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GRist

GRist 47 白井綾さん

こんにちは。ふーです。
今回のGRistは、以前からGRを愛用いただいている白井綾さんです。GR BLOG撮影ツアーやワークショップ、オフ会などにもお越しいただいています。白井さんご指定の落ち着いたカフェでお話をお伺いしました。

GRist 47 白井綾さん

■GRとの出会いと日常

ふー(以下『F』):フィルムカメラの頃からGRをお使いいただいてるそうですね。

白井綾(以下『S』):学生の頃からのユーザーです。一眼レフは持ってましたけど、当時コンパクトカメラだと、コニカのヘキサー、コンタックス(京セラ)T2、リコーGRの三択。一眼では35mm・50mmをよく使っていたので、思い切って28mmというのも面白いかもと思って。それ以来のGRユーザーです。

F:今日お持ちいただいたのは、そのカメラですか?

S:そうです。けど、かなりパーツ交換しましたので、今も見た目は結構きれいでしょう。今でも海外に取材に行くときは、フィルムのGRも持って行きます。メインが中判カメラだったりすると、もうちょっとスナップを撮りたいとき用に。まだまだ現役です。

F:プライベートでは、どんなカメラで、何を撮られることが多いですか?

S:これまでは日常的なスナップはGXR + A12 50mmが多かったですね。スナップはほとんどこれ。以前はA12 28mmも使ったりしていましたけど、GRが出てからは28mmはGRまかせです。GRは、センサーが大きくなったのもあって、フィルムのGRと感覚が近い気がします。


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■フィルムとデジタルに通じるもの

F:もともとは、写真家になろうと思って大学に行ったわけではないそうですね。

S:芸術学科で美術史などを学ぶ中で、油絵や日本画など、いろいろなジャンルにちょっとずつ触れる時間があって、その一つが写真の授業だったんです。モノクロで撮って、現像してプリントして、というプロセスに興味を持ったのがきっかけです。

F:最近は暗室作業をしたことがない人が多いと思いますけど、現像やプリントの面白さとは?

S:モノクロのプリントを薬品にひたして、絵が出てくるのが楽しいんですよね。モノクロだとプリントしながら「どうしようかなー」と悩める余地があって、その緊張感とワクワク感が魅力です。

F:最近はデジタルでの作業も多いと思いますが、作品を仕上げていくときに「暗室作業」に通じる部分はありますか?

S:デジタルでも「フィルムでの色の見え方」を紙に再現しようとしていますので、処理も暗室作業を再現しているところはあると思います。逆に、それ以上のレタッチなどはあまりしていませんけどね。

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■いろいろなお仕事

F:白井さんは、写真を撮って個展をやるのはもちろん、写真集、撮影ノウハウ本、ワークショップ、最近では大学での講義も始められると聞きました。

S:普段は依頼されて撮る仕事が多いですね。雑誌の仕事がメインかな。取材物もありますし、意外とブツ撮りも多いし、料理、ポートレート、ファッション、割と何でもやってますよ。

F:何が一番ご自分の肌に合っていると思いますか?

S:作品を撮るのが楽しいときも、仕事での撮影が楽しいときもあります。作品を撮るときは自分でコーディネイトしますけど、依頼仕事の場合は、自分が日頃興味のないものを撮ることも多く、そういう時は使う「運動神経」が違うので、その不慣れな感じが面白いんです。
仕事の場合、当然ですけど様々な制約や条件があるけど、その制約が逆に楽しい。逆に作品では制約がなく、自分のしたいようにできる分、けっこう苦しいことでもある。どちらか一方ではやっていけない気がします。

F:うまくバランスが取れているんですね。


■近著「フォトグラファーが教えるシンプル写真術」

F:この本は写真とテキストの量のバランスも良くて、とても読みやすいしわかりやすいと思いました。文章を書くのは得意な方ですか?

S:苦ですね(笑)。苦手なので時間がかかってしまうんですよ。

F:執筆で苦労した点は?

S:厳密な「正確さ」よりも「わかりやすさ」を優先する面があったので、自らに課した「写真の専門用語をできるだけ使わない」というルールが大変でした。

F:どれくらいの期間で作ったのですか?

S:準備期間は長かったけど、撮って作業してというのは3ヶ月ぐらいかな。テキストはこの何倍も書いたのですが、入門書なので短く読みやすくしないとと思って、どんどんカットしていきました。写真家として、「ここまで削ると正しくなくなるんじゃないか」という最小限はなんとか確保して。まずは興味を持ってもらって、「カメラって、もうちょっと使いようがある」というところを伝えたかったので。


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■長崎の教会と「白井トーン」

F:白井さんにとっての長崎の教会は「ライフワーク」という印象がありますけど、最初に行かれたのは?

