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おはよう、ヒマラヤ。
(後編)
ダルバール広場にて。
ダルバール広場にて。

喧噪、クラクション、排気ガス、エネルギッシュ、鳩…。カトマンズってどんな所?と聞かれれば、こんな単語が浮かぶ。交通ルールを無視する人々や野良牛。けたたましいクラクションの合奏。(1回のクラクションにつき平均10秒ぐらいは「ブーーーー」と鳴らすのがここの常識だ。)そんな車が何十台、何百台ともなれば、それは言うまでもなく、すさまじい。帰ってきた今も、あの音は強烈に耳にこびりついている。それからもうひとつ。カトマンズの記憶として忘れられないのが「迷路」のような街だということ。

カトマンズの旧市街は、複雑に入り組んでいる。ネパール最終日の夜、宿のお兄さんに、人気のタリー店を教えてもらった。「わかりにくいよ」と言われたものの、地図も書いてくれたので行ってみることに。結果…わかるわけないだろう!と言いたいような場所にあった。想像してみてほしい。蜘蛛の巣のように入り組んだ新宿歌舞伎町みたいな街が数キロに渡ってあるとしよう。その中で、人がやっとすれ違えるぐらい細い道の、しかも街灯も薄暗く、10m先は暗くてよく見えない路地の突き当たりの建物の2階に入っているお店だったのだから。

道を尋ねながら迷うこと1時間。なんとか、それらしい真っ暗な路地を見つける。地図を片手におそるおそる進む足取りは、どこからどうみても、夜道に放たれた子鹿状態。「(何かあっても)叫べば何とかなる」などと自分を励ましながら、路地へ。途中、道沿いの商店にいた日本人らしき東洋人と目が合うも、そのまま通り過ぎ、青い蛍光灯が光る怪しげな建物の2階へ。
「日本人ですよね?」と突然話しかけられ、振り返ると先ほどの東洋人が。「いや、この建物に用はないだろうなと思って…。困っていることがあったら言ってください。」惚れる。泣ける、ジェントルマン。神のように見えたその男性に今までの経緯を説明したところ、「確かにこの店は、人気店だから、たぶん探しているお店だと思うよ!」と、お墨付きをもらったので、安心して食事をすることに。本当においしいお店で、さっきまでの恐怖はとっくに忘れ夢中になって食べていた。

2時間が過ぎた頃だろうか。その彼がまた店にやってきた。「あのー、もう遅いから食べたら早く帰った方がいいですよ。」わざわざ言いにきてくれた男性。ハッと我に返り、帰ることに。もちろん迷いながらなんとか帰ったのだが、今こうして無事に旅行記が書けているのも、彼のおかげかもしれない。(ありがとう、モジャモジャ髭のお兄さん!)

日本へ戻ってきた。飛行機という空飛ぶ巨大な機械に乗れば、あっという間に「現実」へカムバック。日常の風景になっていた野良牛も土ぼこりもクラクションも、ここにはない。ゴミひとつ落ちていない空港でそわそわしながら、友人と帰国打ち上げをした。久々の日本、ということで選んだのは回転寿司。システム化されたその店は、タッチパネルで寿司をオーダーすると、厨房から寿司が流れてきて、ぴたりと目の前で止まるスタイルだ。会計ももちろん画面で。人の営みが感じられない無機質なお店に戸惑いながら食べるふたり。なんだか、もう、ネパールが恋しくなっていた。
おなかはいっぱいなのに、この満たされない感じはなんなんだろう。そう思いながらも、いつもの生活へ戻っていく。そしていつのまにか何も感じずに、タッチパネルで頼んでいる私がいる。「疑問」は「日常」に変わってしまう。だけど、いつだって心の中のある「小さな違和感」が叫ぶ。だからこそ、私はまた旅に出たくなるのかもしれない。

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著者プロフィール
めいりん/1980年生まれ。コピーライター、音楽家として活動中。2006年3人組ユニット「くもりな」としてメジャーデビュー。現在は、くもりなの他に小島ケイタニーラブとの「トワイ」などでも楽曲を発表。
高校時代は写真部部長を務める。現在は探検クラブ隊長として、おもしろい被写体や場所を日々探している。
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牛や人。暑いので木陰にいる。
スワンヤンブナート寺院入り口。
 
四方を見渡すブッダの知恵の目。
3匹の犬。寺院で寝そべる。
 
カトマンズが見渡せる位置にある。
似ている?
 
ダルバール広場にて、ポーズを決める。
タメル地区。
 
日用雑貨から、サリー、食材まで並ぶ。
鳩とお坊さん。
 
服を仕立てる。停電後は携帯の光で縫い上げていた。
関西空港
 
写真はPENTAX K-50で撮影