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GRist

GRist 27ハービー・山口さん

GRistの第6回目、ハービー・山口さんにお話をうかがいました。
ハービー・山口さんは、アーティストから普通の若者まで、それぞれの自然な姿や表情を,いつも暖かい視点で撮っていらっしゃいます。
一方で、代官山や同潤会アパートなど都内の街並みを、そこに住む人の目を通した視点で、誰の目にもなぜか懐かしさを感じる作品を白黒で表現されています。
また、GR DIGITAL カレンダーコンテストの審査員にもなっていただきました。

GRist 6 ハービー・山口

今回はいつも優しい視線で撮影をされている先生が人々とどのように向き合い撮影されているかを中心にお話をうかがってきました。
場所はハービー・山口さんがホームグラウンドとして、アーティストの撮影を行うこともあるという中目黒。
素敵なカフェでお話をうかがいました。

■普段撮影に出かけるときはどんな機材を持って出かけるんですか?


ハービー・山口さん(以下ハ): 普段は小さめのショルダーバックに最小限の撮影機材を入れて持ち歩くことが多いかな。
違うサイズのバックをいくつか持っていて、撮影内容によって選ぶこともあるけど、 バイクでの移動も多いので、コレは結構気に入ってる。
そんなに高くないものだけどね。 (当日は両サイドにフラップ付きのポケットがある、小ぶりのショルダーをお持ちになっていました…)

HB2-2S.jpg

きょーちゃん(以下き)
拝見してよろしいですか?

主室には両吊ストラップ付きのアンスラサイト仕上げのライカMP(ズミクロン35mmf2.0付)と単体露出計が。
サイドポケットには財布や携帯電話を入れて身軽に出かけていらっしゃるそうです。 もう片方のサイドポケットからGR DIGITALが。

ハ: GRはサイドのポケットに入れられて、すぐにだせるからいいね。ストラップもつけていない。 レリーズタイミングが他のデジタルカメラよりも早いからテンポよくシャッターチャンスを捉えられるのがいいね。
ライカを首から提げているときは、なんていうのかな、もう一歩すすんで撮るぞっていう気構えをもって臨むのだけど、GRはメモを取る気軽さですぐ取り出せるところが魅力だね。
 
■写真の被写体を探しているとき、撮影されるときはどのような気持ちで臨んでいるのでしょうか?

き:いつもどのようなことを考えて撮影されているのでしょうか?直球ですみません(笑)

ハ:いい質問だね。僕は自分の撮りたい写真、表現したいものを常に心の中においてる。カメラを持って歩いていてそんな被写体にめぐりあうと、心のタコメーターの針がレッドゾーンへぐっと振り込んでくる瞬間って感じ。それが写真を撮る瞬間なんだよね。

僕の場合は、中学のころ写真をはじめた時からずっと、人間のポジティブな一瞬を撮り続けたいと思ってきたんだ。
人間が素敵だな、輝いているなと感じる瞬間、
人間が好きになってしまうような写真を撮り続けたい。

人の心を優しくさせる作品を沢山の人に見て、感じてもらえたらって思い続けているんだ。今でもね。 だから僕の写真をみて“やさしい気持ちになった” 東京の写真を見て“東京が嫌いだったけど好きになりました”なんて言われるととても嬉しい。
 
■人を撮影されるときの心構えは?

き:僕ももっと人の写真を撮りたいなって思っています。でも素敵な被写体にめぐり合ったとき、どう撮らせて貰えばいいかわからなくて、まよってしまう。
GRで撮影されている皆さんの中にも同じように悩んでいらっしゃる方もいると思います。
先生が人を撮影されるときの心構えや接し方を教えていただけますか?


ハ:一番大事なのは撮影する相手に対してリスペクトして接すること。
貴方が撮影したいと思ったとき、きっと貴方の心が振るえてレッドゾーンに入ったんだと思うんだ。その気持ちを素直に言葉にすると良いと思う。
貴方が“この瞬間を撮りたい“と感じたことは真実だから。
それを相手に対して、相手を尊重して(リスペクトして)伝えることじゃないかな。


HB1-2S.jpg

き:最初の一言がなかなか難しいですね。

ハ:僕は必ず撮影する相手に声をかけてOKを貰ってから撮影してるんだ。
素敵な女性であったり、幸せそうな家族であったり、一生懸命汗を流して働いている人だったりする。
そんな彼らの輝いた一瞬をリスペクトして声をかけてる。

