カナダにある路上生活者向けの滞在施設「シェルター」で過ごした、8ヶ月間を記録した作品です。撮影には主にコンパクトデジタルカメラのGR IIを使い、バライタ印画紙によるデジタルモノクロプリント約30点で構成。併せて展示作品の販売も行います。
リコーイメージングスクエア東京
「A Door of Hope」久保田良治
作者 | 久保田良治 |
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作品名 | 「A Door of Hope」 |
会期 | 2021年2月4日(木)~2月22日(月) ※2月7日(日)ビル点検日の為臨時休館 |
時間 | 当面の間、10:30~16:00までの短縮営業 (最終日16:00終了) |
定休日 | 火・水定休および弊社休業日 |
入場 | 無料 |
会場 | リコーイメージングスクエア東京 ギャラリーA |
連絡先 | 〒163-0690 東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービルMB(中地下1階)MAP ℡0570‐006371 |
内藤明氏推薦理由
久保田良治さんを知ったのは、少し前に銀座の写真ギャラリーの方から若い写真家を紹介したいということで久保田さんの写真を見せて頂いたのが始まりでした。その作品は我々の世代ではそれなりに普通でしたが、最近であまり見なくなったような気がする正統的なノンフィクションの記録でした。そしてその取り組みは周囲から遠巻きに眺めるのではなくて、そこの人々と一緒に生活するという、こうした取り組みにおける最も根源的な方法です。
若い写真家が現代においてこのようなアプローチをとることは驚きですが、さらにその表現方法として、古典的ともいえる、銀塩黒白写真感光材料、いわゆるバライタ紙による黒白プリントということを重視されていることも大変興味深いところです。この力強いプリントによって醸し出されているのは、まさに久保田さんがその場所で感じたことでしょう。この臨場感をぜひ会場でご覧頂ければと思います。
作品コメント
この作品は、僕が路上で出会った人々から学びながら、人間が「生きる」ことの意味を発見していく、その過程を記録したものです。2018年、僕は写真の仕事を探すため、片道の航空券とわずかな資金を持って、カナダに渡りました。しかし、写真に関する経歴がほとんどない外国人にとって、仕事を見つけるのは簡単なことではありませんでした。そのまま帰国せずにシェルターに入ったのは、そこまでしてでも写真の仕事をしたいという、強い覚悟があったからです。
シェルターは、何らかの理由で家を失った人のための一時滞在施設で、夜寝る場所や食事が無料で提供されます。一方で、盗難や喧嘩は日常茶飯事で、生活する上でも不便なことばかりでした。しかし、それでも困難を乗り越えられたのは、様々な人達に助けられたからです。明日どうなるかもわからない過酷な環境の中で迷いながら、「自分の道」を歩もうとする人々の生き様を、僕は目にしました。彼らは僕にとって、友人であり、人生の師でした。この作品を通じて知ってもらいたいのは、そんな仲間たちの、ありのままの姿です。
この作品で僕が目指したのは、彼らと観客とが「出会う」こと、それだけです。そして、そのために必要不可欠だったのが、「プリント」です。なぜなら、素晴らしいプリントには、観る人の目の前に被写体を「存在」させる、魔法のような力があるからです。そして、それがモノクロであるということには、人間の奥底にある真実を見て欲しいという願いが込められています。時に色は多くの情報を与えてくれますが、それは逆に、物事の本質を見えづらくしてしまうという側面があるのではないでしょうか。だからこそ僕はあえて、色が無い「不自由さ」にとどまることにしたのです。そのことによって何が見えてくるのかは、実際にプリントの前に立って、感じていただければと思っています。この展示が観る人にとって、彼らとの素晴らしい「出会い」になれば、僕にとってそれ以上の喜びはありません。
作者プロフィール
大学卒業後、ニュージーランドのスタジオ勤務、カナダで写真のアシスタントをする傍ら、様々な国でドキュメンタリー作品を制作。