRとGXRをお使いいただいているそうですが、選ばれた理由はなんだったのですか?
ナガオカケンメイ(以下ナ):圧倒的なプロダクトデザイン性です。コンパクトで、良く撮れそうな雰囲気があって、クリエイティビティ心が高められるデザインですよね。
え:主な利用用途は取材ですか?
ナ:そうです。GRもいろいろ機能がありますが、設定とかはいじったりせず、そのまま使っています。
だったらスマホのカメラだっていいじゃないか、と思うかもしれないですが、スマホではダメなんです。
え:スマホとGR/GXRとの違いはなんでしょうか。
ナ:雰囲気が撮れることですね。
取材時のメモとしての用途で、最終的には文章におとすことになるので、先に文章が頭に浮かんでいるのですが、スマートフォンではそれを撮ることができないのです。
GRもいろいろ機能がありますが、僕は基本的に設定を変えることはしません。
シャッターを押しただけで、自分の撮りたいものがありのままに撮れるのがいいですね。
え:d design travelに掲載される写真もGRとGXRで撮っていらっしゃるんでしょうか。
ナ:自分が編集長になっている冊子については、ほとんどそうです。
え:何冊か拝見しましたが、紹介されている場所やお店の写真を見ていると、その場に行きたいなと思えるくらい、とてもライブ感がでていますよね。
d design travelについてはとても興味があるので、詳しく聞かせていただきたいのですが。
ナ:はい。
え:自分にとって身近なd design travel 東京を拝見したのですが、取り上げられている場所やお店が、とてもニッチというか、個性豊かで新しい発見がいくつもありました。どれもいってみたいお店や場所ばかりで。掲載する場所は、どうやってピックアップするんですか?
ナ:情報源はいくつかあって、1つ目は雑誌の記事です。
カフェ(D&DEPARMENT TOKYO)に置いている雑誌の3年分の記事を、都道府県別に仕分けました。
え:大変そうですが、それは膨大な量になりますね。
ナ:はい。2つ目は、都道府県別のFacebookページです。
だいたい1都道府県あたり200名はフォローしてくれるので、200名の地元の方から情報が提供されます。
3つめは各都道府県で行うワークショップ。これも1回あたり約200人程度の参加があるので、生の情報を聞くことができます。
え:さまざまな手段を駆使して情報収集するんですね。。。
ナ:そこで集めた情報を元に、ある程度の数に絞って、1件1件実際に足を運んで、取材します。
え:とても時間がかかりそうですが。
ナ:2ヶ月くらい取材先の都道府県に滞在して、毎日いろいろな場所に取材しに行っています。
お店に入っても、取材です、とはいわず、普通にお客さんとして何度か通います。
「最近よく来るお客さんだな」みたいな感じになることも多くて、そうすると、自然な表情の写真が撮れるので。
え:確かに。 だからd design travelに登場するお店の方々の表情が自然なんですね。
ナ:取材です、って最初に言うとどうしても構えてしまって、よそ行きの顔になってしまいますからね。
そして、最終的にはレイアウト済、写真つきの記事原稿を持っていって、掲載許可をいただくんです。
「これを掲載しますね」って。
え:(笑)
ナ:みなさん快諾していただけます。
え:しかし、手間隙かかっていますね。だからいいものができるのでしょうけど。
ナ:1つづつこの調子でやっているので、47都道府県すべて発行するのにはあと12年くらいかかってしまいそうです。
え:私は埼玉に住んでいるので、はやく埼玉版を見てみたいです!
埼玉はとかく「なにもない」といわれますが、どんな場所やお店が紹介されるのか。。。
ナ:埼玉もいいところがたくさんありますよ。埼玉に限らず、どの都道府県でも同じことが言えます。
d design travelのこだわりの1つが、どの都道府県についても、ほぼ同じページ数にしているところです。 一般的に旅行ガイドは、紹介されている都道府県によって厚さが違うことに違和感があります。
人口の多さや流行の発信地だとか、そういうことは関係なく、同じ編集方針でいれば、どの都道府県でも同等の情報量を掲載することができるものです。
え:そもそも、d design travelを発刊しようと思ったきっかけは?
ナ:旧来の雑誌の魅力は、その編集長の主張やこだわりを感じられるところにありました。
最近はそれを感じるものが少ないので、自分で作ろう、と思ったのがきっかけです。
え:なるほど。
ナ:また、デザインは東京が中心地、と思われていますが、各地にデザインの優れたものはあるわけで、それを伝えたかった。
観光ガイドブックは、普通他県のものを買うので、地元のものは売れないと思いますが、d design travelは取り上げた地元で一番売れているんですよ。
え:それはとても理解できます。地元のいいところを紹介してくれて誇らしくなるのかも。他県のものも全部ほしくなりますが(笑)
ナ:一度発行した都道府県については、今後アップデートする必要がありますが、d design travelは一貫したコンセプトがあるので、それに沿って作れば2号目以降は地元で作ってもらえるようになっています。
え:d design travel自体がサステナブル、ということですね。
■プロダクトデザインについて
え:話がまた変わりますが、ナガオカさんはまたサステナブルなプロダクトデザインをやってみたい、と思われることはありますか?
ナ:プロダクトって、その製品そのものだけではなく、そのプロダクトの周辺の...たとえばプロダクトライフサイクルやサポートといったものも含んだ総合競技だと考えています。
GRもそうですが、定期的なソフトの更新があったり、ちゃんとサポートしてくれる安心感があることでロングライフプロダクトになっていますよね。
最近は、そういった、プロダクトデザインだけではない、周辺を全部ひっくるめた部分にとても興味があります。
D&DEPARTMENTという販売する手段を持っているので、総合競技の中の1競技として、なにか面白いことができたらいいなと考えています。
え:ストアも各地にありますしね。
ナ:京都造形芸術大学の学生と一緒に、D&DEPARTMENT京都を立ち上げる企画もあります。
え:また新たなアイディアがいろいろ出てきそうですね。
どんなお店になるのか、楽しみにしています。
■お気に入りの一枚
d design travel 山口取材中で出会ったANA クラウンプラザホテル宇部の階段。グラフィカルで建築本体とも違う、付随した設備で、偶然出会うこういう風景が好きです。
ナガオカケンメイ
デザイン活動家・京都造形芸術大学教授・武蔵野美術大学客員教授
すでに世の中に生まれたロングライフデザインから、これからのデザインの在り方を探る活動のベースとして、47の都道府県にデザインの道の駅「D&DEPARTMENT」を作り、地域と対話し、「らしさ」の整理、提案、運用をおこなっている。
'09年より旅行文化誌『d design travel』を刊行。
'12年より日本初の47都道府県をテーマとしたデザインミュージアム「d47 museum」館長。'13年毎日デザイン賞受賞。
主著に「D&DEPARTMENTに学んだ人が集まる伝える店の作り方」(美術出版社)
「ナガオカケンメイとニッポン」(集英社) 等。
www.nagaokakenmei.com
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