まずなんでもよいから会話して相手の心に入っていくといいよ。
その言葉は“モデルか何かされてますか?”だったり、“一生懸命仕事してる姿って素敵ですね”。だったりね(笑)
撮影したいという気持ちから言葉にしているなら、相手にちゃんと伝わると思うよ。
"私はあなたに「こころよい気持ち」を抱いているのですよ"ってきちんと伝えることが大切だね。

き:なるほど~。

ハ:撮影許可だけじゃなくて、作品やWEB上で公表する場合は別物だから,ちゃんと別に許可を貰うのも大切だよ。
カップルの写真は特に気を使うかも。いけない恋路かもしれないじゃない?(笑)
その場で相手も判断できないようなときは名刺を渡して後でコンタクトが取れるようにしてるんだ。

昔、女子高生に声をかけたときね、学校自体が生徒の校外活動に厳しくて最初は断られたんだけど、卒業するまで公表しないからって約束をしてね,名刺をあげて撮らせてもらった。
その後写真展にお母様と来てくれたときはうれしかったよ。

き:やはり相手の立場での気配りが重要ですね~。
それでも断られるときも?僕は断られるんじゃないかって思っちゃってなかなか声がかけられないです。

ハ:断られることだってあるよ。でもそのときその人の事情があるはずだから、深追いしたり、落ち込まないですぐ忘れることだだね。(笑)
ひきずってしまうのが一番いけないよ。

き:
確かにそうですね。引きずってしまえば次に声をかけるとき、ネガティブになっているのが相手に伝わってしまいますね。
それは、次に声をかけた人に失礼になりますね。

 
■撮影中は?

き:それで“いいよ”って言われたらどれくらい(枚数、時間)撮影されるのですか?

ハ:大体2分か3分くらいかな。仕事中の方の場合は邪魔にならないように1,2枚で決めるようにしてる。
素敵なカップルだったりしたときはちょっと時間をかけてそれでも2,3分。
相手がちょっと引くくらいのぎりぎりまで撮り続けて20枚くらい一気に撮影するときもある。

そうそう、撮影のテンポが大事。特にデジカメは注意が必要だね。その場で確認できてしまうから、1枚撮るごとに液晶を見て確認したくなるけど、
テンポが悪くなるし、相手も不安になるから1枚ごとの確認はNG!。
撮影しているこの瞬間、相手との間合いを大切にしたほうがいいね。

き:あ、言われてみると自分も一対一でポートレートを撮るときは、シャッターを押すタイミングとテンポを優先してますね。

ハ:もう一つ一番大切なのは撮り終えた後。
弓道でも残身っていって弓を射た後の10秒が重要だよね。
撮り終えたら、相手に撮影させてもらった感謝の意をちゃんと伝えなきゃね。
心から感謝することは重要だよ。

 
■シャッターチャンスについて

き:先生の写真を撮る瞬間(シャッターを押す瞬間)に対するコダワリというか、いつも思っていることはありますか?

ハ:写真を撮るということは、
“その瞬間、被写体に対して自分がいかに対峙したか?"
が大切だと思ってる。
“撮ったそのときにすべてが決まる。”
この緊張感が重要なんだ。
それはライブ演奏と一緒だよ。そのときの、会場、その時いたオーディエンス、その瞬間にあったもの全ての一体感で成り立っていて、はじめて,かけがえの無い瞬間になるんだよね。

僕の写真集を見てもらうとわかるけど、すべて黒枠があるのはフィルムの枠で、すべてノートリミングで光と影と表情、構図を全てその場で決めているから。
デジタルで撮るときも同じ考えを貫いている。
“撮ったそのときにすべてが決まる。”
んだね。

もちろん、そのためにはそれまで沢山撮影した経験であったり、人々と培ってきた人間関係だったり、それなりに積み重ねてきた部分もあるよ。

 
■GRとGRユーザーにむけて

き:最後にGRの印象とGRユーザーの皆さんに一言いただけますか?

