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GRist

GRist 15 湊和雄

GRist 15 湊和雄さん

こんにちは、ヒロです。

今回は、沖縄をメインフィールドに、野生生物の撮影を続けている写真家・湊和雄さんの登場です。
湊さんからは写真集「GR SNAPS」やWebサイト「PhotoStyle」にあるフォトテクニック、Photo graphers Gallery等に写真を提供頂いておりますが、GR DIGITALの発売以前からリコーのデジタルカメラを愛用していただいていたこともあり、ご自身のブログ「湊和雄のDIGITAL南島通信」の中でも撮影した作品を数多く掲載していただいています。
また、現在は写真だけでなく沖縄のTV番組でもご活躍中であり、VTR編集のお仕事でお忙しい時期だったのですが取材をさせて頂きました。

GRist 15 湊和雄さん

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■湊さんは東京生まれだそうですが、なぜ沖縄をフィールドにしようと思ったのでしょうか?

湊 和雄さん(以降 湊):父の趣味がカメラで、生まれた時からカメラが周りにゴロゴロしてたんですよ。そしてカメラ雑誌をよく見ていた。小学5年生の時にロバートキャパの『ちょっとピンボケ』を読んでから写真家に憧れるようになった。

将来、職業として写真家になろうと思ったのが中学3年生の時かな?ちょうど昆虫写真家の栗林慧さんがデビューした年で雑誌で栗林さんのすばらしい写真を見てショックを受けたんですよ。将来この職業につきたいって。その写真が沖縄の昆虫だったので沖縄にあこがれるようになった。それまで日本におもしろい昆虫はいないと思っていたんですよ。アマゾンまで行かないと見られないと(笑)

ヒロ(以降 ヒ):そういう意味では一枚の写真が湊さんの人生を変えたと言ってもいいのですね。沖縄では以前から「山原(やんばる)」によく行くと聞きましたが、、

湊:実際に沖縄に住みだしたのは大学生の時からで、大学では昆虫学を専攻しました。 誤解していたのは沖縄はどこに行っても自然が豊かな所かと思っていた。那覇にきてガッカリしたことを覚えています。那覇でももっとうじゃうじゃ虫がいると思っていたので(笑)。 やはり山原(やんばる)に行かないといけないと思ったのですが、実際に 山原(やんばる)に行ってみたらフィールドが広くて何をしていいのかわからなかった。

運が良かったのは沖縄にやって来てから3年目の時に「ヤンバルクイナ」が発見され、その2年後に日本最大の甲虫である「ヤンバルテナガコガネ」が発見された。(どちらも天然記念物で現在は絶滅危惧種に指定されている)「100年に1回あるかないかの発見」に立て続けに遭遇して、山原(やんばる)ってやはり凄いところだと思ったわけです。それから毎週山原(やんばる)に通って撮影するようになった。山原(やんばる)には16種類の天然記念物がおり、すぐに全て撮影できると考えていたが、そこは甘い考えで全て撮影するのに8年間もかかりました。

ヒ:随分長い間山原(やんばる)に通われていて何か自然環境に変化を感じますか?

湊:30年通っていて良くなったことはひとつもない。森林伐採が一番大きな影響だと思う。林道工事やダムを造ることも野生動物にとって大きなダメージです。ヤンバルクイナはもちろん、準絶滅危惧種に指定されているコノハチョウも少なくなってきているのでとても心配しています。

ヒ:自然の豊富な沖縄ですらそうなのですか、、、、んーっ考えさせられますね、、

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(湊さんの撮影バックの中身を拝見。他にVTR撮影用の機材有り)

■では、普段使う際のGR DIGITALの設定を教えて下さい。

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湊:
 ・絞り優先モード
 ・マクロモード
 ・基本的に感度はISO100
 ・ホワイトバランス AWB
 ・シャープネスは必ず弱めにしておく
 ・色の濃さはひとつあげておく
 ・絞りをF5.6にして上記を含めてマイセッティングに保持しておく