S:2006年です。夏休みの休暇で。
その本(写真集『長崎の教会』)にも載っている野崎島という無人島に行ったら、教会が残ってたんです。もともと「いい風景が撮れるかな」と思って行ってみたのですが、この教会がすごく良くて、他にも見てみたいなと。それ以来、暇を見つけては長崎に通っています。

F:人が写ってないのに人の気配を感じる、不思議な雰囲気の写真ですよね。

S:教会は、本来はミサをする場所です。ミサは信者さんにとって神聖で大切な時間であり、邪魔をしないようにしないといけません。なので、原則人物は入れないないのですが、建物だけの写真でも特別な場所だというニュアンスが出せればいいと思ってます。

F:教会の写真に限らず、白井さんの写真には、一貫してやわらかいトーンが流れていると感じますが、技法的になにか工夫されているのですか?

S:多少オーバーめに撮ることはありますけど、それ以外はあまりないです。それより、実際にやわらかい日差しの時を好んで撮ってるということ。私らしいトーンというのは、私が好きな時間帯とか日射しが映ってるということかな。
なので、撮る時間帯はすごく考えます。

F:テクニックよりも「時間」が大切なんですね。

S:そっちを優先するから、「この光じゃないな」というときは撮らないです。「とりあえず撮っておくか」というのは、仕事での押さえとしてやることはあるかも知れませんけど、作品のときはありません。

■鳥取の柴犬

F:今、取り組んでいることは?

S:一昨年、かばん屋さんのカタログの仕事で撮らせてもらったんですけど、鳥取に独自の「山陰柴犬」がいるというのを知って行ってみました。

犬は犬なんですけど、これを守ってきた人たちのストーリーがあるんですね。日本犬って、明治以降に交通の発達で交配が進んでしまって、もともと犬は地域地域で特徴があったのに、柴犬も地域性がなくなってしまっています。

その中で、鳥取のある庄屋の当主さんが山陰柴犬を守り抜いてきたという歴史があって、今につながると。戦争中もここで守られたおかげで、一時期減ったのですが今はまた飼っていこうという人が増えているそうです。それでも今は300匹ぐらいしかいなくて。ここには少し通おうと思っています。

F:これ、シリーズにできるといいですね。


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■気になる写真家

F:今、興味のある写真家は?

S:南アフリカ出身の写真家で Pieter Hugo っていう人がいて、ハイエナを連れた家族の写真を撮ってる写真集(The Hyena & Other Men)があるんですよ。ナイジェリアのハイエナや豹をを連れて移動する写真がすごく力強くて、大好きです。


■これからの白井綾さん

F:これからやってみたいことは?

S:ブツ撮りをもっとやりたいですね。静物を撮りたい。もの集めが好きで、近所の骨董市に行っては、よくわからない物を買ってくるんですけど、「物」を「物」として撮るということに正面から取り組んでみたいなと。

F:特に何を撮りたい、というのではなく?

S:昔の静物画ってありますよね、果物とか花瓶とか。スペインの画家でスルバランという方がいて、スルバランの静物画はけっこう印象が強いんですけど、写真ではそうはならないんですよ。じゃあ、写真で静物をそういうふうに表現するにはどうすれば良いのか。静物には以前から興味があるんですけど、すぐできそうでもあり、でもむずかしくもあるから手を出してなかった。

F:白井さんには「ギャラリーのオーナー」という雰囲気もありますけど、将来はどうですか?(笑)

S:うーん、今のところは興味はないけど...。「物を売る商売」って楽しいだろうな、とは思います。アートでも成り立たせられたらいいですね。作品自体がもうちょっと気軽に買える、売れるっていうことになるといいんですけど。

■お気に入りの1枚

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近所を散歩していて、出会ったフクロウ。
気軽なスナップは、GRで撮影しています。
作品撮影では、コンセプトを立てて計画的に撮ることもありますが、
スナップでは、はっと気になった瞬間を大切にしています。
なので、GRで撮ると、私のプライベートに最も近い写真になります。

■インタビューを終えて...

今回紹介した内容の他にも、小千谷の錦鯉や闘牛、各地の温泉などに関する話題が次から次へと出てきました。瞳をきらきらさせてお話される姿は、まるで少女のようです。興味の対象は尽きることがないようですね。私ももっとアンテナを広げて、いろいろなことを吸収していかないと、と感じた取材でした。

■プロフィール
白井綾(しらい あや)

1973年千葉県生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。
美術史を学ぶも、写真の面白さにはまり、写真の道へ。
東京芸術大学美術学部附属写真センター勤務を経て、フリーランスのフォトグラファーとなる。
雑誌、広告の撮影をしながら、作品制作・発表を行う。

写真展
「open field」(ギャラリーコスモス 2005年) 陶芸家にして音楽家の工藤冬里氏と、愛媛の風景。
「Meskerem 2001 ETHOPIA」(アーキテクツ オフィス ギャラリー 2009年)岩山にある、エチオピアのキリスト教会を巡る。
「長崎の教会」(72gallery 2012 )数年来撮影してきた、長崎、五島、平戸などに点在するカトリック教会を撮影。

写真集・著書
「open field」(WK&CO 2005年)
「COLORS」(長崎県 2007年)
「長崎の教会」(平凡社 2012年)
「フォトグラファーが教えるシンプル写真術」(アスペクト 2012年)

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