ハ:GRはコンパクトでタイムラグが少なくストレスの無いカメラ。かわいいしね。写真が身近に感じられるカメラだと思う。
これなんか、美容室の中でも切ってもらっている最中にちょっとスナップしたんだけど、こんなところでも自然な表情で撮影できる。
撮影される側も肩の力を抜いてカメラに向かってもらえるところがいいね。

<<ハービー・山口さんの一枚>>

hb3.JPG

GRを使っている人には、自分が感じるままに、素直に、自分の心に近い写真を撮ってもらいたいなって思います。
流行を意識すると、心から離れていってしまう。ウケ狙いは本当の自分ではなくなってしまうから。 心の琴線に触れたとき、露出や、色味なんてとらわれず、カメラを信じてその瞬間にシャッターを切ることを心がけて。
写真を撮ることに真剣に。かつリラックスしてね。

き:なんだか、素直な気持ちで沢山写真を撮りたい気分になってきました。本日は本当にありがとうございました。
 

■インタビューを終えて
今回お会いして、作品を拝見したときに写真から感じていた印象そのままの方で、お話していてあたたかい気持ちになりました。
被写体への暖かな気持ちをむける一方で、常に作品を生み出す事に対する真摯な心構えを痛感しました。

インタビューを終えた後、ハービーという名前の由来を教えていただきました。
遊び盛りの幼少時代から思春期にかけて身体を動かせない病気にかかったこと、そのため、友達と一緒に遊んだりすごすことができず大きな孤独に相対することになったこと。
奇跡的に回復して、音楽を始めたときお気に入りのフルート奏者、ハービー・マンの名前からハービーと呼ばれるように、、

『僕は中学時代からハービー・山口なんだよ。そこから自分のハービーとしての人生を始められたんだね。』

と笑っておっしゃっていたのが印象的でした。
先生の“全ての人間が優しい気持ちになれる写真”のバックグラウンドにとても大きな思いがこもっていることを知りました。
青年になり、自分を見つめなおす為、あえて言葉も文化も異なるロンドンへ身を投じ新しい人間関係や世界観、写真を撮り続けて今なお、人を優しい気持ちにさせる作品を生み出し続けていらっしゃるハービー・山口さんの写真には太い幹があることを感じた貴重な時間でした。

あらためて自分がカメラを持つとき、カメラを向けるとき。
僕はハービー・山口さんの言葉を思い出すことになりそうです。

自分の心に素直に。
琴線に触れた瞬間を大切に。
撮影させてもらう相手をリスペクトして。

最後に写真集を紹介させていただきます。
写真集の中にハービー・山口さんが対峙した瞬間、そのときの優しい気持ちを感じられると思います。

僕のこの日の大切な一枚は,ハービー・山口さんのポートレートでした。

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先生の略歴を下記します。


ハービー・山口 HERBIE YAMAGUCHI:

1950年東京生まれ。大学で経済専攻。
卒業後、1973年にロンドンに渡り、およそ10年間を過ごす。ロンドンでは、一時期ツトム・ヤマシタミュージカル劇団レッド・ブッダで役者をしていたこともある。

一方、折からのパンクムーブメントを実体験し、70年代の生きたロンドンの姿を写真に記録するようになった。
特に、ロンドンのロックミュージシャンの撮影では高い評価を受けた。
帰国後もヨーロッパと日本を往復し、アーティストから巷の人々までを、気取りのない優しい表現のモノクローム作品に残している。

その飾らぬ清楚な作品を好むファンは多く、写真集や写真展の他にエッセイ執筆、BS-iでの司会(毎週水曜日23:00~24:00 MUSICTIDE )など、写真家のジャンルを越えた幅広い活動で人気を得ている。

▼ハービー・山口オフィシャルサイト (別ウィンドウで表示されます)
http://www.herbie-yamaguchi.com/


主な写真集
「ロンドン・アフター・ザ・ドリーム」(流行通信社 / 1985)、「僕のライカと福山雅治」(ソニーマガジンズ / 1994)、「ANYHOME」高橋克典写真集(ワニブックス / 1996)、「尾崎豊」(1998)、「代官山17番地」(アップリンク / 1998)、「DISTANCE 福山雅治」(アミューズブックス / 1999)、「TIMELESS IN LUXEMBOURG」(ルクセンブルグ大公国大使館 / 1999)、「Bridge 22」(ソニーマガジンズ / 2000)、「ロンドン・チェイシング・ザ・ドリーム」(カラーフィールド / 2003)、「PEACE」(アップリンク / 2003)、エッセイ集に「女王陛下のロンドン」(講談社 / 1985、2002)、「ずっと探していた」(ビクターブックス / 1992)、「フィール・ザ・ヒーリング」(弥生書房1997)、「日曜日の陽だまり」(求龍堂 /2005)


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