ともかくシャッターチャンスを逃さないことを優先した設定にしています。絞りを起動時にF5.6にしておくのは撮影スピードの為。F5.6を中心にしてあげればダイアルを回転させて絞りを変更する時間が短縮できるので。深度を稼ぎたい時は絞って、被写体がブレないようにシャッタースピードを稼ぎたい時は開放にする。GR DIGITALは広角28mmなのでボカすことは考えず、背景まで写し込んでできるだけ絞り込んでパンフォーカスで撮ることを基本と考えていますが、最初は絞りを開け気味にしてシャッタースピード重視の設定で虫に近づき、逃げないようであればさらに絞り込んで撮影します。シャープネスを弱めにするのはPCソフトで好みの画像に仕上げることを前提にしているから。色の濃さを強めにするのは自分が派手な発色を好むからですね。それからマクロ時にAFターゲット移動機能をよく使いますね。ですからできればADJボタンを押した時に一番先頭に出てきて欲しいです。

■広角レンズで背景まで撮し込んだマクロ撮影というのはどんな点がおもしろいと思いますか?

湊:人間の目というのは瞬時にピントを合わせらるし、フレーミングを変えられるから感覚としては広い範囲をパンフォーカスで見ているイメージがあるけれど、実際はそうでもありません。そのイメージを1枚の写真にしようとすると、一般的な昆虫の接写に使う望遠マクロレンズでは背景がボケてしまうし画角も狭いわけです。
昆虫の写真を撮る時は子供時代の原風景といいますか夏休みに木によじ登って、そーと幹にとまって鳴いている蝉に近づいて見た時の映像をイメージするんです。
その時に見た、目の前の昆虫というのはものすごく大きく見えていて、且つ背景に夏休みの青空と入道雲が広がっていたり、木漏れ日が広がっていたりした子供時代の楽しくてワクワクするような映像が記憶に残っているわけです。しかしなかなかそれを写真映像にしようとすると難しいわけですが、それに一番近い映像を撮れるのが広角レンズで背景まで撮し込んだマクロ撮影だと思うのです。

ヒ:子供の時の原風景に影響されているというのはおもしろいですね。

湊:人間の感覚っていうのはある程度の年までの楽しかった記憶というのが刷り込まれていて、それが大人になった時の色んな判断に影響していると思います。背景にくっきりした青空と入道雲、目の前には原色の鮮やかな昆虫というのが私には欠かせない要素なんです。

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■GR DIGITALの気に入っている所、今後の期待などを教えて下さい。

湊:コンパクトカメラのメリットはどこにでも持って行けて、すばやく撮影できる所。一眼レフの方が細かい構図やピントの確認はし易いが、どんなにコンパクトな一眼レフでも、ふらっと買い物に行く時や撮影に関係ない場所に出かける時には持っていく気にはならない。撮影の可能性が無くてもコンパクトカメラであれば持っていても負担にならないのでシャッターチャンスに強いわけです。カメラは財布と同じでいつも持っていないと不安になる。どこに行くにも必ずカメラと財布と携帯電話の3点セットは持っていきますね。

コンパクトであるということを前提に、気に入っている所のひとつはまずは被写体までかなり近づいて撮影できる点と28mmの画角でマクロ撮影ができる点ですね。さらにコンバージョンレンズで21mm相当の超広角レンズにもなるし、そのときに決して解像度も犠牲になってないし。それから絵が綺麗なんですよ。滑らかで、何か絵に透明感がある。ズームや手振れ補正が無くてもそれが良くってGR DIGITALを使い続けましたね。
新しいカメラを買うとそちらを優先して使ってしまうんですけど、他の写真家の方、例えば海野和男さんが虫の撮影でGR DIGITALを使ってすばらしい写真を撮っているのを見て、思い出したかのようにGR DIGITALを使ってみると、他のカメラと違う操作性の気持ちよさ、心地よさがあり、使っていて楽しくてまた1週間とか使い続けてしまうという不思議な魅力を持ったカメラなんですよ。

今後の期待としたら、、、そうだな、、、どんなアングルでも撮影が容易なバリアングル液晶とそれから小さいマクロ専用のストロボ、どんなフィールドでも安心なように生活防水が付いたら最高ですね。 
それから、これだけは言っておきたいのですがコンパクトカメラというと一眼レフのサブボディ的な印象が強いですが、一眼レフの広角、超広角レンズでワーキングディスタンス1.5cmなんて製品は、世の中に存在しないわけです。
CCDが小さいのも一見不利なようで、実は被写界深度を稼いでパンフォーカスにするには有利な要素。そんな特徴を活かした撮影では、一眼レフ以上の能力を発揮するのが、接写に強い広角レンズを搭載したコンパクトデジタルカメラという存在です。デジタル化によって、一眼レフと同じように接写に強くなったことでコンパクトカメラの存在価値が大きく上がりましたね。

■最後に昆虫写真を撮る際の心がけや重視するポイントを教えて下さい。

湊:昆虫を撮る際は野生動物の住みかに入り込んでいくわけなので、あくまでも主役は昆虫で人間がおじゃまさせて頂くという気持ちを忘れないことでしょう。私はなるべく虫へのプレッシャーをかけずに撮影するように気を付けています。
そーっと近づいて撮影する。そして心の中で「お願いだから逃げないでね、、」と念じながら撮影することでしょうかね。(笑)

それから昆虫を見下して撮影しないこと。虫と対等な立場になったかのように、同じ一員になったような感覚で同じ目線で撮影すると昆虫の表情が生き生きして伝わってきますよ。おもしろいのですがそうすると昆虫もこちらを意識してくれるんですよ。意識して「ちらっ」っとこちらを見ている表情の時を撮るといい写真になると思いますのでぜひお試し下さい。

■お気に入りのワンショット!

アオスジアゲハ、沖縄本島撮影
(GW-1/外付けストロボ使用 絞り優先AE F9.0 1/310秒 -0.7EV補正)

スジグロカバマダラ求愛行動、西表島撮影
(GW-1/外付けストロボ使用 マニュアル露光 F9.0 1/320秒 )

■取材を終えて

ヒ:昆虫写真好きの私としてはいつかは湊さんを取材してみたいと思っていたので実現できてとてもうれしかったです。2人でカメラや昆虫撮影について長時間話し込んでしまいました。
写真は「子供の時の原風景に影響されている」という湊さんのコメントがとても印象に残っていて、改めて自分を振り返ってみると、好きな写真は子供の時に見たシーンを想起させる写真が多いように思いました。皆さんはどうでしょう?
取材の後、昆虫の背景に青い空と入道雲が写り込んでいる写真を無性に撮ってみたくなりました。きっと夏休みのあのジリジリとした暑い太陽の下、蝉の鳴き声を聞きながら友達と一生懸命に虫取りをした記憶を思い出させてくれるでしょう。
 

湊 和雄(みなと・かずお) プロフィール

昆虫写真家

1959年東京生まれ。78年琉球大学入学に伴い沖縄に渡る。
琉球大学大学院修士課程(昆虫生態学専攻)修了。同大学資料館勤務を経て、94年よりフリーランス。沖縄本島北部、通称「山原(やんばる)」をメインフィールドに 、琉球列島の野生動物にレンズを向ける。
主な著書に『山原の自然-亜熱帯の森』(平凡社)、『虫がいっぱい!南の島』(大日本図書)、『亜熱帯にかくれるコノハチョウ』(偕成社)、『奇跡の森-亜熱帯沖縄・やんばるの自然』(DVD小学館)他
日本写真家協会(JPS)会員、日本自然科学写真協会(SSP)会員

湊和雄のデジタル南島通信
http://3710km.com/

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